E警察、検察、裁判r··--------------•ー-•ー·•ー-•ー-•ー·•ー-•ー·•ー-•ー-•ー·•ー-•ー·•ー------------,コラム⑧「刑事司法における被害者側の弁護士の役割と必要性」弁護土山崎勇人44 悪質な交通事故(ひき逃げ,酒酔い運転等)の被害に遭ったとき被害者ご本人ないしそのご家族(以下,これらの方を総称して,単に「被害者」といいます。)はどのようなことを望まれるでしょうか。事故によって被った損害を加害者に1賞ってほしいと望まれるのは当然として,悪質な交通事故の被害に遭った場合には,これに加えて,犯罪事実を明らかにし,加害者がきちんと処罰されることを望まれるということも少なくないはずです。この加害者の処罰に関する制度や手続が刑事司法といわれるものですが,刑事司法においては,複雑な)しールが多岐にわたって存在し,このルールに従って手続を進めて行かなければなりません。それゆえ,一般の方にとっては,刑事司法はよく分からないものであるというイメージが強く,結局詈察官や検察官に任せるしかないと考えてしまいがちです。実際被害を受けても刑事裁判への関与は特に希望しないという被害者が多いのはそのためだと思われます。しかしながら,近年,刑事司法は大きく変わり,刑事手続において被害者ができることは格段に増えました。例えば,捜査に疑問があるのであれば,刑事裁判が始まる前に,検察官に質問したり,補充捜査を求めたりすることができるようになりました。また,刑事裁判が始まった後は,裁判において,加害者(被告人)に対し自分が疑問に感じていることをストレートにぶつけて直接問い質すことができるようになりました。そして,裁判の最後には,被害者の心情を裁判官(や裁判員)に直接聞いてもらったり(心情に関する意見陳述),検察官の論告求刑とは別に,「加害者に対しては,〇〇〇という刑を言い渡してください。」というように,裁判官(や裁判員)に対して直接意見を述べたりすることもできるようになりました。このように現在では,刑事手続に被害者が積極的に関与できるようになっており,実際に刑事裁判に関与したいという被害者も増えてきています。ただ,上記のとおり,刑事司法は専門家でないと分からない部分も多いため被害者が自ら手続を行うというのは事実上,困難であり,現実には弁護土の手助けが必要なことが多いといえます。また,刑事手続の流れの中で,検察官(捜査段階では警察官も)が被害者のためにいろいろ配慮して,フォローしてくれることも多いですが,検察官は個別事件における被害者の代理人ではなく,あくまで公益の代表者という立場にありますので,被害者から見ると「もっと被害者側に寄り添って考え,動いてほしい。」と感じ,もどかしい気持になることもあると思います。そのため被害者が刑事手続に直面した場合にはなるべく弁護土に相談されるのがよいと思います。被害者から依頼を受けた弁護土は,完全に被害者側の立場であり,法の許す範囲内で可能な限りその被害者のために活動し,いろいろな選択肢を示した上で,その被害者にとって最も良い結果を得られるよう支援してくれるはずです。実際被害者の代理人となった弁護土は,被害者の良き相談相手として被害者に寄り添うだけでなく,被害者に代わって,①刑事司法に携わる関係諸機関(警察,検察庁及び裁判所など)とのやりとり,②加害者側から示談や被害弁償の申出があった場合の対応,③マスコミ対応(取材への対応等),などを行いますので,これによって被害者の負担が軽減されることが大いに期待できます。なお,弁護士に依頼する場合には費用が掛かりますので,この点を心配される方も多いと思いますが,弁護土費用の支払を援助する制度(犯罪被害者法律援助,国選被害者参加弁護士制度等。詳細は、法テラスのHP(p.52参照)等をご参照ください。)もありますので,ご自身だけで悩まずにまずは弁護土にご相談いただくのがよいと思います。※コラムの内容は令和4年11月現在のものになります。
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