交通事故被害者ノート
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E警察、検察、裁判r ••ー·•ー-•ー-•ー-•ー-•ー-•ー·•ー-•ー-•ー·•ー-•ー-•ー·•ー-------―'弁護土古笛恵子2.加害者の責任3.道義的責任4.民事責任1.加害者側を知る加害者側とのやりとりは心身ともに相当の負担ですが、解決のためには避けて通ることができない場面もあります。どのように対応すべきかまずは、1JO害者側の立場を知っておく必要があります。加害者側は、良くも悪くも加害者としての貴任を尽くすため被害者に接触してくるからです。加害者側がどんな立場にあるのかは、加害者に生じる責任と表裏の問題です。加害者の責任は、道義的責任と法的責任に分かれます。道義的責任とは、法的責任が生じるかどうかはともかく、人としてのあり方、心の問題です。加害者として誠意を尽くすかどうか、これが道義的責任です。法的責任には、①被害者の損害について賠償金を支払う民事責任、②刑罰を受ける刑事責任、⑨免許取消しなどの行政上の制裁を受ける行政責任、に分かれます。民事責任は、加害者側と被害者側の話し合いによる示談が成立したとき当事者間で解決しないときは、ADR、調停、裁判などで解決することになります。刑事責任や行政責任は、国や行政が決める責任です。加害者側から謝罪があった、お見舞いに来た、というのは、加害者側が道義的責任を尽くそうとしていることです。被害者側としては、自身の気持ちに素直に無理せず、対応すればいいと思います。なお、道義的責任と法的責任は別なので、道義的責任が決め手となって法的責任が決まるといったことはありませんが、加害者側の対応が酷い場合には慰謝料が増額される、加害者側が十分に誠意を尽くしたら刑事事件で有利な情状として甚斗酌されるなど、道義的責任が法的責任に影響を及ぼすこともあります。加害者本人、あるいは、加害者側が加入していた保険会社(共済も同じです)、弁護土から、損害賠償金について連絡があるのは、加害者が民事責任を尽くそうとしていることです。被害者側に連絡が来るのは、示談代行サービスが付いている任意保険の保険会社であり、自賠貢保険ではありません。また、弁護土も、加害者の「代理人」との肩書きが付されているのが一般的です。「弁護人」は刑事事件の弁護土です。理屈のうえでは示談成立、判決確定など、民事責任が確定した時に賠償金を得ることになりますが、全体解決の前でも、治療費など事故によって必要となった突然の支出とか、休業損害など事故によって得られなくなった収入などは、先に内払いを求めることは可能です。損害賠償額については、裁判例などから基準、目安があることは確かです。相手方との過失割合も裁判所が公表している基準があります。とはいえ、それぞれの事故によって事情は異なります。示談をすると、それ以上の請求はできなくなるので、慎重に示談をする必要があります。電話、面接など無理のないところから気軽に法律相談を利用されることをお勧めしております。また、被害者本人ないし家族が自動車保険等に加入している場合、自身の保険に傷害保険金などを請求することができたり、法律相談の費用や、被害者代理人として加害者と交渉してもらう弁護土の費用等を保険で払ってもらえることもあります。被害者側の保険もよく調べることが必要です。5.刑事責任刑事責任は、国が犯罪者に刑罰を科すものであり量刑は裁判所が決めますが、有利な情状として甚斗酌してもらうため、事故を起こした1JO害者や「弁護人」である弁護土から、謝罪文が届いたり、示談を勧められたり、嘆願書を求められることがあります。加害者にはどのような刑罰が適当であると考えるのかによって、対応を変えればいいと思います。弁護土は、弁護人として犯罪者を弁護するだけでなく、被害者救済のだめ被害者代理人としても活動していますので、被害者としての法律相談なども当然可能です。6.行政責任行政責任も、事故の内容、違反歴等によって行政が責任を決めますが、ときどき、加害者側から、免許停止になると困るから事故を警察に届けないで欲しいとか、人身事故扱いにしないで欲しいと言われたとの話を耳にします。しかし、交通事故が生じたのであれば、きちんと警察に届けるべきですし、怪我したのであれば人身事故として届出るべきです。事実は事実です。事実と異なる対応をしていると、損害賠償を請求するにあたって予想外の不利益が生じることもありえます。了.被害者側加害者側に、保険会社、代理人弁護士、弁護人がついているように、被害者側にも、保険に入っていれば、自身の保険会社、代理人弁護土がついています。保険に入っていなくても、被害者支援機関を利用することは可能です。ご自身で抱え込むことなく、いろいろな支援を広く求めていただきたいと思います。ー-----------一-※コラムの内容は令和4年11月現在のものになります。47 コラム⑨「加害者側とのやり取りについて」

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