裁決事例3

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衝突事件(追越し船の航法)
漁船A丸プレジャーボートB丸衝突事件
船種船名  漁船A丸    プレジャーボートB丸
総トン数   4トン
全   長  11メートル   7メートル
(事実の経過)
 A丸は、08時30分防波堤灯台から295度(真方位、以下同じ。)10.9海里の地点において、針路を116度に定め、機関を全速力前進にかけ、17.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 A丸船長は、09時08分防波堤灯台から277度1,480メートルの地点に達し、入港に備えて操舵を手動操舵に切り替え、針路を090度に転じたとき、左舷船首8度630メートルのところに、防波堤の入り口に向かうB丸を視認し得る状況で、その後同船を追い越す態勢で接近したが、前路を一べつして他船を認めなかったところから、他船はいないものと思い、見張りを十分に行うことなく、B丸に気付かないまま、同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかるまでその進路を避けず続行中、09時10分防波堤灯台から294度460メートルの地点において、衝撃を感じ、A丸は、原針路、原速力のまま、その船首がB丸の船尾に右舷方から13度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、視界は良好であった。
 また、B丸は、09時07分防波堤灯台から286.5度1,290メートルの地点において、針路を102度に定め、機関を7.0ノットの対地速力として、手動操舵によって進行した。
 B丸船長は、09時08分防波堤灯台から288.5度880メートルの地点に達したとき、右舷船尾20度630メートルのところにA丸を視認し得る状況となり、その後同船が自船を追い越す態勢で接近したが、後方を一べつして他船を見かけなかったことから、接近する他船はいないものと思い、後方の見張りを十分に行うことなく、これに気付かないまま続航した。
 09時09分半少し前B丸船長は、防波堤灯台から292度610メートルの地点に達して、左舷船首方に引船を認め、これを安全に替わすため針路を103度に転じて進行し、やがてA丸が間近に接近したものの、依然として後方の見張りが不十分で、これに気付かず、左転するなど衝突を避けるための協力動作をとらないまま続行中、同時10分少し前A丸の機関音を聞き、後方を振り返ったところ自船の後方30メートルばかりに接近したA丸を初めて認め、操舵室から甲板上に脱出した直後、B丸は、原針路、原速力のまま、前述のとおり衝突した。
 衝突の結果、A丸は、船首部外板に凹損を生じ、B丸は、船尾部外板を圧壊して船橋左舷側を損壊した。

(原 因)
 本件衝突は、B丸を追い越すA丸が、見張り不十分で、その進路を避けなかったことによって発生したが、B丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
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