第2章 海難審判庁のしごと 6/7
参 審 員 制 度 と は ?
 諸外国における司法の分野では、裁判を民主化し、裁判官の判断等を抑制する手段として、古くから陪審制度及び参審制度が採用されています。この参審制度は、陪審制度が専門の裁判官のほかに民間人を立ち会わせ特定の事項についての決定を委ねる制度であるのに対し、民間人を直接、裁判官として裁判に参加させる制度であるため、陪審制度よりも更に積極的な制度といわれています。
 海難審判における参審員制度は、海難審判法制定時(昭和22年)に新たに採り入れられた、前記の参審制度に類似した制度で、我が国においても極めてまれな制度といえます。
 その目的は、職業的な審判官以外の者を海難審判に参加させることによって、海難審判を民主化させること及び特定の問題について審判官の知識、経験を補うことにあります。
 具体的には、各地方海難審判庁に、学識経験を有する者を参審員(非常勤の国家公務員)として12名の範囲以内で、常時任命しておき、このうち2名を、海難原因を広範囲な科学的調査により探究する事件やその原因の探究が特に困難な事件に、それぞれの専門分野に応じて参加させるようにしています。
 この参審員制度は、海難審判法が施行されて以来、十分にその機能を発揮し、昭和29年に発生した青函連絡船洞爺丸遭難事件など数々の重大な海難事件や原因探究の困難な海難事件に大きく貢献しているといえます。
平成14年に地方海難審判庁において参審員が参加した事件
事   件   名 管 轄 参審員(2名)の専門分野 言渡年月日
旅客船シーバード機関損傷事件 門 司 機関関係、船体運動学 14.2.20
はしけRB−1作業員死亡事件 神 戸 有機化学、危険物 14.3.20
旅客船こんぴら2機関損傷事件 広 島 機械工学、燃焼工学 14.3.27
漁船第三常盤丸火災事件 仙 台 機械工学、電気工学 14.3.29
遊覧船はまな転覆事件 横 浜 気象・海洋学、船舶工学 14.5.31
漁船第三十一銀鱗丸火災事件 函 館 機械工学・材料工学 流体工学 14.9.30

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       表紙     海難レポート2003概要版
メッセージ-CONTENTS-外国船の海難-最近の海難審判庁の動き-海難審判庁のしごと-裁決における海難原因-海難分析-資料編
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