特集 「外国船の海難」 6/7 裁決事例2
裁決事例-2
 外国貨物船N号日本貨物船S丸衝突
発生日時  平成13年6月29日05時50分
場   所  静岡県石廊埼東方沖合
気   象  霧、風力3の南西風、視程100m
損 傷 等   N号:船首外板に大破口と凹損
        S丸:全損、3人死亡・行方不明

N号:霧によって視界が制限された状態になった際、レーダーによる動静監視不十分で、霧中信号を行わなかった。[等因]
S丸:霧によって視界が制限された状態になった際、安全な速力に減じることなく、霧中信号を行わなかった。[等因]
海難の概要
 N号(1,258トン[パナマ共和国])は、船長(中国国籍)ほか9人が乗り組み、空倉のまま、平成13年6月27日岡山県片上港を発し、千葉港に向かった。
 29日一等航海士(中国国籍)は、神子元島沖で針路を040度に定めたところ、霧により視界が制限された状態となったが、このことを船長に報告せず、甲板手(中国国籍)に命じて操舵を手動に切換え、7.4ノットの速力に減じて、霧中信号を行わないまま航行した。
 その後、一等航海士は、レーダーで正船首4.0海里のところにS丸(499トン)の映像を初めて探知し、右舵5度を令し、わずかに右転を続けながら進行した。
S丸が2.0海里に接近したとき、右舵15度を令して続航中、一等航海士は、S丸の映像の方位が変らないまま接近したのを認め、機関を停止し、右舵20度を令して回頭中、S丸の右舷側中央部に、N号の船首が衝突した。
 また、S丸は、船長ほか4人が乗り組み、鉱滓1,600トンを積載し、同月28日茨城県鹿島港を発し、山口県徳山下松港に向かった。
 29日神子元島沖合を航行中、霧により視界が制限された状態となったが、安全な速力に減じず、220度の針路、10.5ノットの速力で、霧中信号を行わないまま進行した。
 その後、レーダーで正船首3.0海里にN号が接近したのを認め、針路を205度に転じて続航し、衝突少し前に左舵をとったが衝突した。
N号一等航海士の認識・判断:
「S丸と2海里に接近したとき、S丸のレーダー映像が船首輝線に近づいたが、少し右転すれば左舷を対して航過できると思った。」

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       表紙     海難レポート2003概要版
メッセージ-CONTENTS-外国船の海難-最近の海難審判庁の動き-海難審判庁のしごと-裁決における海難原因-海難分析-資料編
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