アスベスト対策Q&A

アスベスト対策Q&Aはアスベスト調査の推進を目的として作成しました。建築物の所有者や不動産関連の業者の方を対象に、通常使用している建築物に関わる質問/回答(以下Q&A)を作成しましたのでご活用ください。このQ&Aは一般の方にも分かり易く作成しています。

1.アスベスト対策Q&Aの構成

建築物にアスベストが使用されていると、そこを利用する人が健康障害をおこすおそれがあります。さらに、アスベストの使用が不明のままでは、不動産取引に当たり、通常はアスベストがあるものと評価され、建築物自体の資産価値を下げることになります。これらの不安に答えるために、本Q&Aでは最初に調査の必要性について示してあります。続いてアスベスト調査の内容、最後に補助金制度などの情報で構成されています。

アスベスト対策Q&A 構成図

NO. 調査の必要性
1 概要
2 アスベストの物性
3 健康障害
4 法規制
NO. アスベスト調査の内容
5 アスベストの使用箇所
6 アスベスト調査
7 調査者制度
8 分析
9 建築物の維持管理
10 アスベスト飛散防止対策
NO. 補助金制度など
11 補助金制度
12 問い合わせ先

本Q&Aはこれまで一般財団法人日本建築センターのホームページにあったQ&A(2005(平成17)年度)を改訂したものです。2013(平成25)年の建築物石綿含有建材調査者制度創設、2014(平成26)年のJIS A 1481改正などの情報を追加し、全体的に見直し改定いたしました。

2.アスベスト対策Q&Aの使い方

下記の案内表内の○印は各質問/回答の対象者を示します。

読みたいNO.をクリックすることにより、該当する質問群が表示されます。

注:
1)一般的には、「石綿」(いしわた)と「アスベスト」が同じ意味で使用されていますが、本Q&Aでは「アスベスト」に統一しています。
2)建築物石綿含有建材調査者制度に基づく専門家を、本Q&Aでは略称で「調査者」としています。

アスベスト対策Q&A 案内表

NO. 大分類 質問内容(代表例) 対象者
建築物所有者向け 不動産関連業者向け 一般向け
1 概要 アスベストはどのような建材に含まれていますか    
2 アスベストの物性 アスベストとはどのようなものですか  
3 健康障害 アスベストによる健康障害について教えてください    
4 法規制 アスベストはどのような法によって規制されていますか    
5 アスベストの使用箇所 アスベスト含有建材が使われている建築物を教えてください  
6 アスベスト調査 アスベストが使われているかをどのように調査するのですか  
7 調査者制度 アスベストの調査をする専門家を教えてください  
8 分析 建材中のアスベストはどのように分析するのですか    
9 建築物の資産価値評価 建築物の資産価値評価にアスベストの調査結果が必要ですか  
10 アスベスト飛散防止対策 アスベストの飛散防止対策とはどのようにするのですか  
11 補助金制度 アスベストの調査や除去をするための補助金がありますか    
12 問合せ先 アスベストに関する相談先、問合せ先を教えてください

q1 アスベストとは何ですか。どのような種類がありますか。

アスベスト(石綿)とは、天然に産出する繊維状ケイ酸塩鉱物の総称であり、蛇紋石系のクリソタイル(白石綿)と角閃石系のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの6種類があります。

労働安全衛生法等の法令の規制対象となるアスベストについては、厚生労働省労働基準局長通達(2006(平成18)年8月11日基発第0811002号)において、「繊維状を呈しているアクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クリソタイル、クロシドライト及びトレモライト」と定義しており、アスベスト含有建材の判定はアスベスト含有量が0.1重量パーセントを超えるかを基準としています。

また、アスベストは自然由来の物質であるため、工業的に利用されている天然鉱物の中に不純物として混入しているおそれがあるということにも留意すべきです。そのため、厚生労働省は2006(平成18)年8月28日基安化発第0828001号「天然鉱物中の石綿含有率の分析方法について」において、アスベストの混入のおそれがある鉱産資源である、タルク、セピオライト、バーミキュライト、ブルーサイトに関するアスベスト含有の分析と判断方法を示しています。

我が国で過去使用されたアスベストは圧倒的にクリソタイルが多く、クロシドライトやアモサイトも輸入・使用されましたが、1995(平成7)年にはこれら2種類は輸入と使用が禁止されたため、以後は主にクリソタイルだけが使用されてきました。従来、意図的には利用されていなかったとされてきたアクチノライト、アンソフィライト、トレモライトの3種類についても、実際の建材分析の結果から国内での使用が確認されています。

q2 アスベストとロックウール、グラスウールの違いは何ですか。

アスベストは自然の鉱物であり、蛇紋岩や角閃石が霜柱状に結晶した繊維です。一方、ロックウールやグラスウールは、メーカーの工場で鉱物等を高熱処理などにより製造した人造繊維です。ガラスが原料の場合は「グラスウール」で、岩石が原料の場合は「ロックウール」です。

詳細はロックウール工業会のホームページ(右URL)を参照してください。 http://www.rwa.gr.jp/

Q11に健康への影響に関する情報がありますので、参照して下さい。

q3 アスベスト含有吹付け材とアスベスト含有成形板の違いはなんですか。また、その材料の種類はどのようなものがありますか。

アスベスト含有吹付け材は、アスベストを0.1%超えて含む材料の内、吹付け工法で施工された材料です。一般的には、アスベストを含む乾いた材料と水分を混合した材料ですが、これを鉄骨や壁、柱、その他の母材に吹き付けることによって付着させる工法です。

吹付け材の施工方法は、セメントを含んだ乾いた材料(空気搬送する)と水を吹き付ける筒先で混合して母材に吹き付ける場合(乾式工法)と、セメントを含まない乾いた材料(空気搬送する)と、セメントと水を混合したセメントミルクを筒先で混合して母材に吹き付ける場合(半乾式工法/半湿式(セミウエット)工法ともいう)、及びすべての材料を事前に混連(混練り)したペースト状のスラリー(圧送する)と圧搾空気を筒先で混合して母材に吹き付ける場合(湿式(ウエット)工法)の3種類があります。

施工現場で材料から作り上げるため、施工によるばらつきがありますが、不定形材料を施工するため、母材の形状を選ばないというメリットがあります。吹付けによる施工のため空気を含んだ仕上がりとなっており、一般的には低密度の材料となっています。強度の低いことも多く、震動や経年劣化によって剥離したり、接触によって削れてしまうことが多い材料でもあります。

なお、同じ材料を練り合わせ、調合したのち、コテを使って練りつけて施工する方法(いわゆる左官工法)によって施工された場合、同じ材料であっても、吹付け材とはなりません。ただし、吹付け工法で施工された後、表面をコテを使って均すことも一般的に良くされていることで、綺麗に押さえられてしまうと、吹付け工法か、コテ押さえ工法か見た目では判断が難しいこともあります。コテならしをした後、その上から壁紙を直に貼って仕上げた居室なども実際にはあります。

アスベスト含有成形板は、工場でアスベストと他の材料を混和し、所定の形に仕上げ、工場で事前に切断して工事現場に持ち込まれるプレカット工法と現場に定尺の材料として搬入され所定サイズに切断加工される工法の2種類があります。いずれも工場での製作または製造を経るため、寸法安定性や製品の安定性が高く、一般的には高密度の材料となっています。

一方、現場に持ち込まれてから形状を変えることが難しく、施工する場所の形状が限定されます。密度が高く、堅い材料が多いため、経年劣化は比較的しにくく、軽微な接触などによっても大きな損傷となることが少ない材料です。しかし、止めている部分が外れるなどした場合、大きな部材としての落下などがおき、砕けた際などには粉じんを多く発生する材料でもあります。

吹付け材の種類は次の通りです

  • ①吹付けアスベスト
  • ②アスベスト含有吹付けロックウール

②については、施工法が3種類あり、乾式、半乾式、湿式の材料があります。

q4 アスベスト含有成形板は、現在も製造等が行われていますか。

現在は日本において、製造、輸入、新規の使用はされていません。

アスベスト含有建材(アスベストを0.1重量%を超えて含有するもの)は労働安全衛生法施行令により、2006(平成18)年9月から、製造・使用等が全面的に禁止されています。

q5 マンションや住宅の内装をリフォームする予定です。既存の建築物を解体するにあたり、どのような材料や製品にアスベストが含まれているかわからないのですが、どんなことに気を付けたらよいですか。

アスベストは曲げや引張りに強く、不燃性、耐久性、親和性等に優れているため、その大半は建材として建築物に使用され、耐火材料としての利用では多くの尊い生命を守り、財産を保全することに寄与しました。アスベスト含有建材の種類は多岐にわたっており(※1)、その飛散性もアスベスト含有建材の種類ごとに異なることから、建築物ごとの環境リスクも使用されているアスベスト含有建材によって異なります。

建物改修工事に際してのアスベストの使用の有無の調査 については、建築物所有者(発注者)や建築物の改修工事における作業従事者(労働者)だけでなく、建築物の利用者や周辺の環境等への配慮も必要となります。調査は調査者等アスベスト調査の専門家(※2)に依頼し、精確な調査を実施し、その結果を反映した改修工事の計画を立案実行することが求められます。なお、工事内容等によっては、地方公共団体や労働基準監督署等への届け出等が必要となることがあります。(石綿障害予防規則第3条、大気汚染防止法第十八条の十七)

※1
国土交通省と経済産業省が共同で「石綿(アスベスト)含有建材データベース」を公表していますので、そちらも参考にして下さい。
参考:石綿(アスベスト)含有建材データベース
※2
大気汚染防止法、石綿障害予防規則に基づくアスベストの使用の有無の「事前調査」を行わせるべき者については、厚生労働省労働基準局長通達(平成26年4月23日基発0423第7号)において、「建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者技能講習修了者のうち石綿等の除去等の作業の経験を有する者及び日本アスベスト調査診断協会に登録された者」など石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者が調査を行うこととされています。

q6 空気中のアスベスト濃度に関する濃度基準はありますか。

日本においては一般環境の大気中のアスベストの環境濃度に対する基準は定められていません。なお、大気汚染防止法施行規則第十六条の二において、アスベストを取り扱う工場・作業場(特定粉じん発生施設)の敷地境界基準として大気中のアスベスト濃度が10f/リットルが規定されていますが、この数値は一般大気の環境基準値ではないことに注意が必要です。

q7 アスベストが使用された建築物の室内アスベスト濃度は、どの程度ですか。

吹付けアスベストのある部屋のアスベスト濃度は、吹付け時の仕上げ状態、吹付け時からの時間の経過による経年劣化その他の要素によって異なります。詳しいデータは独立行政法人建築研究所の資料に整理されていますので、下記を参照ください。

「アスベスト含有建材の劣化時および除去工事時におけるアスベストの飛散性に関する調査報告書」2014.10 [PDF]

なお、一般大気のアスベスト濃度は、国内の測定で0.1~0.3f/Lが多く得られる濃度です。下記にデータが公表されていますので、参照ください。

環境省「平成25年度アスベスト大気濃度調査結果について」2014.5.30

劣化し一部損傷した吹付けアスベストが存在するエレベータシャフトやアスベスト含有吹付けロックウールが存在する倉庫等でアスベスト繊維の飛散が確認された例があります。また、劣化が進んだ煙突用アスベスト断熱材が存在する煙突の点検口のある機械室・ボイラ室や前室でアスベスト繊維の飛散が確認された例もあります。さらに、劣化が進んだ煙突用アスベスト断熱材が存在する煙突の頂部でアスベスト繊維が確認された例もあります。

q8 アスベストは法により区分や呼び名が異なりますが、どのような関係になっているのでしょうか。

アスベスト含有建材は発じんの度合いにより「レベル1~3」に便宜的に分類されています。レベル1は、もっとも飛散性の高いアスベスト含有吹付け材であり、建築基準法で規制されている吹付けアスベストなどが分類されます。次いで飛散性の高いレベル2にはアスベスト含有保温材、断熱材、耐火被覆材が分類されます。レベル3はそれ以外のアスベスト含有建材が分類され、主にスレートや岩綿吸音板などの成形板の仕上げ材料が多くあります。

アスベスト含有建材は法規制の目的により名称が異なり、主な法における区分の名称を下表に示します。

主な法令におけるアスベスト含有建材の名称
  建材の種類
法令 アスベスト含有吹付け材
レベル1相当)1)2)
アスベスト含有耐火被覆材
アスベスト含有保温材
アスベスト含有断熱材
(レベル2相当)1)2)
その他のアスベスト含有建材
(成形板など)
(レベル3相当)1)2)
建築基準法
(所管:国土交通省)
吹付け材の内、下記の2種類を規定
・吹付けアスベスト
・アスベスト含有吹付けロックウール
対象外 対象外
大気汚染防止法
(所管:環境省)
特定建築材料 特定建築材料 対象外
労働安全衛生法
石綿障害予防規則
(所管:厚生労働省)
建築物等に吹き付けられた石綿等 石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材等 石綿等
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
(所管:環境省)
廃石綿等
特別管理産業廃棄物
(飛散性アスベスト)2)
廃石綿等
特別管理産業廃棄物
(飛散性アスベスト)2)
石綿含有産業廃棄物
(非飛散性アスベスト)2)
注1)
建設業労働災害防止協会の「建築物の解体等工事におけるアスベスト粉じんへのばく露防止マニュアル」では作業レベルとしてレベル1~3を分類しているが、便宜的に主な建材の区分としても使用されている。
2)
( )内は一般的な呼称。

q9 アスベスト含有建材が劣化するとアスベストが飛散するのでしょうか。

長い時間をかけて物理的、化学的、機械的に繰り返されるダメージで製品の強度低下や損傷が起こります。レベル1、2のアスベスト含有建材は、その他のアスベスト製品と比べて特に繊維の露出が多く、また硬度や比重が小さく単一では脆いという特徴があります。このため粉塵が比較的飛散しやすく、少しの外圧で破損します。

レベル1、2のアスベスト含有建材はスレート板等のアスベスト工業製品と異なり、現場調合によって人為的に作成されたものが多く、その過程において下地材の良・不良もあり、作業者の優劣にも影響します。また仕上がった材料に対して人為的に打傷・擦過などの加害があれば、製品としての劣化が加速されることになり、飛散しやすくなります。

q10 アスベストの種類によって、発症リスクに差があるのでしょうか。

クロシドライト(青石綿)とアモサイト(茶石綿)はクリソタイル(白石綿)に比べて、有害性が強いといわれており、疫学データによりその例が示されています。

q11 ロックウールとは何ですか。アスベスト同様、健康に影響があるのでしょうか。

ロックウールとは玄武岩や天然鉱物を高温の炉で溶かし、遠心力で吹き飛ばして繊維状にした人造の鉱物繊維を言います。また、鉱さいを原料(主成分:けい酸、酸化カルシウム)とし、繊維状にしたスラグウール(鉱さい綿)はロックウールと呼ばれています。いずれもガラス質で、結晶構造ではないためアスベストとは異なるものです。アスベストに較べて酸に弱く、人体(酸性体質)に入ると、溶けるといわれています。

ロックウールは、長期間、大量に吸い込むと(粉じん作業など)、じん肺になる可能性は否定できませんが、現在国内外でそのような報告はありません。ただし、吹付けロックウールでアスベストの含有が重量の0.1%を超えるものについては、建築基準法で使用を禁止されています。

q12 バーミキュライト(ひる石)吹付け、またはパーライト吹付け材の健康影響はありますか。

吹付けバーミキュライトには、不純物としてアスベストを含有するケース(天然鉱物由来)と、吹付け材の剥落を防止するため繋ぎ材としてアスベストが添加されているケース(意図的添加)があります。バーミキュライトが原因とされるアスベスト肺の発症が米国で確認されおり、その原因となったバーミキュライトには石綿の一種であるトレモライトのほか、角閃石群に分類されるウインチャイト、リヒテライト等が含まれていることが明らかとなっています。ウインチャイト等の有害性については、明確な知見がないものの、バーミキュライトが吹き付けられていた建築物等の分析において、ウインチャイト等が含有していることが明らかとなった場合には、石綿則に準じたばく露防止対策を講ずることとされています(平成21年12月28日基安化発1228第1号「バーミキュライトが吹き付けられた建築物等の解体等の作業に当たっての留意事項について」)。

また、吹付けパーライトについても、吹付けバーミキュライトと同様に仕上げ材として鉄筋コンクリート構造の集合住宅等の室内の天井や壁に使用されていますが、この吹付け材にアスベストが 意図的に添加されたケースがありました。

アスベストを含有する場合は、経年劣化や振動、接触等によって、粉じんが発生する恐れがあるため、アスベストによる健康影響への配慮が必要となります。

q13 アスベストによる疾患にはどのようなものがありますか。またその特徴は何ですか。

アスベスト繊維を吸引することによって、石綿肺(じん肺の一種)、肺がん、悪性中皮腫などの疾患を発症する可能性があることが知られています。アスベスト関連疾患は、アスベストにばく露してから長い年月を経て発症します。 例えば、中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後発病することが多いとされています。

アスベストのばく露量と中皮腫や肺がんなどの発症との間には相関関係が認められていますが、短期間の低濃度ばく露における発がんの危険性については不明な点が多いとされています。現時点では、どれ程度以上のアスベストにばく露すると中皮腫になるかということは明らかではありません。

右図にその関係を示します。

q14 アスベストに関する法的規制はどのようなものがありますか。

アスベストに関する主な関係法令は下記になります。

  1. 建築基準法

    建築物の最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的として、吹付けアスベスト等の建築物への使用禁止及び増改築、大規模修繕・模様替の際に除去を義務づけています。ただし、増改築、大規模修繕・模様替の際の既存部分は、封じ込め及び囲い込みの措置を許容しています。下記のURLに関連情報があります。

    建築基準法による石綿規制の概要

  2. 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(略称:建設リサイクル法)

    特定の建設資材の分別解体や再資源化、解体工事業者の登録制度等により、再生資源の有効利用や廃棄物の適正処理を図ることを目的として、対象建設工事において、分別解体等に係る施工方法に関する基準の一つとして特定建設資材に付着している吹付けアスベスト等の有無に関する調査を行うこと、付着物の除去の措置を講ずること等を規定しています。下記のURLに関連情報があります。

    建築物の解体工事等における 参考資料(アスベスト等)

  3. 労働安全衛生法(石綿障害予防規則(略称:石綿則)を含む)

    職場における労働者の安全と健康の確保を目的として、アスベストを重量の0.1%を超えて含有する製剤等の製造、輸入、使用等の禁止、建築物の解体等の作業における労働者へのアスベストばく露防止措置等を規定しています。下記のURLに関連情報があります。

    アスベスト(石綿)情報

  4. 大気汚染防止法

    事業活動や建築物等の解体等に伴う大気汚染を防止し、国民の健康保護、生活環境の保全、被害者の保護を図ることを目的として、建築物解体等の作業の届出、建築物解体等の作業基準(吹付けアスベスト、アスベストを含有する保温材等の除去等)を規定しています。下記のURLに関連情報があります。

    大気環境中へのアスベスト飛散防止対策

  5. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(略称:廃棄物処理法)

    廃棄物の排出抑制、適正処理等により、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として、廃石綿等を含む廃棄物の特別な管理等を規定しています。下記のURLに関連情報があります。

    廃棄物処理法における廃石綿等の扱い

  6. 宅地建物取引業法

    建物について、アスベスト使用の有無の調査結果が記録されている時は、その内容を重要事項説明として建物の購入者等に対して説明することを規定しています。下記のURLに関連情報があります。

    宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令について(アスベスト調査、耐震診断に係る情報について重要事項説明に追加)

  7. 住宅の品質確保の促進等に関する法律

    住宅性能表示制度において、既存住宅における個別性能に係る表示事項として、「アスベスト含有建材の有無等」などを規定しています。下記のURLに関連情報があります。

    住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要 [PDF]

    既存住宅の住宅性能表示制度ガイド [PDF]

q15 アスベストに関して建築基準法で規制されているのはどのような内容ですか。

平成18年に建築基準法が改正され、吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウール(含有率が0.1%を超えるもの)が規制対象となり、新たに建築する建築物への使用が禁止になりました。また、平成18年以前に建築された建築物においても、増改築等を行う場合は除去等(一定規模以下の場合は封じ込め又は囲い込みを許容)が必要となります。

q16 リフォームしたいのですが、建築物内にアスベストが使用されているようです。建築基準法により、どのような規制がかかりますか。

建築基準法では、吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウールが規制対象になります。従って、建築物内に吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウールが使用されている場合は、増改築、大規模な修繕・模様替えの際には、除去等(一定の規模以下の場合は封じ込め又は囲い込みを許容)を行なわなければなりません。

q17 アスベストを使用した建築物を解体する予定がありますが、法的規制はありますか。

労働者のアスベストばく露防止の観点から、労働安全衛生法、石綿障害予防規則が適用され、周辺環境へのアスベスト粉じん飛散防止の観点から、大気汚染防止法が適用されます。これらの法令により、アスベストの使用の有無の事前調査、作業の届出等が義務づけられています。

また、解体により生じる廃棄物は、建設リサイクル法、廃棄物処理法に従い、適切に処理する必要があります。なお、各地方公共団体の条例による規制がある場合はそれを遵守してください。各法令の内容につきましてはNO.14を参照ください。

q18 アスベストはどこにどのようなものが使用されていますか。

アスベスト含有建材は、住宅や倉庫では外壁、屋根、軒裏等に成形板として、ビルや公共施設では梁・柱の耐火被覆、機械室等の天井・壁の吸音用等に吹付け材として使用されています。

アスベスト含有建材は、以下に大きく分類されます。

  1. 鉄骨の耐火被覆材、機械室等の吸音・断熱材、屋根裏側や内壁などの結露防止材としての吹付け材
  2. 鉄骨の柱、梁等の耐火被覆成形板
  3. 天井等の吸音・断熱及び煙突の断熱としての断熱材
  4. 天井・壁・床の下地、化粧用内装材、天井板、外装材、屋根材等の成形板

    その他、建材以外でも自動車のブレーキ、高圧電線の絶縁材、各種シーリング材等に使用されています。アスベストが使われている家庭用品についての注意事項は環境省ホームページ(アスベスト含有家庭用品の廃棄について:下記のURL)に掲載されておりますので、ご覧ください。

    http://www.env.go.jp/air/asbestos/housewares/

q19 居室や通路を見渡しても露出した状態のアスベストは見当たりません。健康障害をおこす飛散する恐れのあるアスベストはないと考えてよろしいのでしょうか。

アスベストらしき吹付け材料が露出しておらず、見た目では確認されない場合でも、隠れたところに存在することが良くあります。例えば、天井裏や建物の外壁面などによく見られます。天井裏は天井によって隔離されていると考えられがちですが、空調の経路として天井裏を利用していることも多くあります。また様々な照明器具が天井に設置されていますが、照明器具の配線は天井裏を通しており、これらの配線の通線部は見た目では確認できませんが空気の流通があります。

また、様々な点検口が天井面などに多く設置されていますが、開口部の周辺には隙間があり、ここからも空気の流れが生じています。外壁面では、外壁の裏側に断熱や延焼防止を目的として吹付け材や成型断熱材が使用されていることもあります。外壁と床との取り合い部の隙間の処理材料として吹付け材が使用されていることもあります。これらも窓付近のカウンターで隠蔽されているように見えますが、カウンターにはペリメータ空調機などが設置されており、外壁に施工された材料周辺の空気を積極的に室内へ拡散している場合も見受けられます。

また、湿式吹付けの耐火間仕切壁の表面をコテ押さえとし、その上に壁紙を直に張り、仕上げていることもあります。更に、コンクリート面などには吹付け材が施工されている上に、断熱性能向上のため、ウレタン吹付けを施工したり、吸音性向上のためにグラスウールを貼り付けるなどの施工がされ、下地が全く見えない状態になっていることも良く見受けられます。

このように見た目ではアスベストらしき吹付け材料が見受けられない場合でも、空気が流通する場所に施工されていることがあるため、安易に見えないからアスベストが無いという判断は不適切と考えられます。以下にその事例を示します。

  • 内装仕上げ材の下に吹付け材が存在する例:
    1. 商業ビルでグラスウール断熱材の裏の吹付け材があった。
    2. 共同住宅の最上階で天井ボードの裏に吹付け材があった。
    3. 商業ビルで天井石膏ボードの裏に吹付け材があり、ビニールで被膜されていた。
    4. 商業ビルの機械室でガラスクロスの下に吹付け材があった。
    5. スタジオで吸音用ウレタン穴開きマット下に吹付け材があった。
    6. 空調機械室でグラスウール貼りの下に吹付け材があった。
    7. 寒冷地のビルで吹付けロックウールの上にウレタン吹付けが施工されていた。
  • アスベスト含有吹付け材の上からアスベストを含有しないロックウールを吹き付けた例:
    1. RC造天井で部屋の一部に旧吹付け材があり、その後の設備改修時にロックウール吹付け材が施工された。
    2. 耐火被覆で表層はアスベストを含有していないロックウールであるが、内側に旧工事のアスベスト吹付けがあった。
    3. RC造スラブの天井で吹付け材が2層になっていた。
    4. 居室で吹付けアスベスト材の上からアスベスト対策工事としてひる石プラスターが吹付けられてあった。他に3層の例もあった。
  • 二重吹きの例
    木毛セメント板の下にアスベスト吹付け材が施工されていた。
注)
天井の点検口から天井裏を自ら確認したり、仕上げ材の裏側を自ら確認すると、アスベストにばく露する恐れがありますので、調査者等アスベスト調査の専門家に調査を依頼することをお勧めします。

q20 建築物でアスベストが使われているか、どのように調べたらよいのですか。

建築物を施工した建設業者又は工務店、あるいは分譲住宅等を販売した宅建業者に問い合わせ、設計図書(建築時の施工図・材料表等)で確認します。ただし、アスベストの使用が記載されていない場合や、後に改修工事や補修工事でアスベストが使用された可能性もあり、現地調査と合わせて調査する必要があります。

アスベスト含有吹付け材が規制された年代と建築年次、使用されている用途などによりある程度は類推できますが、調査者等アスベスト調査の専門家(※)に依頼することをお勧めします。

大気汚染防止法、石綿障害予防規則に基づくアスベストの使用の有無の「事前調査」を行わせるべき者については、厚生労働省労働基準局長通達(平成26年4月23日基発0423第7号)において、「建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者技能講習修了者のうち石綿等の除去等の作業の経験を有する者及び日本アスベスト調査診断協会に登録された者」など石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者が調査を行うこととされています。

建築物石綿含有建材調査者(略称:調査者)とは、「建築物石綿含有建材調査者講習登録規程」(平成25年国土交通省告示第748号)に基づき、登録講習機関が実施する講習を修了し「建築物アスベスト含有建材調査者」の公的資格を与えられた中立かつ公正なアスベスト調査の専門家です。調査者等を活用することにより、アスベストの使用の精確な調査を行うことが重要です。

q21 現在、所有している建物を調査するにはどのような手順で行えばよいのでしょうか。

【事前相談】

  • 吹付けアスベストなどアスベスト含有建材が使われているのではないかと不安になったら、まずは建築設計事務所、設備業者、工務店、調査会社、地方公共団体の担当部署等にお問い合わせください。アスベストの調査は、調査者等の専門家(No.20参照)に依頼するようにしてください。

  • 調査費の補助金制度のある地方公共団体の場合は、業者と契約を される前に相談してください。

【調査】

  • 契約後、調査者等はまず、図面調査でお住まいの建築物を確認しますので、お手元に建築物の図面(断面図、構造図、仕上げ表など)を準備してください。必ずしも図面が揃っていなくても調査は可能です。
  • 次に、調査者等は現地調査をし、必要箇所の建材をサンプリングし、 分析会社に分析を依頼します。

【調査後】

  • 分析の結果が出ましたら、調査者等が調査票を作成しますので、調査結果及び今後の維持管理に必要な事項の説明を受けましょう。
  • この調査結果は将来、改修・解体する時に必要となりますので、大切に保管して下さい。

q22 現地におけるアスベスト調査ではどのようなことを調査するのでしょうか。

現地調査により調査票を作成します。調査票の必要項目を下表に示します。

NO. 大項目 調査項目
1 建築物の概要 名称、所在地、所有者名、竣工年、建築物用途、構造種別、敷地面積、延べ面積等
2 今回の調査の概要 調査会社名、調査者氏名、調査日、分析会社名等
3 過去の調査歴等 調査時期、調査会社名、分析会社名、調査報告書の有無、アスベスト処理歴等
4 調査内容 室名称、部位、建築材料名称、建築材料の飛散性のレベル、調査手法(目視か分析か)、分析結果、劣化度、使用頻度、調査写真等

また、調査票の様式例を下記に示します。

画像をクリックすると拡大します。

q23 災害時に倒壊した建築物に存在するアスベストはどのように除去されるのでしょうか。

災害時に全壊、半壊した建築物を解体する場合、アスベストの飛散が懸念されます。アスベストの除去作業の前に建築物にアスベストが使用されているかどうかを判定する必要があります。立入りが可能な建築物の場合は解体及び補修に先立って、事前調査を行うことが原則とされています。アスベスト含有建材がある場合にはそれぞれの建材の種類に応じ、かつ倒壊の危険を回避しながら飛散防止策を採る必要があります。アスベスト調査の結果があれば事前調査の代用になり、スムーズに解体工事が行えます。囲い込みや封じ込めも含めてアスベストの有無が事前に判明するため、災害廃棄物にアスベストが混入されないようアスベストを除去・分別し、アスベストの飛散防止やばく露防止の措置を図ることができます。

一方、安全面から立入り不可の場合は、散水による湿潤化等の飛散防止措置をとって「注意解体」することになりますが、アスベスト調査の情報により囲い込みや封じ込めも含めてアスベスト有りの場合は特に慎重な解体を行うよう注意を喚起することが可能となります。「注意解体」については環境省「災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル」を参照してください。下記にURLを示します。

パンフレット(H24.5) [PDF]

本文(H19.8) [PDF]

q24 建築物にアスベストが使用されているかどうかを調べる専門の技術者には国の資格があるのでしょうか。

建築及びアスベストについて専門的な知識と技能を有し、アスベストの使用実態の把握が的確にできる人材を育成することを目的として、平成25年7月に建築物石綿含有建材調査者制度が創設されました。この制度は、登録機関となるための要件を満たした機関が実施する講習を修了すると「建築物石綿含有建材調査者」の資格が付与されるものです。将来的には、この調査者が建築物のアスベスト調査に従事することを国庫補助の要件とすることも検討されています。

【登録機関】(一財)日本環境衛生センターHP

q25 調査者とはどのような専門知識を持った方なのですか。

建築物石綿含有建材調査者はアスベストに関する知識を有しているだけでなく、建築物の調査に関する実務に精通しているアスベスト調査の専門家です。アスベストに関してはアスベストが使われている建材に関する知識を有し、建材の採取方法や分析技術、さらには分析結果の解析力があり、アスベスト含有建材の維持管理方法に関する知識を有しています。また、建築物に関しては、意匠・構造・設備の知識の他、建材・施工手順・工法に関する知識を有し、設計図書や施工図などを読み解き、必要な情報を抽出することができます。さらに、アスベストのもたらす社会的な危険性を理解し、中立的な立場から精確な報告を行う力を有しています。

q26 建材にアスベストが含有されているか否かの分析はどのような方法で行いますか。(アスベストの分析法で公的な方法はありますか。)

建材中のアスベスト含有率の分析は、下記のJISに規定された分析法により分析することになります。

  • JIS A 1481-1(建材製品中のアスベスト含有率測定方法-第1部:市販バルク材からの試料採取及び定性的判定方法)<偏光顕微鏡法>
  • JIS A 1481-2(建材製品中のアスベスト含有率測定方法-第2部:試料採取及びアスベスト含有の有無を判定するための定性分析方法)<位相差・分散顕微鏡による分散染色法とX線回折分析方法の組合わせ>
  • JIS A 1481-3(建材製品中のアスベスト含有率測定方法-第3部:アスベスト含有率のX線回折定量分析方法)<X線回折定量分析方法>

JIS A 1481-1またはJIS A 1481-2でアスベストの含有を判断し、必要に応じJIS A 1481-3で含有量を分析することになります。

q27 建材や空気中のアスベスト濃度を検査してほしいのですが、どこに依頼すればよいですか。

(公社)日本作業環境測定協会でアスベストの分析技術、分析精度に関する評価、認定を行っており、認定分析技術者(空気中アスベスト濃度分析と建材製品中のアスベスト含有率測定別に、A-Cランク別)やアスベスト含有建材中のアスベスト含有率等分析機関のリストが掲載されています。(公社)日本作業環境測定協会のホームページのアスベスト分析技術の評価事業および認定分析技術者一覧は下記を参照ください。

石綿分析の技術力(クロスチェック事業)

また、(一社)日本環境測定分析協会では、空気中のアスベスト濃度測定についてはアスベスト繊維計数技能向上プログラム(位相差顕微鏡法)を、建材製品中のアスベスト含有率分析についてはアスベスト偏光顕微鏡実技研修を実施しており、分析可能な機関や研修修了者の名簿を公表しています。(一社)日本環境測定分析協会のホームページのアスベスト関連の情報をご確認ください。

アスベストの試料採取及び分析が可能な会員一覧 [XLS]

アスベスト関連情報

q28 アスベスト調査をして建築物にアスベスト含有建材が使用されていることがわかった場合、資産価値が下がるのではないかと心配です。

不動産取引において、アスベスト含有建材が存在する場合、アスベスト含有建材の除去費用分が資産価値から減額されます。建物所有者または管理者は、できるだけ早い段階でアスベスト調査をして、アスベスト含有建材の有無や建材の状態を把握しておくことをお勧めします。アスベスト調査がされてなく、アスベスト含有建材の存在が不明な場合は、建設年代等から判断し、アスベスト含有建材「有り」として厳しく減額するか、買い手側が環境デュー・ディリジェンスの一環として専門家によるアスベスト調査を行い、減額交渉をしてくることが一般的になっています。減額が大きいと不動産取引そのものが成立しなくなってしまいます。いずれにせよ、不動産取引の最中に想定していない新たな資産価値減額の問題が出てくると時間的に対応も難しくなり、交渉も後手後手になり、実際よりも不利になると考えられます。

また買い手側のアスベスト調査ではテナントへのばく露リスクも評価され、テナントがばく露している可能性が高い場合は、買い手側の不動産事業そのものが成り立たない物件とされ、取引が中断されるケースも見られます。このようなテナントがばく露しているケースは、現在の建築物所有者および管理者にとっても不動産事業の大きなリスクになります。

建築物所有者または管理者は、早い段階で建築物のアスベスト含有建材の有無や状態を把握して、優先順位を決め、中期的な改修・リノベーションの中で、計画的にアスベスト含有建材の除去をしていくことをお勧めます。またそのきちんとした改修記録と計画は、不動産取引の際、買い手側の不当な減額交渉にも対抗する材料にもなります。

2010年4月から、国内の企業会計に資産除去債務が導入され、有価証券の発行者は、原則として、建築物にアスベスト含有建材が存在するか否かを調査して資産除去債務を合理的に見積もり、資産除去債務を負債として計上するとともに、これに対応する除去費用を有形固定資産に計上する会計処理を行うこととされています。建築物などに使われているアスベストにばく露することで発生する疾病を未然に防止するだけでなく、国内企業が会計ルールをめぐる海外からの要請に応えていくためにも、建築物におけるアスベストの使用実態の精確な調査は、ますますその重要性を増しています。

q29 建築物にアスベスト含有建材が使用されているかどうか分からないのですが、不動産取引時に必要になるのでしょうか。

不動産取引にあたり下記の基準があり、アスベスト調査が必要になります。

  • ①不動産鑑定評価(不動産鑑定評価基準):不動産取引時における土地や建築物等の適正評価にあたり、確認する必要のある鑑定評価事項に「アスベスト等の有害物質」があるため、アスベスト調査が必要になります。
  • ②投資用不動産の取引や企業買収等での資産評価:デューディリジェンス(投資判断のための調査)において物理的調査報告として建物環境のリスクを評価します。ここで、建物環境リスク評価の項目にアスベスト含有建材の有無を明示する必要があるため、アスベスト調査が必要になります。
  • ③建築物の売買等の際の重要事項説明(宅地建物取引業法):アスベスト調査の結果がある場合には、調査結果の内容を説明する必要があります。
  • ④住宅性能表示(住宅の品質確保の促進等に関する法律):住宅性能表示制度により既存住宅を性能表示する場合、空気環境の項目にアスベスト含有建材の有無を明示する必要があるため、アスベスト調査が必要になります。

以前はアスベストの問題は土壌汚染のように不動産取引で注目されていませんでした。しかし最近はアスベスト除去工事が、投資家と約束したバリューアップ改修工事への支障、テナントの事業や占有等に大きく影響し、コスト増に直結するケースが多いと認識されるようになり、通常、デュー・ディリジェンスの一環のアスベスト調査できちんと評価するようになってきています。不動産取引では、買い手側は、上述された情報および竣工図面等から、アスベスト含有建材の有無と対策費を想定し、資産価値の減額を計算します。しかし情報が不十分な場合は、「最悪シナリオ」、「適度に最悪シナリオ」等でアスベスト含有建材の対策費を想定しますので、売り手側が望むより大きく減額になるケースが多くなっています。

不動産取引を優位に行えるようにするためにも、アスベスト調査をすることをお勧めします。NO.38も参照してください。

q30 現在、建築物を貸しており、今後も長く使用したいと考えています。アスベスト含有建材が使われている箇所がある場合、所有者としてどのような対応が必要でしょうか。

建築物の維持管理上で下記の4項目の対応が必要になります。

  • ①資産除去債務の評価(企業会計基準):不動産評価で、有形固定資産の原状回復のために必要な将来のアスベスト含有建材の処分費用を負債として評価するため、アスベスト調査が必要になります。
  • ②定期調査報告(建築基準法):一定規模以上の特殊建築物などや政令で定められた建築物の定期調査で、吹付けアスベスト等の使用状況、劣化の状況、除去・飛散防止措置の実施状況を調査し、特定行政庁に報告する必要があります。
  • ③土地工作物責任(民法717条)による損害賠償請求:建築物の利用者がアスベストのばく露により健康障害を生じた場合の土地工作物責任による損害賠償請求に対し、アスベスト調査をしアスベスト含有建材の存在を確認する必要があります。
  • ④石綿障害予防規則による飛散防止対策:2以上のテナントが入ったビルなどの共有スペースにあるアスベスト対策は建築物所有者の義務になります。

建築物所有者および管理者は、テナントが決してアスベストにばく露させないことを最優先に建築物の維持管理を行わなければなりません。上記③について大阪の高架下の文具店の事例もあり、それ以降、所有者および管理者の責任はますます厳しくなっています。上記の情報をきちんと整理するために、調査者などのアスベストの専門家に調査を依頼し、テナント、メンテナンス業者、一般の人々のアクセスとばく露リスクを考慮した建築物の維持管理を行うことをお勧めします。

下記のテナントが居ながらのアスベスト除去工事は、テナントへのばく露リスクが非常に高くなりますので、調査者などのアスベスト対策の専門家に十分に相談してください。テナントが居るとアスベスト除去工事が非常に困難なケースもあります。

<テナントが居ながらのアスベスト除去工事>

  • ①隣接エレベータが稼働中のエレベータシャフト内の劣化したアスベスト吹付け材の除去
  • ②天井裏に劣化したアスベスト吹付け材があるテナント専用エリアの空調機の故障時の取換

レベル3建材も破損・劣化した状態のままにしておくとテナントのばく露につながりますので、きちんと補修する必要があります。

q31 建築物を解体するとき、アスベスト調査が義務付けられていると聞きましたが、以前、不動産評価のために調査した結果は使えないのでしょうか。

建築物の解体時には大気汚染防止法、石綿障害予防規則、建設リサイクル法によって、アスベストの使用状況等に関する事前調査を行うことが義務付けられていますが、日常の維持管理の中で、建築物のアスベスト調査を行った場合は、その調査結果を活用することができます。

なお、2008(平成20)年2月6日の厚生労働省通達により、それまで主な調査対象とされてきたクロシドライト、アモサイト、クリソタイルの3種に加え、トレモライト、アクチノライト、アンソフィライトの6種の調査が徹底されていますので、それ以前に3種のアスベストのみを対象として分析し、含有なし(0.1重量%以下)と判断されものの場合は、アクチチノライト・アンソフィライト・トレモライトの追加の分析が必要になります。

q32 戸建住宅に住んでいます。屋根材などにアスベストが使用されているようですが、建築基準法により、除去する必要が生じますか。

建築基準法では、吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウールが規制対象となっています。この2種のアスベスト含有建材が使用されていなければ、建築基準法上は除去等の対象になりません。

屋根材、外装材、内装材等の成型板などの中にはアスベストを含有するモノもありますが、こうした成型板は切断・削孔などの作業を伴わない通常の使用環境下では特別な管理を必要としない建材とされています。しかし、アスベスト含有建材の存在を知らずに日曜大工などの際に、アスベスト含有建材を切断したり、穴を開けたりしてしまうことが考えられます。アスベストが含まれていることを知らずに、安易に解体・改修工事などの作業を行えば、そこから発生する粉じんによって作業者や周辺にいる人などがばく露するリスクがあるだけでなく、アスベストを含んだ廃棄物がリサイクル施設で破砕処理され、アスベスト含有建材の拡散にも繋がってしまうことになります。

戸建て住宅の場合は、吹付けアスベストやアスベスト含有吹付けロックウールが使用されているケースは少ないですが、全くないということもありません。専門知識を有する調査者による調査結果を踏まえて、必要に応じた維持管理対策や、改修工事の対策を講じることが必要です。

q33 建築物にアスベスト含有吹付け材が使用されていますが、すぐに除去しなければならないのですか。

アスベスト含有吹付け材は、劣化により繊維が飛散する恐れがありますので、まず、現在の状態を把握する必要があります。劣化が激しい場合には、すぐに除去、または囲い込み、封じ込めの飛散防止対策が必要です。また、その状態がしっかりしていて飛散する恐れがない場合でも、将来、劣化による飛散を防止するため、早めに除去、または囲い込み、封じ込めを行うことが望まれます。

また、建築物に使用されている吹付けアスベストやアスベスト含有吹付けロックウールについては、建築物の増改築、大規模修繕・模様替の際の除去を義務付けています。ただし、増改築、大規模修繕・模様替の際の既存部分は、封じ込め及び囲い込みの措置を許容しています。

q34 建材中の成形板にアスベストが含まれている場合、改修及びリフォーム等が必要ですか。

一般的には、アスベスト含有建材に穴を開け、改修・解体工事で撤去するような場合を除けば、日常生活の中で特別な管理を必要としないとされています。一方、軽微な場合も含め、解体・改修工事に際しては、適切な飛散やばく露防止措置を講じ、発生する廃棄物を適正に処理することが求められます。

q35 アスベストを使用した建築物の解体、改修、リフォーム等を行う事業者に資格制度はないのですか。

アスベストを使用した建築物の解体、改修、リフォーム等を行う事業者の資格制度はありませんが、事業者は下記の項目を遵守する必要があります。

  • (1)石綿作業主任者の選任
  • (2)労働者全員に石綿障害予防規則に定めるアスベストの特別教育を実施
  • (3)特別管理産業廃棄物管理責任者の任命(吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、アスベスト含有保温材等の除去の場合)
  • (4)労働者全員に半年に1度、アスベストの特殊健康診断を実施

q36 アスベストを使用している建築物を解体、改修、リフォーム工事する時の作業上の注意点を教えてください。

解体や改修工事においては、工事に携わる労働者の健康障害の防止、大気汚染防止の観点からアスベスト繊維が空気中に飛散することを防止する必要があり、原則として湿潤化して手作業で行います。レベル1やレベル2(Q8参照)の飛散性アスベストの除去、または囲い込み、封じ込めを行う作業では、作業場の隔離、負圧徐じん装置の使用等が必要です。また周辺環境への影響を考慮し、アスベスト繊維の空気中濃度を作業前、作業中、作業完了後に測定します。

廃棄につきましては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律を遵守し、廃石綿等処理マニュアル、非飛散性石綿廃棄物の取扱いに関する技術指針に従うことが望ましいといえます。

なお、除去等、解体、及び廃棄物の処理等に関しては下記のマニュアルがありますので、参照して下さい。

q37 自宅の近所で、解体工事が計画されています。アスベスト対策が講じられているかどうか調べるにはどうしたらよいですか。

解体工事を行う場合、事前調査とその記録及び掲示が義務付けられており、事前調査の結果、アスベスト含有建材があると認められる場合は、解体工事実施時のアスベストの飛散防止対策が必要になります。まずは解体業者等にその工事の事前調査の結果について確認してみてはいかがでしょうか。解体事業者等が工事説明会を行う場合は、事前のアスベスト調査の結果と撤去工事の工程の説明を求めてもよいでしょう。解体業者等の対応が適切でないと感じられる場合には、最寄の地方公共団体の環境対策関連の部署に相談し、専門的な立場からの助言を受けて下さい。

q38 アスベストの劣化度の判定はどのようにするのですか。

アスベスト含有建材の判定は、「劣化なし(劣化が見られない)」、「やや劣化」、「劣化」に分類されます。

  1. 「劣化なし」:おおむね全般的に損傷箇所や、毛羽立ちなどの劣化が進んだ様子が見受けられない状態。外的な要因や経年劣化が進んでいない、普通に使用している場合を表します。普通の状態であっても経年的に徐々に劣化が進んでいくため、定期的な観察が必要です。
  2. 「やや劣化」:全般的に表面などの劣化が進み、毛羽立ちなどが発生している状態。人為的または外的な衝撃などによって発生した一部損傷状態と何らかの要因によって発生した一部劣化状態を包括した分類です。早急な対策は必要としませんが、近い将来、劣化が進む可能性が高く、経過観察の必要性が高い状態です。
  3. 「劣化」:「やや劣化」よりも進んだ劣化状態であり、何らかの対策(入室注意勧告や除去工事などの計画策定)を講じる必要性が高い状態です。この状態での継続的な使用は、不要不急の場合は極力避ける必要があり、定期的観察などの際には呼吸用保護具の使用が望まれる状態です。

q39 アスベスト含有吹付け材の対策に関して具体的な工法を教えてください。

アスベスト含有吹付け材の対策には除去工法、封じ込め工法、囲い込み工法の3工法があります。これらの工法の説明を下表に示します。工法の選択に関しては、アスベスト含有吹付け材の劣化状況の把握や建物の運用計画を考慮した上で判断する必要がありますので、調査者や解体業者等にご相談ください。

除去工法 既存のアスベスト含有吹付け材の層を下地から取り除く工法。リムーバル工法とも呼ばれる。最も推奨される工法である。
封じ込め工法 既存のアスベスト含有吹付け材の層はそのまま残し、アスベスト層へ薬剤の含浸若しくは造膜材の散布等を施すことにより、アスベスト含有吹付け材の層の表層部又は全層を完全に被覆または固着・固定化して、粉じんが使用空間内ヘ飛散しないようにする工法。エンカプスレーション工法とも呼ばれる。将来の建物の改修や解体時には再度、アスベスト対策として除去工事が必要になる。
囲い込み工法 既存のアスベスト含有吹付け材の層はそのまま残し、アスベスト含有吹付け材の層が使用空間に露出しないよう、板状材料等で完全に覆うことによって粉じんの飛散防止、損傷防止等を図る工法。カバーリング工法とも呼ばれる。工事にあたってはアスベスト層に触れないことや、間接的な衝撃も与えないような注意が必要となる。

工法の選択方法や処理工事の内容については、「既存建築物の吹付けアスベスト粉じん飛散防止処理技術指針・同解説2006」において、ガイドライン及びマニュアルとして示されています。なお、日本建築センターのホームページ(下記URL参考)には、同財団が実施する建設技術審査証明事業(建築技術)において、認証された吹付けアスベスト粉じん飛散防止処理技術(除去工法、封じ込め工法)の工法名、業者名、連絡先等が掲載されていますので参照してください。

日本建築センター

q40 アスベスト含有吹付け材の除去費用は、目安として、いくら位かかりますか。

除去費用は個別条件によります。見積りは近所の建設業者や除去業者に相談してください。

処理する面積によって処理単価に差があるようですが、おおよその目安となる費用を下記に示します。この除去費用は、2007年1月から2007年12月における、施工実績データより算出された除去単価です。

アスベスト処理面積 除去費用
300m2以下 2.0万円/m2 ~ 8.5万円/m2
300m2~1,000m2 1.5万円/m2 ~ 4.5万円/m2
1,000m2以上 1.0万円/m2 ~ 3.0万円/m2
注)
  1. アスベストの処理費用は状況により大幅な違いがある。(部屋の形状、天井高さ、固定機器の有無など、施工条件により、工事着工前準備作業・仮設などの程度が大きく異なり、処理費に大きな幅が発生する。)
  2. 特にアスベスト処理面積300m2以下の場合は、処理面積が小さいために費用の幅が非常に大きくなっている。
  3. 上表の処理費用の目安については、施工実績データから処理件数上下15%をカットしたものであり、施工条件によっては、この値の幅を大幅に上回ったり、下回ったりする場合もありうる。

詳細は下記の国土交通省のホームページを参照ください。

「石綿(アスベスト)除去に関する費用について」の公表

q41 アスベスト調査をしたいのですが、補助金制度はありますか。

民間建築物に対するアスベスト調査等に関して国は補助制度を創設しており、補助金制度がある地方公共団体では、地方公共団体経由で補助金が支給されます。この事業はアスベストがあるかないかの調査に出向くところから補助金の対象としている地方公共団体もありますので、最寄の地方公共団体の担当部局に相談してください。また、この補助制度は平成29年度末まで継続が決まっています。

下記にその概要を示しますが、補助制度を行っていない地方公共団体もありますので、詳細はお住まいの地方公共団体にお問い合わせください。

  • ①補助事業の内容:建築物の吹付け材について行うアスベスト含有の有無に係わる調査
  • ②対象建築物:吹付けアスベスト等が施工されている恐れのある建築物1)
  • ③対象とする費用内容:対象建築物の所有者等が行う、吹付け材のアスベスト含有調査に要する費用
  • ④補助額:限度額は原則として25万円/棟(民間事業者等が実施する場合は地方公共団体を経由)
1)アスベスト含有調査で補助対象としているのは、吹付け材のうち、アスベスト含有の恐れがあるものであり、具体的には、吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、吹付けバーミキュライト、吹付けパーライト等です。3

q42 補助金を受けるにはどのような手続きが必要ですか。

補助金制度のある地方公共団体の場合は、調査を依頼する前にまずは地方公共団体の担当部局に相談下さい。

地方公共団体に補助金交付の申請をし、交付決定の通知を受け取った後に、調査者と契約を締結してください。

詳細な手続きの方法や対象要件等については、各地方公共団体の担当部署に確認をしてください。

q43 除去工事をしたいのですが、補助金制度はありますか。

民間建築物に対するアスベスト除去、または囲い込み、封じ込めに関して国は補助制度を創設しており、補助金制度がある地方公共団体では地方公共団体経由で補助金が支給されます。

下記にその概要を示しますが、補助制度を行っていない地方公共団体もありますので、詳細はお住まいの地方公共団体にお問い合わせください。

  • ①補助事業の内容:建築物の吹付けアスベスト等1)のアスベスト除去、または囲い込み、封じ込め
  • ②対象建築物:吹付けアスベスト等1)が施工されている建築物
  • ③対象とする費用内容:対象建築物の所有者等が行う吹付けアスベスト等の除去、封じ込めまたは囲い込みに要する費用(建築物の解体・除去を行う場合にあってはアスベスト除去に要する費用相当分)
  • ④補助率: 2/3以内(ただし地方公共団体の補助額を超えない範囲)
1)アスベスト除去等で補助対象としているのは、吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールです。

q44 アスベスト含有吹付け材を除去したいのですが、どこに相談したらよいですか。

アスベストの除去作業には専門的な技術が必要です。環境省の資料(参考1)にアスベスト関連機関情報や日本建築センターのホームページ(参考2)に除去作業等の専門業者名・連絡先電話番号等が掲載されていますので参考にしてください。建築物におけるアスベスト含有吹付け材の除去作業等には事前に労働安全衛生法、石綿障害予防規則、大気汚染防止法、建設リサイクル法などに基づく届出が必要です。また、作業基準が定められていますので、作業を行う地域を管轄する労働基準監督署及び環境管理事務所(又は一部の市役所)にご相談ください。除去に係る費用の助成を行っていない地方公共団体もありますので、お住まいの地方公共団体にお問い合わせください。

(参考1)環境省「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル」2014.6

(参考2)http://www.bcj.or.jp/c12_rating/bizunit/exam/exam.php?type=3