建築基準法施行令改正案の概要
目次
(1)材料関係(不燃材料、準不燃材料、難燃材料)
法律第二条第九号において、政令で不燃性能(不燃材料に必要な性能)及び不燃性能に関する技術的基準を定めることとされたこと受け、令第108条の2において不燃性能及びその技術的基準を定める。また、規制内容がすべて政令事項であるため、政令において定義されている準不燃材料及び難燃材料についても同様に性能とその基準を明確化することとし、材料に応じて必要な性能を次のとおり定める。
<不燃材料等に必要な性能に関する技術的基準>
通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後次の表に掲げる時間、表に掲げる要件を満たしていること。
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不燃材料(令第108条の2)
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20分間
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・燃焼しないこと
・防火上有害な損傷を生じないこと ・避難上有害な煙又はガスを発生しないこと |
準不燃材料(令第1条)
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10分間
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難燃材料(令第1条)
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5分間
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(2)
構造関係
@ 耐火構造等(耐火構造、準耐火構造、防火構造、準防火構造)
法改正により耐火構造等について、その性能(耐火性能等)に関する技術的基準を政令で定めることとされたことを受け、建築物の倒壊、延焼を防止等するために各構造に必要な性能について従来の基準による水準を踏襲するとともに、建築物の部分に応じて、性能の内容を非損傷性、遮熱性、遮炎性に区分することにより明確化し、以下のように技術的基準を定める。
<耐火構造等に必要な性能に関する技術的基準>
・耐火構造にあつては、建築物の各部分が表に掲げる火災による火熱を表に掲げる時間加えられた場合に、表に掲げる要件を満たすこと。
・耐火構造以外の構造にあつては、建築物の各部分が表に掲げる火災による火熱を加えられた場合に、加熱開始後表に掲げる時間、表に掲げる要件を満たすこと。
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耐火構造
(令第107条) |
耐力壁、柱、床、はり、屋根、階段
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通常の火災
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1時間を基本とし、建築物の階に応じて3時間まで割増(屋根及び階段については30分間)
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非損傷性
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壁、床
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通常の火災
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1時間(外壁の延焼のおそれのない部分は30分間)
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遮熱性
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外壁、屋根
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屋内において発生する通常の火災
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1時間(屋根及び外壁の延焼のおそれのない部分は30分間)
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遮炎性
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準耐火構造
(令第107条の2) |
耐力壁、柱、床、はり、屋根、階段
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通常の火災
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45分間(屋根及び階段については30分間)
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非損傷性
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壁、床、軒裏
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通常の火災
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45分間(外壁及び軒裏の延焼のおそれのない部分は30分間)
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遮熱性
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外壁、屋根
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屋内において発生する通常の火災
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45分間(屋根及び外壁の延焼のおそれのない部分は30分間)
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遮炎性
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準耐火構造
(令第115条の2の2) |
耐力壁、柱、床、はり
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通常の火災
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1時間
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非損傷性
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壁、床、軒裏(延焼のおそれのある部分)
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通常の火災
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1時間
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遮熱性
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外壁
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屋内において発生する通常の火災
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1時間
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遮炎性
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防火構造
(令第108条) |
外壁(耐力壁)
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周囲において発生する通常の火災
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30分間
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非損傷性
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外壁、軒裏
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周囲において発生する通常の火災
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30分間
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遮熱性
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準防火構造
(令第109条の6) |
外壁(耐力壁)
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周囲において発生する通常の火災
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20分間
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非損傷性
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外壁
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周囲において発生する通常の火災
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20分間
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遮熱性
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屋根の構造
(令第109条の3、第113条) |
屋根
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屋内において発生する通常の火災
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20分間
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遮炎性
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床(天井)の構造(令第109条の3、第115条の2)
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床、直下の天井
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屋内において発生する通常の火災
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30分間
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非損傷性
遮熱性 |
ひさし等の構造(令第115条の2の2、第139条の2の3)
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ひさし等
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通常の火災
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20分間
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遮炎性
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(注)非損傷性:構造耐力上支障のある損傷を生じないこと
遮熱性 :加熱面以外の面の温度が当該面に接する可燃物の燃焼のおそれのある温度以上に上昇しないこと。
遮炎性 :屋外に火炎を出すおそれのある損傷を生じないこと。
通常の火災:一般的に建築物において発生することが想定される火災を表す用語として用いており、屋内で発生する火災、建築物の周囲で発生する火災の両方を含むものである。特に火災を限定する場合には「屋内において発生する通常の火災」又は「建築物の周囲において発生する通常の火災」という用語を用いている。
A 防火・準防火地域、22条区域の屋根
従来、不燃材料で造り又はふくこととされていた、屋根不燃区域、防火地域及び準防火地域の屋根に必要な性能に関する技術的基準を政令で定めることとされたことを受け、屋根が火の粉により発炎し周囲に延焼すること、火の粉により燃え抜けることにより当該建築物において火災が発生することを防止するため、次のとおり、必要な技術的基準を定める。
また、主要構造部を準耐火構造とした建築物と同等の性能を有する建築物の屋根について、不燃材料で造り又はふくこととしている規定を同様の趣旨から法第22条に規定する構造とすることとする。
<屋根に必要な性能に関する技術的基準>
建築物の存する区域に応じて、表に掲げる火災による火の粉により、表に掲げる要件を満たすこと。
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22条区域の建築物の屋根
(令第109条の5) |
通常の火災
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・防火上有害な発炎をしないこと。
・屋内に火炎が達する損傷を生じないこと。防火上有害な損傷を生じないこと(不燃性の物品を保管する倉庫等で屋根以外の主要構造部が準不燃材料で造られたものの屋根を除く。) |
防火地域及び準防火地域の建築物の屋根
(令第136条の2の3) |
市街地における通常の火災
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(注)
市街地における通常の火災による火の粉は、通常の区域よりも建築物周辺の市街地が稠密であり、火の粉の大きさも大きくなることが予想されるため、当該地域での火災の状況を考慮してより大きな火の粉に対する性能を求めることとする。
(3)
防火設備関係
耐火建築物等の外壁の開口部に設ける防火設備及び防火・準防火地域内の建築物の外壁の開口部に設ける防火設備及びその性能に関する技術的基準を政令で定めることとされたことを受け、防火設備を定めるとともに、それぞれ性能に関する技術的基準を定める。
また、従来政令において規定していた1時間以上の性能を有する防火設備についても同様に性能規定化を行い、建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたものとするべきことを規定する。
<政令で定める防火設備>(令第109条)
防火戸、ドレンチャー等火炎を遮るものを定める。
また、従来の規定を踏襲し、開口部と隣地境界線等を有効に遮る外壁、塀等を防火設備とみなすこととする。
<防火設備に必要な性能に関する技術的基準>
・防火設備に応じて、表に掲げる火災による火熱が加えられた場合に、表に掲げる時間、表に掲げる要件を満たすこと。
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耐火建築物の外壁の開口部に設ける防火設備(令第109条の5)
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通常の火災
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20分間
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・加熱面以外の面に火炎を出さないこと
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防火地域及び準防火地域の建築物の開口部に設ける防火設備(令第136条の2の2)
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周囲において発生する通常の火災
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20分間
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防火区画に用いる防火設備(特定防火設備)(令第112条第1項)
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通常の火災
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1時間
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(1)
耐火建築物の主要構造部
これまで、耐火建築物は主要構造部を一律に耐火構造とすることとされていたが、今回の法改正により、耐火建築物の主要構造部は次のいずれかであることとされた。(法第2条第九号の二)
@耐火構造
A火災が終了するまで耐えることについて政令で定める技術的基準に適合するもの
現行規定においては、耐火構造の主要構造部は建築物の部分に応じて一律な時間耐える耐火構造とすることとしている。近年における建築物の防火に関する技術開発の進展により建築物において発生する火災の性状を予測する工学的方法が開発されており、この手法を用いて予測される火災に対して耐える性能を有する主要構造部について耐火構造と同様に取り扱うこととしたものである。
このため、政令においては、耐火建築物の主要構造部に関する技術的基準を、主要構造部が下記の性能の基準に適合することについて一般的な検証法(耐火性能検証法)により確かめられたもの又は建設大臣の認定を受けたものであることとする。
◇性能の基準(第1項)
@ 屋内において発生が予測される火災による火熱が加えられた場合に以下の要件を満たしていること。 ・耐力壁、柱、床、はり、屋根及び階段にあつては、自重及び積載荷重(多雪区域にあっては自重、積載荷重及び積雪荷重。以下同じ。)による力が生じた状態で非損傷性を有すること。 ・壁及び床にあつては、遮熱性を有すること。 ・外壁及び屋根にあつては、遮炎性を有すること。 A 外壁にあつては、建築物の周囲において発生する火災による火熱が加えられた場合に以下の要件を満たしていること。 ・耐力壁である外壁にあつては、自重及び積載荷重による力が生じた状態で非損傷性を有すること。 ・遮熱性を有すること。 |
(注)
非損傷性:構造耐力上支障のある損傷を生じないこと
遮熱性:加熱面以外の面の温度が当該面に接する可燃物の燃焼のおそれのある温度以上に上昇しないこと。
遮炎性:屋外に火炎を出すおそれのある損傷を生じないこと。
◇耐火性能検証法の概要(第2項)
@屋内火災について建築物の室ごとに予測される火災の継続時間及び当該室の主要構造部が予測される火災に耐えることができる時間(屋内火災保有耐火時間)を求め、屋内火災保有耐火時間が火災の継続時間以上であることを確かめる。 ・火災の継続時間は、当該室の可燃物の総発熱量を時間当たりの発熱量で除して計算することとする。総発熱量は、室の用途、内装に用いる材料に応じて建設大臣が定める方法により算出することとし、時間当たりの発熱量は室の用途、開口部の形状等に応じて建設大臣が定める方法により求めることとする。 ・主要構造部の屋内火災保有耐火時間は、主要構造部の構造方法、建築物の自重等によって主要構造部に生じる力及び予測される火災による温度の推移に応じて、建設大臣が定める方法により求めることとする。 A外壁が建築物の周囲において発生する火災に耐えることができる時間(屋外火災保有耐火時間)を求め、屋外火災保有耐火時間が1時間(延焼のおそれのある部分以外の部分については30分間)以上であることを確かめる。 ・外壁の屋外火災保有耐火時間は、外壁の構造方法及び建築物の自重等によって外壁に生じる力に応じて建設大臣が定める方法により求めることとする。 |
また、主要構造部を火災が終了するまで耐えることについて耐火性能検証法によって確かめられたもの又は大臣認定を受けたものとした建築物について政令の各規定を適用する場合の適用関係を整理するため、当該建築物の部分については、政令の必要な規定の適用に当たり耐火構造等であるものとみなすこととする。(第3項)
さらに、主要構造部が火災が終了するまで耐えることについて耐火性能検証法により確かめられたもの又は大臣認定を受けたものである建築物の壁又は床の開口部に設ける防火設備について、当該建築物の屋内において発生が予測される火災による火熱が加えられた場合に、当該加熱面以外の面に火炎を出さないことについて防火区画検証法によって確かめられたもの又は建設大臣の認定を受けたものについては、政令の必要な規定の適用に当たり特定防火設備等とみなすこととする。(第4項)
◇防火区画検証法の概要(第5項)
○建築物の室ごとに予測される火災の継続時間及び当該室の壁、床の開口部に設けられる防火設備が予測される火災に耐えることができる時間(保有遮炎時間)を求め、保有遮炎時間が火災の継続時間以上であることを確かめる。 ・
火災の継続時間は耐火性能検証法と同様の方法により求めることとする。 ・
保有遮炎時間は防火設備の構造方法、予測される火災による温度の推移に応じて建設大臣の定める方法により求めることとする。 |
(2)大規模建築物の政令で定める部分(令第109条の4)
法第21条第1項及び第2項の大規模な建築物で政令で定める部分に可燃材料を用いたものについては、主要構造部を法第2条第九号の二イに該当するものとすべきこととされており、火災時に建築物の倒壊を防止するため、必要な部分として、自重又は積載荷重(多雪区域においては、自重若しくは積載荷重又は積雪)を支える部分を定める(令第109条の4)
3.避難安全検証を行う建築物の階又は建築物に対する基準の適用関係(令第129条の2、第129条の2の2)
従来、避難関係規定として、一定規模以上の建築物については、以下のような項目について規定を設けている。
イ 火災による煙等の拡大経路となりやすい階段室等のたて穴の部分の区画、消防隊による救助活動等の困難が特に予測される11階以上の階における区画等に関する規定
ロ 直通階段までの歩行距離、廊下の幅、避難階段の構造等の避難施設に関する規定
ハ 排煙設備、非常用照明装置、非常用進入口、敷地内通路等の設置、構造に関する規定
ニ 居室、通路等の内装の仕上げに係る規定
近年の建築物に関する防火技術の進展により、建築物において火災が発生した場合に、当該建築物内の在館者の避難行動を予測し、同時に火災による煙、ガスの状態を予測することにより、火災時の避難の安全性を確認する工学的手法が開発されている。
こうした工学的手法を導入し、建築物の階又は建築物で、避難安全性能を有することについて一般的な検証法(避難安全検証法)により確かめられたもの又は建設大臣の認定を受けたものについては、上記のイからニまで掲げる規定の一部について適用しないこととする。
◇階避難安全性能(令第129条の2第2項)
・ 当該階のいずれの室から火災が発生した場合においても、当該階に存する者のすべてが、当該階からの避難を終了するまでの間、当該階の各居室及び各居室から直通階段に通ずる廊下等において避難上支障がある高さまで煙又はガスが降下しないこと。 |
◇階避難安全検証法の概要(令第129条の2第3項)
@当該階の各居室から避難を終了するまでの時間と当該居室が煙又はガスによって危険となるまでの時間を比較し、各居室から安全に避難ができることを確かめる。 ・居室からの避難が終了する時間は、避難を開始するまでの時間、出口までの歩行時間及び出口を通過するのに要する時間の合計とし、室の用途、床面積、出入口の幅等に応じて建設大臣が定める方法により求めることとする。 ・居室が煙・ガスによって危険となる時間は、各居室の用途、排煙設備の構造、内装の仕上げに用いる材料の種類等に応じて建設大臣が定める方法により求めることとする。 A当該階の各火災室ごとに、当該室で火災が発生した場合に、当該階からの避難が終了する時間と当該階の避難経路において煙・ガスによって危険となるまでの時間を比較し、火災時に各階から安全に避難ができることを確かめる。 ・階からの避難が終了するまでの時間は、避難を開始するまでの時間、階段の出入口までの歩行時間及び出入口を通過するのに要する時間の合計とし、各火災室ごとに、各室の用途、床面積、出入口の幅、階段までの距離等に応じて建設大臣が定める方法により求めることとする。 ・各階の避難経路が煙・ガスによって危険となる時間は、各火災室ごとに、各室の用途、排煙設備の構造、内装の仕上げに用いる材料の種類等に応じて建設大臣が定める方法により求めることとする。 |
◇全館避難安全性能(令第129条の2の2第2項)
・ 当該建築物のいずれの室から火災が発生した場合においても、当該建築物の在館者のすべてが、当該建築物からの避難を終了するまでの間、当該建築物の各居室及び各居室から地上に通ずる廊下、階段等において避難上支障がある高さまで煙又はガスが降下しないこと。 |
◇全館避難安全検証法の概要(令第129条の2の2第3項)
@建築物の各階が階避難安全性能を有することについて階避難安全検証法によって確認 A当該建築物の各階の各火災室ごとに、当該室で火災が発生した場合に、当該建築物からの避難が終了する時間と階段室又は当該階の直上階以上の階に煙・ガスが流入する時間を比較し、火災時に建築物から安全に避難ができることを確かめる。 ・建築物からの避難が終了するまでの時間は、避難を開始するまでの時間、地上に通ずる出口までの歩行時間及び出口を通過するのに要する時間の合計とし、当該建築物の各階の各火災室ごとに、建築物の用途、床面積、出入口の幅等に応じて建設大臣が定める方法により求めることとする。 ・階段又は火災室の直上階以上の階に煙が流入するまでの時間は、火災室の用途、排煙設備の構造、内装の仕上げに用いる材料の種類等に応じて建設大臣が定める方法により求めることとする。 |
(1)
防火区画関係(令第112条)
@ 高層区画の適用除外の基準(第8項)
11階以上の階においては、消防隊による救助活動等について特に困難が予測されることから、火災時に火災の拡大を遅延させ、避難の安全性を確保するため、100u以内ごとに耐火構造の床等で区画することとされているが、共同住宅においては、@建築物の構造について熟知した特定・少数の者によって利用され、A住戸単位の区画が設けられており、通常は200u程度に区画されていれば、火災時の避難安全性が確保されることから、200u以下の共同住宅の住戸で住戸ごとに区画されたものは100u以内ごとに区画することを要しないこととする。
A たて穴区画に関する規定の明確化(第9項)
建築物の階段室、昇降路等の火災時に煙等拡大する経路となりやすいたて穴の部分をその他の部とを区画することとしているが、共同住宅の住戸で複数の階を有する共同住宅の住戸については、住戸ごとに他の部分と区画することとし、住戸内の階段の部分等はその他の部分と区画することは要しないこととしているが、条文上もこの趣旨を明確化するため、たて穴区画を要しない部分として共同住宅の住戸内の階段室等を加える。
B 防火区画に用いる防火設備の基準について(第14項)
防火区画に用いる防火設備については、確実に火災の拡大を防止・抑制するとともに避難上の支障を来さないため、必要となる性能(火災時に閉鎖等できること、通行することができること、自動的に閉鎖等すること、遮煙性を有すること)を規定し、当該性能を有するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたものとすることとする。
C 防火ダンパーの技術的基準(第16項)
防火区画を冷房・暖房等の風道が貫通する場合、その貫通部分を通じて火災が区画を超えて拡大することを防止・抑制するため、防火区画を貫通する部分に火炎及び煙を遮る設備である防火ダンパーを設けることとしているが、この防火ダンパーについて、風道に設ける防火設備として取り扱うこととし、風道に設ける防火設備として必要となる性能(自動的に閉鎖すること、遮煙性を有すること)を規定し、当該性能を有するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたものとすることとする。
(2)
避難施設等関係
@ 避難階段の設置基準(令第122条)
現行規定では、5階以上の階又は地下2階以下の階に通ずる直通階段は避難階段等とすることを規定するとともに、5階以上の階の床面積の合計が100u以下の場合には、5階以上の部分からの避難は短時間で終了するため、避難階段等の設置を要しないこととしている。当該規定が5階以上の階に通ずる避難階段の設置を要しない場合の規定であることを明確化し、また、これに併せ、地下2階以下の階の床面積の合計が100u以下である場合には、地下2階以下の階に通ずる避難階段の設置を要しないこととする。
また、主要構造部を耐火構造とした建築物で100u以内ごとに区画した場合には避難階段等の設置を要しないこととされているが、この場合に100u以内ごとに区画すべき部分には、区画することが困難又は区画することにより避難上不利となる階段室、昇降機の昇降路、廊下等の避難の用に供する部分を含まないことを条文上明確化する。
A 共同住宅の住戸について避難階段等の設置を要しない場合の基準の見直し(令第122条)
11階以上の階における防火区画と同様の趣旨から共同住宅の住戸で200u以内ごとに区画されている場合には、避難階段等の設置を要しないこととする。
B 排煙設備の設置基準(令第126条の2)
11階以上の防火区画と同様の趣旨から共同住宅の住戸で200u以内ごとに区画されている場合には、排煙設備の設置を要しないこととする。
また、天井の高い居室で内装が不燃化されている居室等では、火災時に発生する煙等の発生が少なく、かつ、避難上支障のある高さまで降下するのに要する時間が長いことから排煙設備を設けなくとも通常は火災時の避難安全性が損なわれることはない。このような居室等、火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない部分として建設大臣が定めた部分については、排煙設備の設置を要しないこととする。
C 特殊な構造方法の排煙設備に関する技術的基準(令第126条の3)
近年、排煙設備については、各種の技術開発が進展しており、送風機を設けることにより、有効に煙を排出・制御する方式のもの等が実用化されてきている。こうした新たな技術と今後の技術開発の進展に迅速に対応するため、特殊な構造の排煙設備で、その構造に関して建設大臣が構造方法を定めた場合には、現行の排煙設備に関する技術的基準を適用しないこととする。
D 非常用の進入口の設置基準(令第126条の6)
31m以下の部分にある3階以上の階には、原則として非常用の袮進入口の設置が必要であるが、不燃性の材料の保管のみに用いられる階又は特別な理由により用途上やむをえない階等で、直上階又は直下階から進入出来る場合には非常用進入口の設置を要しないこととする。
(3)
内装制限関係(令第129条)
一定の特殊建築物、一定規模以上の建築物の壁、天井の室内に面する部分の仕上げについては、建築物の部分に応じて一律に準不燃材料又は難燃材料でしなければならないこととされている。近年の研究により、例えば天井を不燃材料で仕上げ、壁の一部に木材等を用いる仕上げ等、現行規定と異なる方法によった場合でも、同様の効果が期待できる場合があることが判明しているため、建設大臣が定める方法により建設大臣が定める組合せによる内装の仕上げによることができることとする。
(4)
簡易な構造の建築物関係(令第136条の9)
簡易な構造の建築物については、開放型建築物について1,500u以下、帆布を用いる建築物について1,000u以下としていたが、近年、自走式の自動車車庫、帆布を用いる建築物についての建築実績が増加してきたこと、これらについて法第38条の規定の運用により技術的知見が蓄積されてきた等を踏まえて簡易な構造の建築物の対象範囲を3,000u以下のものとする。
仕様を前提とせず、荷重及び外力が建築物に作用している際の建築物に生ずる力及び変形を直接算出する方法(限界耐力計算)を導入し、現行の構造計算規定との選択制とすることとする。
従来の構造計算は、変形を正確に把握することができなかったため仕様規定に適合していることを前提として、必要な耐力を計算することとなっている。
限界耐力計算は、極めて大規模な積雪及び暴風に対する安全性を直接検証するとともに、地震時における建築物の変形を計算し、それに基づいて必要な耐力を計算して求め、安全性を確認する手法である。そのため、限界耐力計算においては、従来の構造計算と異なり、耐久性等に関する規定以外の仕様規定の適用を不要とするものである。
震度7に相当する地震に対する検証を比較すると次のようになる。
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限界耐力計算
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保有水平耐力法(現行)
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建築物の変形できる限界
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算定する。
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算定しない。
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各階に生ずる力
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建築物の実態(不整形・不均質)及び変形できる限界を考慮して精算
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建築物が整形かつ均質 であると仮定して計算
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各階に必要とされる耐力
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各階に生ずる力以上であることを確認
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各階に生ずる力を建築物の不整形、不均質等を考慮して補正した上で、その力以上であることを確認
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◎ 限界耐力計算の概要
@建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い積雪、暴風等について、建築物が損傷しないことを確かめること。(具体的には、建築物の部材に生ずる応力度が許容応力度を超えないことを確認。従来と同様の計算手法)
A積雪時及び暴風時に係る検証について、従来は行われていなかった極めて稀に発生する大規模な積雪及び暴風に対して建築物が倒壊、崩壊等しないことを確かめること。(具体的には、建築物に生ずる力と、材料強度から算出した部材の耐力とを比較する。新しい計算手法)
B建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い地震について、建築物の地上部分が損傷しないことを確かめること。(新しい計算手法)
ハで求めた地震力が、各層が損傷する限界の耐力を超えないこと及びニで求めた層間変位が1/200を超えないことを確かめる。
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イ 建築物の各階が損傷する限界の層間変位(損傷限界変位)を計算する。
ロ 損傷限界変位に対応する建築物の固有周期(損傷限界固有周期)を計算する。
ハ 各階に作用する地震力を損傷限界固有周期に対応する加速度(地盤の増幅、地域係数を考慮したもの)、各階の質量、各階の加速度分布から求める。
ニ ハの加速度が作用している場合の各階の層間変位を計算する。
C建築物の存在期間中に1回以上遭遇する可能性の高い地震について、建築物の地下部分が損傷しないことを確かめること。(具体的には、建築物の地下部分の部材に生ずる応力度が許容応力度を超えないことを確認。従来と同様の計算手法)
D極めて稀に発生する地震について、建築物の地上部分が倒壊、崩壊等しないことを確かめること。(新しい計算手法)
ハで求めた地震力が、各層が崩壊する限界の耐力を超えないことを確かめる。
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イ 建築物の各階が崩壊する限界の層間変位(安全限界変位)を計算する。
ロ 安全限界変位に対応する建築物の固有周期(安全限界固有周期)を計算する。
ハ 各階に作用する地震力を安全限界固有周期に対応する加速度(地盤の増幅、地域係数を考慮したもの)、各階の質量、各階の加速度分布、建築物の減衰性から求める。
E使用上の支障となる変形又は振動がないことを確かめること。
(床及びはりについて変形量を計算。従来と同様の計算手法)
F 外装材等が構造耐力上安全であることを確かめること。
(Bの計算過程で算出する建築物の各階の層間変位、各階に生ずる加速度により外装材に生ずる応力度が許容応力度を超えないことを確認。新しい計算手法)
限界耐力計算は、地震時の検証において建築物の各階が同一方向に変形している場合に適用される。建築物の高さが60メートル程度までは、建築物の各階は同一方向に変形するが、高さが60メートルを超えると、各階の変形方向が同一方向でなくなる現象が現れはじめ、この現象は建築物が高くなればなるほど顕著になる。そのため、高さが60メートルを超える建築物については、限界耐力計算では精度よく建築物に生ずる力及び変位を算出することが困難となる。したがって、高さが60メートルを超える建築物については、建築物の各階の変形が同一方向でない場合においても、地震時等に建築物に生ずる力と変形を連続的に計算することのできる高度な構造計算により安全性を確かめることを義務付けることとする。
60メートルを超える建築物に適用できる構造計算については、過去の法第38条の運用の実績から、全ての建築物の安全性を評価することができると判断できる手法が確立してきたことから、当該手法を建設大臣が定めることとする。
しかしながら、当該手法を個々の建築物に適用するに当たっては、建築物の柱、梁等の形状、材質等から建築物各部の変形のしにくさを考慮して、全体の振動モデルを作成して、時間の経過に従って建築物にどのように力及び変形が生じていくかを解析していくこととなるが、当該解析が適切に行われているかを判断するためには高度な技術的知見が必要であり、建築主事等による建築確認では対処が困難であることから、建設大臣の認定の対象となることとする。
法第20条第1号の規定により、建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で技術的基準を定めることとなっているが、第1節から第7節の2までに定められている技術的基準のみでは、全ての建築物の安全性を担保しているとはいえないことから、一定規模以上の建築物については、第1節から第7節の2までに定められている技術的基準に適合していることに加え、構造計算により安全性が確かめられた構造方法としなければならない旨を明確にすることとする。
(1)建築物の基礎の仕様規定の整備(第38条)
建築物の基礎については、これまで具体的な構造形式等の仕様基準が定められていなかった。このため、仕様規定の明確化の観点から、基礎の構造については、建設大臣が定める構造方法を用いるものとしなければならないこととする。建設大臣の定める構造方法においては、基礎の寸法、形状、鉄筋の配置の方法等を定める。
(2) 木造建築物の耐震壁の配置規定の整備(第46条)
木造の建築物については、一定量の耐震壁を釣合いよく配置する旨定められているが、具体的な計算方法等の評価基準が定められていなかった。このため、基準の明確化を図る観点から、木造建築物の耐震壁の配置の方法に関する建設大臣の定める基準によらなければならないこととする。建設大臣の定める基準においては、建築物の部分毎の耐震壁量の割合等を定める。
(3) 木造建築物の継手、仕口等に係る仕様規定の明確化(第47条)
木造建築物の柱、はり、筋かいの継手、仕口等の接合部はその部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならない旨定められているが、使用する金物や構造形式等の詳細について明確に規定されていなかった。このため、仕様規定の明確化の観点から、構造耐力上主要な軸組等における継手、仕口等の接合部については建設大臣が定める構造方法を用いるものとしなければならないこととする。建設大臣の定める構造方法においては、継手、仕口等の形状、接合部材の種類等を定める。
(4) 鉄骨造の柱脚の仕様規定の明確化(第66条)
鉄骨造の柱脚については、基礎にアンカーボルトで緊結する等の構造方法によることとなっているが、具体的な仕様については定められていないことから、その構造方法等の仕様規定の明確化の必要がある。
このため、鉄骨造の柱脚については建設大臣が定める構造方法を用いるものとしなければならないこととする。建設大臣の定める構造方法においては、柱脚の種類、寸法、形状等を定める。
(5) 鉄骨造の溶接に係る規定の整備(第67条)
従来、鉄骨等鋼材同士の溶接接合部について詳細な技術基準が定められていなかった。このため、鉄骨造の溶接については建設大臣が定める構造方法を用いるものとしなければならないこととする。建設大臣の定める構造方法においては、有害な溶接欠陥がないこと、溶接部の寸法、形状等を定める。
(6) 鉄筋コンクリート建築物の主筋等の継手に係る規定の明確化(第73条)
鉄筋コンクリート建築物の主筋等の鉄筋を接続する場合、現行規定においては、重ね継手に係る規定のみが整備されているが、建設工事の現状においては、重ね継手を用いる事例は少数であり、大半は圧接(鉄筋の端部と端部とを熱と圧力を加えて接続する構法)等の構法により接続されている。このため、重ね継手以外の鉄筋の継手については建設大臣が定める構造方法を用いるものとしなければならないこととする。建設大臣の定める構造方法においては、継手の種類、寸法、形状等を定める。
(7)仕様規定を適用除外とできる構造計算の明確化
(第43条、第48条、第62条の8、第69条、第73条、第77条、
第77条の2、第78条、第78条の2)
仕様規定を適用除外とすることができる構造計算の規定については、従来より位置付けられているところであるが、建設大臣が定めること等により規定の明確化を図ることとする。
(1)
ステンレス鋼に係る規定の整備(第64条、第90条、第96条)
ステンレス鋼は、炭素鋼に比べ耐久性、耐火性等に優れている鋼材であるが、一般的な技術として普及・定着してきたため、ステンレス鋼を鉄骨造の規定に位置付けることとする。
具体的技術基準については、リベット接合を禁止する以外は、通常の炭素鋼と同様の規定を適用することとする。
(2)
高さ13m又は軒高9mを超える組積造の補強に係る規定の整備
(第52条の9)
高さ13m又は軒高9mを超える組積造の建設を原則禁止していた法第21条第3項が削除されたことに伴い、高さ13m又は軒高9mを超える組積造に係る補強方法の基準の整備を行う。
(社)日本建築学会における研究成果等最新の知見に基づき見直しを行う。
(1)
積雪荷重
積雪荷重の算定に用いる積雪深の設定については、各地方において運用に不統一がみられるとの指摘がある。運用の整合化を図るため、建設大臣が定める積雪深の算定方法の基準に基づき特定行政庁が積雪深を設定することとする。
また、屋根の勾配による積雪深の低減方法を、国際規格(ISO4355)に整合化する。
(2)
風圧力
現在全国一律に定めている速度圧を、各地方における風速及び建築物の周辺市街地の状況を考慮して算定する方法に改める。
具体的には、次の式により算出することとする。
q=0.6
E Vo2
q:速度圧(N/m2)
E:市街地の状況及び建築物の高さによる係数(算出方法は、建設大臣が定める。)
Vo:各地域の地上10mの平均風速(m/s)(30〜46m/sの範囲で建設大臣が定める。)
また、風力係数については、最新の知見に基づき見直しを行うこととするが、係数の設定が詳細化すること及び今後の実験・研究に基づき順次規定の追加を行う必要があることから、建設大臣が定めることとする。
(1)木材の許容応力度及び材料強度の見直し
最新の調査・研究の結果、荷重の継続時間と木材の強度との関係が明らかになったことから、木材の許容応力度及び材料強度の設定方式を改める。現在、樹種毎に具体の数値で規定している方式を、鋼材等と同様に、基準強度との関係で規定する方式に改め、樹種毎の基準強度は建設大臣が定めることとする。
(2)ステンレス鋼の許容応力度及び材料強度に係る規定の整備
ステンレス鋼を鉄骨造に使用できる鋼材として位置付けることに伴い、構造計算に用いる許容応力度及び材料強度に係る規定を整備する。
(3)コンクリートの許容応力度及び材料強度の特例規定の整備
コンクリートの許容応力度及び材料強度について、異形鉄筋を用いる場合及び高強度コンクリートを用いる場合の特例について建設大臣が定めることができることとする。
(4)
計量法の改正に伴うSI単位化(設備において同じ。)
計量法の規定との整合を図るため、重量キログラム等の単位を用いて定められている規定を、ニュートン等の国際単位系を用いた規定に改める。
(1)
採光規定の適用を受ける居室の限定
法第28条において、住宅等の居室には一定の開口部を設け、採光を確保することが義務づけられている。今回の法改正において法第28条第1項が改正され、居住のための居室、学校の教室、病院の病室及びその他採光規定の適用を受ける居室を政令で定めることとされたことを受け、令第19条において採光規定の適用を受ける居室を定める。
○採光規定の適用を受ける居室(令第19条)
法律で定めた居住のための居室、学校の教室、病院の病室以外の採光規定の適用を受ける居室としては、児童、高齢者等衛生上の配慮を必要とする者が長時間継続的にいる居室である保育所の保育室、診療所の病室、児童福祉施設等の寝室、保育・訓練等に供する居室及び病院、診療所等の談話室等の居室とすることとする。
(2)
有効面積の算定方法の合理化
採光に有効な面積の算定を行うため、現行規定では隣地境界線までの距離に応じ一定の高さを境に一律にそれより上を採光上有効とし、それより下を有効ではないとする方法としていた。
しかし、実際に窓に入射する光の量は、連続的に変化し下に行くほど次第に少なくなることから、下の方の窓もその面積を大きくすることで同一の光の量を居室内に取り入れることができるものである。
このため、現行の規定で採光上有効とされている場所の明るさを基準として、どの程度明るくなっているかを、隣地境界線までの距離と建築物の高さに応じて算定する採光補正係数を定義し、これを窓の面積に乗じて、採光上有効な窓の面積を求める方式とする。
これによって、従来採光上有効でないとされていた部分についても、窓を大きくすることによって室内に入射する光の量を同じとすれば居室とすることができることとなる。
なお、この隣地境界線と建築物の距離が離れてくると、地盤面から反射して入ってくる光の影響が大きくなり、単に隣地境界線までの距離と建築物の高さにより求めた値よりも実際には、多くの光の量が室内に入ることとなる。
このため、従来より工業系・商業系地域では、この影響を勘案し5m以上隣地境界線から離れた場合は、建築物の高さによらず、すべての窓を採光上有効としていたところである。今回、採光の算定が採光補正係数で定めることとなるため、この距離は、採光補正係数が1未満となる場合であっても、これを1とする距離とすることとする。
また、近年住居系地域においても高層化により、このような補正を行う必要性が高くなってきているため、同様の考え方で住居系地域の距離を7mとして定める。また、今回の検討の結果、商業系地域においては、4mで同様の結果が得られることが明らかとなったため、商業系地域ではこの距離を4mと改めることとする。
【有効面積の算定方法合理化のイメージ】
○有効面積の算定方法(令第20条)
有効面積=窓の面積×採光補正係数
※採光補正係数は、隣地境界線までの距離と建築物の高さに応じて定めた算定値に、隣地境界線までの距離、対面するものが道路であるか否か等により補正を加える。
(1)
居室の換気について
居室の換気設備について、自然換気設備に設ける排気筒の有効断面積、機械換気設備の有効換気量(建物や部屋の形状によらずに性能を確保できるものとして一律に定めている量)等の項目について仕様規定を定め制限を行っている。今回の政令改正において、性能規定を定め、換気設備の構造は、仕様規定へ適合しているもの又は性能規定に適合するものとして建設大臣の認定を受けたもののいずれかであるものとする。その他現行の仕様規定の見直しを行う。
※性能規定化により、より少ない換気量で最低限の室内環境を確保する方法を開発することが可能となるため、冷房や暖房を効率良く行うことができるようになる。
○居室の換気に関する性能規定(令第20条の2)
当該居室で想定される通常の使用状態において、当該居室内の人が通常活動することが想定される空間の炭酸ガスの含有率をおおむね百万分の千以下に、当該空間の一酸化炭素の含有率をおおむね百万分の十以下に保つ換気ができるものであること 等
(2)
火気使用室の換気について
従来、調理室等に設置が求められる換気設備について適切に換気を行うために給気口、排気口の面積等の項目について仕様規定を定め制限を行っている。今回の政令改正において、仕様規定として換気扇等を設けた場合の換気量に関する基準を定めるとともに、性能規定を定め、換気設備の構造は、仕様規定へ適合しているもの又は性能規定に適合するものとして建設大臣の認定を受けたもののいずれかとする。
※ 性能規定化により、より効率的な換気設備の開発が促進される。
○火気使用室の換気設備に関する性能規定(令第20条の3)
火を使用する設備又は器具の通常の使用状態において、異常な火の燃焼が生じないよう当該居室内の酸素の含有率をおおむね二十・五パーセント以上に保つ換気ができるものであること。
従来、防湿のため最下階の床を木造とした居室にあっては、床の高さを45p以上とすること等を仕様規定として定めている。今回の政令改正において、性能規定を定め、この規定に適合するものとして建設大臣の認定を受けたものについては、仕様規定への適合を要しないものとする。
○居室の床の防湿方法に関する性能規定(令第22条)
最下階の居室の床の構造が、地面から発生する水蒸気によって腐食しないこと。
今回の法改正により、地階における住宅等の居室を設けることを原則禁止としていた規定を改め、技術的基準を定め、これに適合しなければならないこととされた。このため、法第29条の委任に基づき、地階における住宅等の居室の防湿等の基準を仕様規定として定めるとともに、防水の措置について性能規定を定め、防水の措置は、仕様規定へ適合しているもの又は性能規定に適合するものとして建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○地階における住宅等の居室の技術的基準(令第22条の2)
次の基準に適合していること
・からぼりに面し開口部が設けられていること又は換気設備等が設けられていること。等(防湿の措置)
・直接土に接する部分と居室に面する部分の間に居室内への水の浸透を防止するための空隙を設け、その空隙から水を排出するための設備を設けること。等(防水の措置)
○地階における住宅等の居室の防水の措置に関する性能規定(令第22条の2)
外壁等の直接土に接する部分から居室内に水が浸透しないこと。
法第30条の委任に基づき、長屋又は共同住宅の各戸の界壁の遮音性能に関する技術的基準を定める。
○遮音性能に関する技術的基準(令第22条の3)
界壁による音の低減効果が、一定の振動数に対し隣家の会話等の内容が分からない程度の透過損失以上であること。なお、これは、現行と同水準の基準である。
(1)
階段幅の算定方法(令第23条)
建築物内での建物に起因する事故で階段は、転落等の危険の大きい場所であり手すりを設ける必要性が高くなっている。一方、幅の狭い手すりであれば、それにより階段の幅が多少減少しても安全に階段を昇降するために影響は少ないことが明らかとなってきている。このため、階段幅の算定にあたり幅10pまでを限度に、ないものとみなして算定することとする。
(2)
手すりの設置の義務づけ(令第25条)
高齢化の進展を踏まえ、階段への手すりの設置を義務づけることとする。
(1)
くみ取り便所等
くみ取り便所の構造、特殊建築物及び特定区域の便所の構造については、従来の仕様規定を改め、性能規定を設け、これらの便所の構造は、性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。また、改良便槽について、建設大臣が別に基準を定めることができる旨の規定を廃止し、従来この規定に基づき告示で位置づけていた仕様を政令に取り入れる。
○くみ取り便所に関する性能規定(令第29条)
屎尿に接する部分から漏水しないものであること 等
○特殊建築物及び特定区域の便所に関する性能規定(令第30条)
便器及び小便器から便槽までの汚水管が、汚水を浸透させないものであること 等
(2)
屎尿浄化槽
法第31条第2項の委任に基づき、し尿浄化槽について汚物処理性能に関する技術的基準を定める。
○汚物処理性能に関する技術的基準(令第32条)
通常の使用状態において、放流水の汚れ(BOD(生物化学的酸素要求量))が一定値以下であること(BODの値は、従来令第32条で求めていたものに同じ) 等
従来、煙突について、火災の発生の防止等の観点から火の粉による延焼の防止、煙突の過熱による火災の防止等の項目について仕様規定により制限を行っている。このうち煙突の過熱による火災の防止の項目について、性能規定を定め、仕様規定に適合するもの又は性能規定に適合するものとして建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○煙突の過熱による火災の防止に関する性能規定(令第115条)
煙突の周囲にある建築物の部分を煙突内の廃ガスその他の生成物の熱により燃焼させないこと 等
火災時において円滑な避難を担保するため、一定の建築物について非常用照明設備の設置を義務づけている。
非常用照明の構造について、従来、床面での照度、予備電源の設置等の項目について仕様規定により制限を行っている。今回の政令改正において、性能規定を定め、非常用照明設備の構造は、仕様規定に適合するもの又は性能規定に適合するものとして建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○非常用照明の性能規定(第126条の5)
火災時において、停電した場合に自動的に点灯し、かつ、避難するまでの間に、当該建築物の室内の温度が上昇した場合にあつても床面において一ルクス以上の照度を確保することができること
従来、建築設備の構造強度については、各設備ごとに定められていたが、昇降機を除き共通した事項が多く、より一覧性のある規定とするため、今回、整理して位置づけることとする。
また、屋上から突出する水槽、煙突等は、強い風圧力を受け、また、地震等の影響を大きく受けるものであるため安全性の検証を構造計算により行うことを義務づけることとする。
(1)
防火区画等の貫通部に用いる配管の構造
従来、給水管、配電管等が防火区画等を貫通する部分について、その部分から延焼することを防ぐため配管設備を不燃材料とする仕様規定が設けられている。今回の政令改正により性能規定を定め、防火区画を貫通する配管設備は、仕様規定に適合するもの又は性能規定に適合するものとして建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○防火区画等を貫通する部分の配管の材料の性能規定(第129条の2の5)
防火区画等を貫通する管に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一定時間(防火区画等に要求される性能に応じ、20分間、45分間又は1時間)防火区画等の加熱側の反対側に火災を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないこと。
(2)
飲料水の配管設備の材料
従来、飲料水の汚染を防止するため、飲料水の配管設備の材質について不浸透質の耐水材料とする等の仕様規定を定め制限をおこなってきた。今回の政令改正において、この規定を性能規定に改め、飲料水の配管設備は、当該性能を有するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○飲料水の配管設備の性能規定(第129条の2の5)
配管設備から漏水しないものであること及び配管設備から溶出する物質によって汚染されないものであること。
(3)
冷却塔の防火性能
高層階の屋上にあり、一端着火した場合消火が困難な冷却塔設備の防火性能については、従来仕様規定で定められてきた。今回の改正に当たり、性能規定を定め、冷却塔の構造については、仕様規定に適合するもの又は性能規定に適合するものとして建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○冷却塔の防火性能(令第129条2の7)
冷却塔設備の内部が燃焼した場合においても建築物の他の部分が着火する温度以上に上昇させないこと
(4)
その他
@一定規模以上の建築物に設ける風道等を不燃材料とする規定について、一つの住戸内のみのための風道等局部的に設けられる風道等の適用を除外することとする。(令第129条の2の5第1項)
A換気設備について、換気設備の多様化(大空間の居室における一定の場所を限った空気の調整)等を踏まえた基準の見直しを行う。(令第129条の2の6)
(1)
適用範囲の明確化
エレベーター、ダムウエーターの定義を行うとともに、ダムウエーターの名称を改め小荷物専用昇降機とする。
(2)
エレベーター
@構造上主要な部分
従来、エレベーターの構造上主要な部分については、かごの落下を防ぐため仕様規定及び構造計算により制限を行ってきた。今回の政令改正でこれを改めて性能規定を定め、この規定に適合するものとして、建設大臣が定めた構造方法、エレベーター強度検証法により検証を行ったもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとする。
その他屋外に設けるエレベーターに関し、風圧力に対する安全性を検証することを義務づける等の規定を設ける。
○エレベーターの構造上主要な部分に関する性能の基準(第129条の4)
設置時及び使用時のかご及びかごをつり又は支える主要な支持部分が通常の使用状態における摩損又は疲労破壊を考慮して次の基準に適合すること。
・かごの昇降によって摩損又は疲労破壊を生ずるおそれのある部分以外の部分は、通常の昇降時の衝撃及び安全装置が作動した場合の衝撃により損傷を生じないこと。
・かごの昇降によって摩損又は疲労破壊を生ずるおそれのある部分については、通常の使用状態において、通常の昇降時の衝撃及び安全装置が作動した場合の衝撃によりかごの落下をもたらすような損傷が生じないこと。
(エレベーター強度検証法の概要)
1) 通常の昇降時、安全装置の作動時に構造上主要な部材の各断面に生ずる応力度を算定する。
2) 設置時及び使用時のそれぞれについて昇降時、安全装置の作動時に対応した許容応力度(設置時の値は通常の使用状態の摩損・疲労を考慮して、使用時より余裕を見込んだ値とする。)を定め、1)で求めた応力度がこれを超えないことを確かめる。
3) 摩損・疲労による材料強度の低下が生ずる部材(主索等)の一部が破断した場合に、当該部材の各断面に生ずる応力度を求め、これが、かごの落下をもたらすような許容応力度を超えないことを確かめる。
A制御器・制動装置
エレベーターの制御器及び制動装置については、エレベーターを安全に利用するために重要な機能を有するものである。これについては、これまで個々の装置の設置を求めるなどの仕様規定により制限を行ってきた。今回の政令改正で制御器・制動装置に関し、性能規定を定め、その構造は、この規定に適合するものとして建設大臣の定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○制御器の性能に関する性能規定(令第129条の8)
かごに人が乗り又は物が積み込まれた場合に、かごの停止位置が著しく移動せず、かつ、エレベーターの保守点検を安全に行うために必要な制御ができるもの
○エレベーターの制動装置に関する性能規定(第129条の10)
かごが昇降路の頂部又は底部に衝突するおそれがある場合に、自動的、かつ、段階的に作動し、これによりかごに生ずる垂直方向の加速度が9.8m/s2(立っている人に危害を生じさせないレベル)を、水平方向の加速度が5.0m/s2(立っている人が壁等に強くあたり危害を生じることのないレベル)を超えることなく安全にかごを制止させることができるものであること 等
B
その他の改正
・かご及び昇降路の内装に関し、防火材料の性能が明らかとなったことに伴い、不燃材料とすることを求めていた従来の規定を改め、かご内等の小さな火気に対し必要な性能を有する難燃材料で良いこととするとともに、小規模な建築物に設けるエレベーターに関する材料制限を廃止する(令第129条の6及び7)
・2方向出入り口の制限の廃止(現行令第129条の5及び6)
・各階強制停止装置の義務づけの廃止(現行令第129条の9)
(3)
エスカレーター
エレベーターに準じて性能規定化するとともに、仕様規定の見直しを行う。
@速度制限の見直し(令第129条の12第1項)
最近のエスカレーターの安全性に関する知見、勾配のゆるいエスカレーター等の開発状況等を踏まえ、踏段の定格速度の上限を30mから引き上げ、50mまでの範囲内で、エスカレーターの勾配に応じ建設大臣の定める速度以下とすることとする。
A構造上主要な部分
エスカレーターに準じ、性能規定化を行う。
○エスカレーターの構造上主要な部分に関する性能の基準(第129条の12第2項)
エレベーターの規定を準用する。
B制動装置
多様な速度のエスカレーターが開発されつつあることを受け、今回の政令改正において制動装置に関し、性能規定を定め、制動装置の構造は、この性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○エスカレーターの制動装置に関する性能規定(第129条の12第5項)
人又は物に危害が生じるおそれある場合に踏段に生ずる進行方向の加速度が1.25m/s2(踏段上の人がバランスを崩すおそれの少ないレベル)を超えることなく安全に踏段を制止させることができるものであること
Cその他
・未だにエスカレーターと天井のすき間等の間に人がはさまれる事故が多い状況に鑑み、はさまれ防止措置の強化を行う。(令第129条の12第1項)
・輸入の円滑化の観点から、エスカレーターの幅の算定方法を諸外国の例に整合化する(令第129条の12第1項)
(3)
小荷物専用昇降機
最近の事故例を踏まえ、かごがその階に停止していない場合に出し入れ口が開かない構造とすることを義務づけるとともに、昇降路の内装に関する材料制限の緩和を行う。
(4)
非常用エレベーター
途中で階の面積が小さくなるもの等非常用昇降機を利用しなくも避難上消火上支障がない階には停止することを要しないものとする。(令第129条13の2)
従来、避雷設備については、仕様規定により制限を行ってきている。今回の政令改正で、性能規定を定め、避雷設備の構造は、この性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○避雷設備の性能規定化(令第129条の15)
雷撃によって生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができるもの
(1)
構造上主要な部分(令第144条第1号)
これまで、鋼造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造に限っていた材料の制限を改め、材料に応じた構造方法及び構造計算の義務づけを行う。
(2)
摩損又は疲労破壊により材料強度の低下が生じるおそれのある部分(令第144条第2号)
構造上主要な部分で摩損等により材料強度の低下が生じる部分については、エレベーター同様、摩損又は疲労破壊による材料強度の低下に配慮した設計を行うことが必要となる。このためエレベーターに準じ、性能規定を定めることとする。
○遊戯施設の構造上主要な部分に関する性能の基準(令第144条第二号)
エレベーターの規定を準用する。
(3)
客席部分
遊戯施設が多様化していることから、客席部分の落下防止の措置について、性能規定を定め、この部分の構造は、性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○客席部分からの落下の防止に関する性能規定(令第144条第四号)
走行又は回転時の衝撃及び非常止め装置の作動時の衝撃が加えられた場合に、客席にいる人を落下させないものであること。
(4)
非常止め装置の構造
遊戯施設が多様化していることから、今回の政令改正で非常止め装置に関し性能規定を定め、非常止め装置の構造について、性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとする。
○遊戯施設の制動装置に関する性能規定(第144条第6号)
自動的に作動し、かつ、当該客席部分以外の遊戯施設の部分に衝突することなく制止できるものであること