富山市優良田園住宅の建設の促進に関する基本方針

 

 

富山市は、北アルプスを源とする常願寺川や神通川などの河川によって育まれた富山平野の中央部に位置し、雄大な立山連峰を背景に四季折々の美しい自然環境を持つ都市である。また、日本海側有数の中核都市であり、JR富山駅北の都市MIRAI地区に代表される高度な都市機能が集積した近代的都市として発展をとげている。

このようななかで、本市の農村地域などにおいては、市街地の外延化よる都市化圧力を受けている地区がある一方で、高齢化の進展や小学校児童数の減少など過疎化傾向の地区もある。このような地域の再生を図るためには、農業の高度化等による経営の安定化や雇用確保を図るとともに、本市特有の田園景観を生かした魅力ある居住環境とコミュニティの形成を図る必要がある。また、成熟した長寿社会への移行、ライフスタイルと価値観の多様化や交通・通信手段の発達に伴って、自然と共生する「潤いとゆとりある田園生活」を求める人々も増えてきている。

このことから、豊かな自然や田園風景に囲まれた農村地域などにおいて、優良な住宅の建設を促進することにより、健康的でゆとりのある生活の確保と地域振興を図ることを目的として、「優良田園住宅の建設の促進に関する法律(平成10年法律第41号)」に基づき、「富山市優良田園住宅の建設の促進に関する基本方針」を定めるものである。

 

1 基本的な方向

 

(1) 優良田園住宅建設促進の基本的な考え方

本市における豊かな自然環境や地域特有の資源を有効に活用するとともに、市民の多様な住宅ニーズに応え、農村部において農業振興地域整備計画等との調和を図りながら、都市的土地利用の適正な誘導と貴重な自然環境の一体的整備により、定住と交流の促進、魅力的な居住空間の創出、自然環境の保全、地元産業の振興・育成、個性的な地域社会構築の実現など、本市全体の活性化に寄与する優良田園住宅の建設を促進することとする。

このため、優良田園住宅を建設しようとする者は、この基本方針に従って土地の選定や公共施設の建設、居住環境の創出、農業などとの調和、自然環境の保全に努めなければならない。

 

(2) 優良田園住宅の住宅像

   優良田園住宅は、様々なライフスタイルに対応する次のような居住者像、住宅像の想定を基本としながら良好な住環境の提供と魅力ある居住環境の形成を図るものとする。

ア.田園通勤型

豊かな自然に囲まれた環境の中で、夫婦・親子が潤いと安らぎのある生活を送りつつ、田園地帯から、都心部などに通勤する人のための住宅

イ.退職ライフ型

退職後の老後生活を、自然豊かな環境の中で、植栽の手入れ、家庭菜園づくりなどをしながら、既存集落の人々との交流を持ち、生涯の生きがいを求める人のための住宅

ウ.UJIターン型

    大都市などから自然豊かな住環境や心の安らぎを求めて移住し、近隣や既存集落 の人びととの交流を持ちながら、新たな生活を始める人のための住宅

エ.自然遊住型

    地域周辺の丘陵地、樹木、草花、小川のせせらぎ、虫の声など四季折々の豊かな自然環境を楽しみながら、自己実現と生きがいを求める人のための住宅

 

 

2 優良田園住宅の建設が適当と認められるおおよその土地の区域に関する事項 

 

優良田園住宅の建設区域は、原則として、既存集落の活性化につながる区域及び上下水道、道路など社会資本が整備されている区域とするほか、次のような条件を有する区域とする。

@ 市街化調整区域であること。

A 独立して一体的な日常生活圏を構成していると認められる既存集落(隣棟間隔50m以内をもっておおむね50戸以上の集落およびその周辺おおむね50mの範囲内の区域をいう。)内、又は集落を離れる場合は、郊外型住宅地として良好な居住環境を確保できる区域のいずれかであること。

B    義務教育施設等の公共施設が良好な社会生活を営むに足りる水準で整備されていること。      

C    富山湾、呉羽丘陵、神通川・常願寺川・立山連峰の眺望等、既存の良好な自然環境を保全・活用し、一体的な居住環境の形成を図ることが可能な地域

 

個性豊かな地域社会の創造のために必要な事項

 

(1) 基本的要件

   優良田園住宅は、周辺との調和を図り、田園住宅にふさわしい環境条件を確保するため、

次の要件に適合するものとする。

 【優良田園住宅建設の基本的要件】

項  目

要  件

@ 敷地面積の最低限度

500u

A 建ぺい率の最高限度

30%

B 容積率の最高限度

50%

C 階数および高さ

ア.階数は、地階を含め3以下

イ.高さの最高限度は、10m

D 建築物の壁面の位置の制限

 堆雪・植栽スペースを設け、住宅相互を接近させない。

ア.住宅は、道路、敷地境界線から2.0m以上

イ.附属建物(物置、車庫等)で、軒の高さが3.5m以下のものは、道路、敷地境界線から1.0m以上

E 建築物の構造・形態・色彩

 周辺の自然環境との調和に配慮する。

ア.構造は、原則として木造とする。

イ.屋根は、勾配屋根とする。

ウ.建築物の外壁及び屋根の色彩は、原色など派手な色(赤、黄、青等)を避ける。

F 建築物の用途

一戸建て専用住宅及びこれに附属する建築物(車庫、物置)とする。

G 垣・柵、緑化

ア.柵を設ける場合は、原則として高さがおおよそ1.5m以内の生け垣とする。なお、透視性のないものは避ける。

イ. 敷地内に植栽を施し、敷地内の緑化率(樹木、草花、芝、

家庭菜園等で土地の表面が覆われた部分)は、おおよそ

20%以上とする。

H その他

 

 下水道整備計画区域(農業集落排水、特定環境保全公共下水道)以外については、合併浄化槽とする。

敷地面積、建ペい率、容積率、階数および高さの算定方法については、建築基準法(昭和25年法律第201号)の規定によるものとする。ただし、同法の規定による特例措置は適用しない。

 

(2) 地域特性への配慮

  優良田園住宅の建設にあたっては、農用地や自然環境の保全等それぞれの地域の特性を発揮するため、次のような事項に配慮するものとする。

 【優良田園住宅建設において配慮すべき事項】

項  目

配慮すべき事項

例  示

@ 魅力ある田園居住空間

 

 

 

 

 

 

ア.安全で潤いのある街並み形成

イ.田園環境と調和した住宅建設の促進

ウ.冬季居住環境への配慮

 

 

・地区計画、緑化協定等による街並み形成

・地域の風土・自然景観に合った建築工法や建築材料の採用

 (木造、瓦屋根、板壁等)

・田園風景を損なわない宅地造成

 (地形の保全)

・法(のり)面等の緑化

 (法面は、擁壁にもツタなどを配慮)

・道路積雪の堆雪スペースを配慮

A 良好なコミュニティの形成

 

 

ア.新規住民の良好なコミュニティの形成

イ.既存集落住民との交流・連携を通じ、農村文化、農村システム等との融合

・新規居住者の組織化

・新規居住者の地元組織への参画と相互協力

・隣接自治会、農家組織との交流

・農作業、農産物の加工・直売等の共同作業

・施設の共同利用

 (公園・集会施設・共同菜園等)

B 自然との共生、農業との調和、地域資源への配慮

ア.自然環境の保全、居住空間との共生

イ.緑花木化の推進

ウ.周辺農地への悪影響の防止

エ.地域資源の循環・活用

・地域に残された小川・山林・樹林等の保全、敷地舗装の抑制など

・地域の植生に合った植栽

・生活排水の適正な処理

・家庭生ごみ・落ち葉の堆肥化

 (家庭菜園への還元、ごみの減量)

・地域材の活用

・太陽光発電の街灯利用、雨水の植栽等への利用

C 高齢社会への配慮

 

 

 

 

ア.高齢者にとって安全なまちづくり

イ.高齢者が安心して暮らせる住宅建設の推進

    道路の段差解消

    公園・休憩施設の整備

 (ベンチ・あづまや等)

・長寿社会対応住宅

 (床段差の解消、玄関・廊下・階段の手摺設置、

浴室・トイレの工夫等)

 

 

 

 

4 自然環境の保全・農林漁業の健全な発展との調和に関する事項

 

優良田園住宅の建設にあたっては、周辺地域の自然環境や農林漁業に及ぼす影響を最小

限にとどめるために、次のような事項に配慮するものとする。

【周辺との調整において配慮すべき事項】

項  目

配慮すべき事項

@ 周辺の自然への配慮

ア.貴重な動物、野鳥、植物などの生息環境の保全

イ.地域に適した樹木、草花の植栽

ウ.関係する地権者・地元団体・行政との協議・調整

エ.生活排水や雨水排水の適切な処理

A 周辺の農林漁業への配慮

 

 

 

ア.農林漁業の土地利用、水利などに関する事前調査の実施

イ.関係する地権者・地元団体・行政との協議・調整

ウ.生活排水や雨水排水の適切な処理

エ.周辺との連携による農林漁業の振興方策

(例:農作業の協力や援農ボランティアの組織づくり)

 

5 その他必要な事項

 

 優良田園住宅に係るその他必要な事項として、以下の要件を満たすものとする。

 

@ 優良田園住宅の建設を目的として都市計画法(昭和43年法律第100号)に基づく開発行為をする場合は、本市の「市街化調整区域における地区計画制度の運用基準」に基づき、地区計画を定めること。

A 優良田園住宅建設の区域の規模は、街区を形成する一定の広がりを有する規模とし、1.0 ha以上5.0ha未満とする。ただし、建設区域が2Aの既存集落内である場合の最低面積は0.5haまで緩和できるものとする。

B @の開発行為については、本市の開発許可基準に適合し、当該許可の見込みがあること。

C     農地法(昭和27年法律第229号)に定める良好な営農条件を備えた農地(甲種農地、第1種農地)は、建設区域に含まないこと。また、同法第5条に基づく農地転用許可等を必要とする場合は、当該許可等の見込みがあること。

D     農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)第8条第2項第1号に規定する農用地区域は、建設区域に含まない。

E     優良田園住宅の建設を確実なものとするため、「優良田園住宅の建設の促進に関する法律」第4条第3項の規定による認定後、遅滞なく事業に着手し、おおむね3年以内に建築物の完成が見込めるものであること。

F     優良田園住宅の建設について、地域の自治会等への周知に努めること。

 

 

附  則

1 この基本方針は、平成15年7月1日より施行する。