最終更新日:2010年4月12日
主な経歴
1965年
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三重県津市生まれ
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1987年
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ツェルマット観光局 日本人対応インフォメーション、セールス・プロモーション担当
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1992年
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JTIC.SWISS(日本語インフォメーションセンター)設立
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1996年
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環境省環境カウンセラー(事業者部門)として登録
ヴァレー州観光局日本・アジア向けプロモーション担当
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1999年
| Mt.6(ベスト オブ ザ クラッシック マウンテンリゾート)
環境政策とCS(顧客満足度推進)顧問就任
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2003年
| 環境省環境カウンセラー(市民部門)として登録
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2004年
| 特定非営利活動法人 日本エコツーリズム協会 理事
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2004年
| まちづくり観光研究所 主席研究員
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カリスマ名称
「世界のトップレベルの観光ノウハウを各地に広めるカリスマ」
選定理由
スイス・ツェルマットでの観光局やNPO法人等での経験、世界各地でのプログラム・ツアーの実施経験を活かし、日本の各地域において、講座・セミナーの開催による「サービスクオリティ」の向上や、「プロフェッショナル」のツアーガイドの育成、また自立できる組織づくりや地域性を活かした商品開発など地域観光のコンサルタントとして、各地域の観光振興に大きな役割を果たした。
具体的な取り組みの内容
地域セミナー・講座
これまでの一般的な観光に関わる講座・セミナー(おもてなし・ホスピタリティー、人材育成、組織づくり、プロモーション、セールス・マーケティング等)とは、一方的なスクール形式や数日間に渡って集中的に行うものがほとんどであり、講義内容は素晴らしくても、受講した人や地域がその後に十分な結果を出すことは非常に難しく、成功例は意外と少なかった。
山田氏が行う講座・セミナーは単発のものもあるが、基本的には年間を通して月に一度のペースで開催して、継続的に様々な課題に取り組んでいる。
また、多くのコンサルタントや講師が行う講座・セミナーの内容は、基本的に何処の地域でも使い回しの利く概論的、一般的なものがほとんどであるが、山田氏の場合は内容と展開、進め方は対象者や地域によって大きく違っている。その地域に何度も足を運び、地域住民との共有時間を増やし、地域が求めているものを的確にその特性や時間と空間に合う形で提供しているのである。そして、講座・セミナーでは、徹底的に「地域性(個性)」重視のスタンスで取り組み、人と地域が自ら行動出来る体制を構築することを目的としている。
セミナー・講座
その人や地域に合った最適な方法で行う。受講者もお客様と同じ「ひとり十色」である。事業の目的、テーマを明確にさせる。理念が最重要。
例えば、地域で体験型プログラム・ツアーを企画・運営する場合、ほとんどのコンサルタント・講師による講座では、その期間内で作り上げたプログラム・ツアーが最大の結果となる場合が多く、その後の新しい商品造成に結び付かないことが多い。これは地域に真の企画・運営能力が付いていない証拠であるといえる。これは、レストランの新米シェフにレシピを一つしか教えなかったようなものであり、日本はどの地域にも素晴らしいシェフ(人材)と素材(地域の魅力)がある。ここでレストラン(地域)に必要なのは、新しいレシピ(プログラム・ツアー)を自分達で作り続けることの出来る力であると山田氏は言う。山田氏はレシピづくりの手法からメニュー構成、マーケティング、セールス・プロモーション、顧客満足までを考えて、地域が自らアクション出来る体制づくりをしている。
Mt.6(ベスト オブ クラシック マウンテンリゾート)、鳥取県「魅力を伝える人づくり」事業(智頭町、鹿野町など)、継続中である東紀州エコツーリズム研究会の「エコツアーセミナー」や福島県北塩原村商工会観光部での「観光振興に関する講座《滞在型観光へ向けての手法について地域の宝を使った企画運営》」など、地域が自ら時間を掛けて作り上げてきたものが、継続と持続可能な形となり、結果を出している。
また、上記のような地方での継続的な講座・セミナー以外にも、鳥羽の離島から四日市、仙台、福岡、札幌などの都市部でも多様な内容で多くの講座・セミナー、講演会を行っている。
山岳リゾート連合体「Mt.6(マウント シックス)~ ベスト オブ クラシック マウンテン リゾート」
Mt.6とはわが国の山岳リゾートである野沢温泉、蔵王温泉、志賀高原、草津温泉、白馬八方尾根、妙高高原が、1999年6月に「リゾート文化の創造と継承」を誓い、情報交換を行ないながら、より質の高いサービスを提供しようと組織された連合体である。この広域連合体は、6地域の観光関係者やスキー業界関係者などから成る完全な民間の組織である。山田氏は、この組織の立ち上げから携わった人物の一人である。
この組織のヒントになったのは、ヨーロッパアルプスの広域連合体でスイス、オーストリア、フランス、ドイツ、イタリアの歴史ある高級通年リゾート12地域から成る「Best of the Alps(ベスト オブ ジ アルプス)」である。山田氏はこのメンバーでもあるスイス・ツェルマット(当時、Best of the Alps事務局があった)の観光局の仕事をしている関係もあってMt.6に係わることになった。

Mt.6スキークロス大会
この広域連合体の運営にあたって、山田氏が最も力を入れて取り組んでいるのが、顧客に対するサービスの向上である。これは広域連合体自体の目標でもある。 山田氏は、Mt.6のCS(顧客満足度)向上分科会と共に、顧客と触れ合うことが最も多いリフト会社や旅館・ホテルの従業員、スキー・スノーボード教師などを対象にサービス向上講習会を繰り返し開講している。 講習会では、顧客に対するサービス提供者としての心構えに始まり、いかに顧客の満足度を上げてリピーター率を上げるかなどについて、欧米のスキーリゾートと比較しながら魅力的な顧客サービスについて分かりやすく指導している。 (左)Mt.6スキークロス大会これまでのアルペン系種目の大会ではなく、大人から子供までが楽しめるスキー大会(スキークロスは4人が一度に滑る)。特に地元の子供達が活躍、両親と一緒に楽しむ。 一方、経営者を対象にも講習会を行い、従業員サイドと経営者サイドの両面から、サービスの向上を図っている。 その結果、各地のアンケート調査でも、サービスクオリティ向上の結果が現れてきている。また、同様の「サービス向上講習」は鳥取県や福島県、三重県などの他の地域でも開催しており、ホテル・旅館従業員からお土産店の店員、バス・タクシーの乗務員、地元のガイドまで幅広く対応して好評を得ている。
このような組織は、ともすれば地域で肩書きのある人達の集まりになってしまうことが多い。そこで、若い人達の力を組織内で反映させるために、青年分科会(現・CS(顧客満足度)向上分科会)の設置を同年代の経営者達と提案した。30~40才代の若手経営者に活動の場を提供し、彼らの思いを実現できる環境が出来たおかげで、各エリアにおいて地域特有の問題を越えた若手の活動が可能となったのである。
この広域連合体がきっかけとなって、各構成地域がこれまで知ることの無かった、他地域の展開するサービスや運営手法等を知る機会にもなり、自らの地域にどのようなサービスが足りないかなどを認識することにもつながっている。 これらの結果の一例として、志賀高原ではツアーアテンダーシステムという新しいプログラムが誕生した。地元のスキーインストラクターがレッスンをするのではなく、志賀高原全山を客の技術レベルに合わせてコース選定などを行い、自然や地域の解説をしながら案内する欧州型のスキーガイドシステムである。 あるメンバーのスキー場では3社あるリフトチケットが共通化され、クレジットでの支払いも可能になるなど、スキー場利用者に便利な制度が誕生した。 その他にもMt.6フェスティバルやスーパースキースクール、スキークロス大会などの各地域で集客・誘客、顧客満足度を上げるイベントなども行われている。 このような山田氏の活動とアドバイスには、スイス・ツェルマットやBest of the Alpsでの10年以上にわたる経験が活かされているのである。
山田氏とスイス・ツェルマット
(1)スイス屈指の観光地 ツェルマット
ツェルマットは、イタリアと国境を接するスイス・ヴァレー州南端に位置し、マッターホルンやモンテローザに代表される秀峰に囲まれた山岳リゾートで、アルプス観光のまさに王道である。村内は電気自動車と馬車だけが走る「カーフリーリゾート(一般自動車の乗り入れ禁止)」である。通年山岳リゾートとして、登山者やスキーヤーなどのスポーツアクティビティを楽しむ方々だけではない本物志向の大人のリゾートでもある。
(2)バックパッカーとして訪れたツェルマット
1986~87年、当時学生だった山田氏はヒッチハイクをしながら、ヨーロッパから日本を目指して旅していた。北欧から南下して、途中スイスにも入国した。スイスに来たからにはマッターホルンを一目見たい、そう思った山田氏は、そのツェルマットを訪れた。

マッターホルンと集落
スイスの秀峰マッターホルン。この山を見ただけではお客様は満足しない。長期滞在させる時間消費(ソフト)の仕組みが重要。
山田氏は、ツェルマットの自然環境の美しさはもちろん、生活環境についても驚かされた。馬車と電気自動車だけが走り、すばらしく美しいツェルマットの街並みに、日本では感じられない雰囲気の良さとスイスらしい地域性を感じたのである。
もちろん、その後ツェルマットに住むこととなるなどとは思いもせず、当時はツェルマットでの数日を過ごしたのであった。
その後、山田氏はエージェントの仕事を通してツェルマットの観光局長と出会うことになる。局長は、日本からのお客様のためにインフォメーション活動として観光局でのカウンター業務や日本でのセールス・プロモーションを手伝ってほしいと、山田氏を抜擢することになった。
その後、現地での日本人向けのインフォメーション活動は独立して、JTIC(日本語インフォメーションセンター)として、ボランティアで旅の相談や情報の発信を行っている。
スイスや世界で得たノウハウを日本へ
山田氏は、ツェルマットで観光に携わって仕事をするうち、マーケティング、プロモーションなどだけではなく、行政や地元住民の取組など様々な環境と観光活動に触れることとなる。
ツェルマットでは、山岳ガイド、スキー教師達もゲストを楽しませることの上手さ、特に地元の良さを伝える能力はすばらしい。ただ山を案内したり、スキーの技術を教えたりするだけでなく、ゲストと一緒にいる間、積極的にコミュニケーションをはかり、インタープリテーション(地域の良さを伝える解説行為)を行うのである。それは、よくある山の説明や自然解説だけではなく、夏なら冬の、冬なら夏の様子の話をするなど、もう一度違うシーズンにも来たくなるようなセールストークも行うのである。このようなガイドや教師達は、お客様の満足度は何かということを常に考えている。また、ほとんどのメンバーが地元の人達である。
山田氏自身もツェルマットで唯一の日本人スキー教師である。ツェルマットでのスキー教師デビューに際して教えられたのは、スキーのテクニックはもちろんのこと、お客様を楽しませることとツェルマットの良さを伝えることであったという。
ツェルマットは日本からの視察も多く受け入れていたが、ツェルマットのこのような環境で、山田氏はツェルマットだけではなく欧州各地への様々な団体の観光や環境に関する視察やツアーをコーディネイトし、またガイドとしても十数年以上の経験と実践を積んだ山田氏に対して、今度は日本の視察者や関係者から、山田氏がツェルマットや世界で得たノウハウを教えてほしい、といった招聘の声がかかるようになったのである。
日本の各地での取組

山田氏スキー教師姿
山田氏の活動では、全国各地でガイドの育成と組織化にも力を注いでいる。
観光地の多くは、ボランティアガイドの方も多く活動されているが、山田氏が、育成しようとするのは「ボランティア」ではなく、「プロフェッショナル」のガイドである。山田氏は、「ボランティアのガイドは、自らの生き甲斐のためにガイドをしているという側面がある。しかし、プロのガイドはあくまで顧客を満足させるためのガイドでなければならない。」と指摘する。
ここのような考え方の下に、山田氏は「ボランティア」ではない「プロフェッショナル」のツアーガイド育成のための、講演会・セミナー、懇談会を行う活動を行っている。
このなかで山田氏は、
- ガイド本人も商品であり、専門的知識やホスピタリティーとエンターテイメント性を持ち合わせていなくてはならない。
- 観光資源に過度に依存せず、付加価値の高い観光情報と地域の商品構成を提供する能力を持ち、リピーター客に対応できる深さを持たねばならな い(絶えず事前期待を上回る事後評価を得られる対応と顧客満足度の徹底的推進)。
等、山田氏自身の経験に基づいた指導を行っている。

サービスとホスピタリティ
ホスピタリティの無いサービスはありえません。いつでも状況に合ったベストの提供と質の追及を。
最後に
山田氏は「日本の観光地の問題点は共通している」と言う。他の産業と比べて構造的欠陥が多いこと、景気や交通の便、観光資源の良し悪しなどに原因や責任を転嫁している場合が多く、自らの経営努力不足や地域全体での取組が上手く機能していないと指摘する。来客数ではなく実質的な収益性を考えた戦略を取ることの重要性も説いている。
また「地域の人々が実際に何をやっていいのか分からず、行政に頼み込む」もしくは、「行政が地域の意向を考えずに組織づくりや人材育成を地域活性の名の下に強引にやる」場合も多いと言う。これらのような地域において、本来の観光による地域活性・経営を正常な形で進めるうえで、山田氏の活動が大きな足がかりとなり、「地に足のついた」地域に合わせた体制づくりが進められており、山田氏は各地の観光振興に大きな役割を果たしているのである。
20年近く前にスイスに渡った山田氏も、現在は1年の約半分近く(1ヶ月おきにスイスと日本を往復して)日本国内を飛び回りながら、各地の観光振興に力を尽くしている。

アジア・太平洋国際エコツーリズム大会にて。
参考資料
- 「観光文化vol.132」 (財)日本交通公社
- 「環境市民とまちづくり 3 地域共生編」 編集代表 進士五十八
- DBJ Tokai Report VOL.2 東海地域における観光の振興に向けて2) ~「学び」の視点からの提言~ 日本政策投資銀行東海支店
- 日経研月報4月号2005年 財団法人日本経済研究所
- 新聞連載トラベルニュース「NATO(No Action Talk Only)廃絶!」トラベルニュース社