ユニバーサルデザイン政策大綱 平成17年7月  ユニバーサルデザイン政策大綱 目次 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.1 T.現状と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.3 1 これまでの取組み   2 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた場合の課題 U.ユニバーサルデザイン政策大綱の基本的考え方・・・・・・・・・P.7 1 利用者の目線に立った参加型社会の構築 2 バリアフリー施策の総合化 3 だれもが安全で円滑に利用できる公共交通 4 だれもが安全で暮らしやすいまちづくり 5 技術や手法等を踏まえた多様な活動への対応 V.具体的施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.12  1 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた多様な関係者の参画の仕組みの構築  2 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた評価・情報共有の仕組みの創設(ユニバーサルデザイン・アセスメント)  3 一体的・総合的なバリアフリー施策の推進  4 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた基準・ガイドラインの策定  5 ソフト面での施策の充実(「心のバリアフリー」社会の実現等)  6 だれもが安全で円滑に利用できる公共交通の実現  7 だれもが安全で暮らしやすいまちづくり  8 様々な人・活動に応じた柔軟な対応  9 IT等の新技術の活用  10 先導的取組みの総合的展開(リーディング・プロジェクト、リーディング・エリア) ユニバーサルデザイン政策大綱  はじめに 我が国は、20世紀を中心として進められた近代化、産業化を通じて、世界でも有数の経済大国となった。とりわけ、戦後の半世紀には、急速な都市化と産業化を経験し、それに適したまちや交通体系を築き上げてきた。これらは、成長を基調とする社会に適したものであった。 しかしながら、21世紀に入った今日、我が国の社会は大きな変動期に直面している。急速な高齢化と少子化が同時進行し、かつて経験したことのない人口減少社会を迎えようとしている。こうした社会では、高齢者が様々な生き方を主体的に選択することができるよう配慮した自立支援の施策等が進められている。女性も男性も互いにその個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現に向けた取組みが進められている。  障害者が自己選択と自己決定の下に社会のあらゆる活動に参加、参画する共生社会の実現が求められており、障害者が自らの能力を発揮し、自己実現できるよう支援するための諸施策等が進められている。  さらに、国際化が進む中、ビジネス、観光など様々な領域で外国人の我が国社会との関わりが深まっている。 このように一人一人がその個性と能力を発揮し、自由に参画し、自己実現を図っていけるような社会づくりに向けて、取り組むべき時代に直面している。 国土交通省は、こうした社会の実現に向けて21世紀の社会を支える社会資本・交通の整備について、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザイン*1の考え方を踏まえた国土交通行政を推進することとした。 このため、昨年10月から省内に「ユニバーサルデザイン政策推進本部」を組織し、延べ15回にのぼる議論を積み重ねてきた。そのなかで、国土交通行政の全分野について総点検を実施し、また、内外の有識者との討議を行うとともに、バリアフリー*2のあり方、公共交通の利用の円滑化及び自律移動支援プロジェクト*3の推進については、それぞれ設けられた懇談会等とも連携を図り、この大綱をとりまとめた。 これを契機に、国土交通省としても、職員一人一人に至るまで意識改革を行い、組織全体としてユニバーサルデザインの考え方を踏まえ、国土交通行政を進めていくこととしたところであり、様々な役割を担う主体や人々が、相互に連携し、積極的に取り組むことを期待する次第である。  *1 ユニバーサルデザイン・・・あらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方。(障害者基本計画【平成14年12月24日 閣議決定】より)  *2 バリアフリー・・・高齢者・障害者等が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去(フリー)すること。物理的、社会的、制度的、心理的な障壁、情報面での障壁などすべての障壁を除去するという考え方。(障害者基本計画【平成14年12月24日 閣議決定】より)  *3 自律移動支援プロジェクト・・・革新的なユビキタス・ネットワーク技術の活用により、「いつでも、どこでも、だれでも」が必要な情報をリアルタイムで提供する「場所情報システム」を活用することで、「移動経路」、「交通手段」、「目的地」等の情報を音声、文字、多言語等を用いて利用者に提供し、高齢者・障害者等が行きたい場所へ自由に移動することを可能とするシステムの構築を目指すプロジェクト。 T.現状と課題 1 これまでの取組み これまで、我が国のまちや交通は、健常な人々を主たる利用者として整備されてきた。 高齢社会の到来が明らかになり、また、障害者の社会参画への要請の高まりなどに伴い、建築物、道路、公共交通など、それぞれの領域で、高齢者や身体障害者等を対象とするバリアフリー化の取組みが始まった。 ○昭和57年には、身体障害者の利用を配慮した建築設計標準が策定された。 ○昭和58年には、公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設整備ガイドラインが策定された。 ○平成3年より、新設の公共賃貸住宅は原則バリアフリー化することとされた。  住宅のバリアフリー化の例  手すりの設置写真 広い廊下の写真 段差の解消写真 ○平成5年には、車いす使用者等が安全かつ円滑にすれ違えるよう道路構造令が改正された。  歩行者の少ない道路における歩道の例の絵     病院等の周辺における歩道の例の絵 ○平成6年には、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(以下、「ハートビル法」という。)が制定された。   ハートビルのイメージ図 ○平成12年には、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(以下、「交通バリアフリー法」という。)が制定された。          交通バリアフリーの取組み例  エレベーターの設置に写真   ノンステップバス*4の写真  *4 ノンステップバス・・・床面の地上面からの高さが30cm以下で乗降口の段差がなく、車いすスペースや車いすが通るのに十分な幅の通路が確保されている等、車いすのまま乗降できる仕様のバス。  歩道の段差・勾配の改善、視覚障害者用ブロック等の設置の写真  また、社会資本整備や交通政策において、目標を設定し計画的に推進してきた。   バリアフリー化の現状と目標 平均利用者数5,000人/日以上の旅客施設(例:鉄軌道駅、バスターミナル等) 段差の解消の現状(H15)44%、社会資本整備重点計画における目標(H19)7割強                                  視覚障害者誘導用ブロックの現状(H15)74%、社会資本整備重点計画における目標(H19)8割強 平均利用者数5,000人/日以上の旅客施設周辺等の主な道路 段差の改善、幅員の確保、視覚障害者用ブロックの設置等の現状(H15)25%、社会資本整備重点計画における目標(H19)約5割 不特定多数の者等が利用する一定の建築物(例:病院、劇場、ホテル等) 手すり、広い廊下の確保等 3割 約4割 住宅 手すり、広い廊下の確保等の現状(H15)約3%、社会資本整備重点計画における目標(H19)約1割 公共交通機関における車両等のバリアフリー化の割合 鉄軌道車両の現状(H15)24%、移動円滑化基本方針における目標(H22)30% ノンステップバス現状(H15)9%、移動円滑化基本方針における目標(H22)20−25% 旅客船の現状(H15)4%、移動円滑化基本方針における目標(H22)50%、 航空機の現状(H15)32%、移動円滑化基本方針における目標(H22)40%、 交通バリアフリー法に基づく基本構想の受理件数推移 平成13年度 計15基本構想、平成14年度 計47基本構想、平成15年度 計65基本構想、平成16年度 計62基本構想、累計189基本構想 (1日平均利用者が5000人以上の旅客施設を持たない市町村が作成した基本構想(計10基本構想)を含む) 2 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた場合の課題 一人一人がその個性と能力を発揮し、自由に参画し、自己実現を図っていけるような社会の構築に向け、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえると、利用者を区別しないという「公平」、個々のニーズに柔軟に対応する「選択可能(柔軟)」、さらに、利用者や住民の参加の下での計画策定などを促進する「参加」の視点が重要である。  また、得られた知見を共有し、以後の取組みに反映することにより段階的かつ継続的発展のプロセスを確立し、様々な観点から「よりユニバーサルな社会環境」を達成すべく努力すること(スパイラルアップ*5)が必要である。  このような考え方に立って国土交通省の取組みを見直した場合、以下のような課題がある。  *5 スパイラルアップ・・・事前の検討段階から事後の評価の段階に至るまで利用者や住民が積極的に参加すること、この参加プロセスを経て得られた知見を共有化し、他のプロジェクトに活かすことによって行われる、段階的かつ継続的な発展。  これまでは、特に高齢者、身体障害者等を対象として、その移動制約を除去するためのバリアフリー化を進めてきたため、多様な人々の利用を念頭においたとき、その対応は十分ではない。  ・高齢者や身体障害者等をバリアフリー化の対象とし、知的障害者、精神障害者、外国人、子ども、子ども連れ等多様な利用者を想定していない。  ・施設ごとに独立してバリアフリー化に取り組まれているために、各施設の間の接続部等で連続性が確保されていなかったり、旅客施設を中心とした生活圏の一部のみにバリアフリー化の取組みが留まっている。  ・ハード面(施設整備)での施設のバリアフリー化に重点がおかれ、ハード整備とソフト整備を総合的に捉えて支援する仕組みにはなっておらず、情報提供の取組みや心のバリアフリーも不十分である。  ・新築については義務付け等によりバリアフリー化が進められ、また、大部分を占める既存施設についても一定の進捗は見られるものの、全体として取組みは十分でない。    さらに、国土交通行政の総点検を行うと、こうしたバリアフリー化の課題だけでなく、公共交通やまちづくりにもいくつかの課題がみられた。  公共交通においては、異なる事業者間の接続や情報提供について必ずしも十分な対応がなされていない、公共交通サービスの新たな展開に対し従来の 政策の枠組みのみでは必ずしも有効な受け皿足り得ていない等の課題がある。  まちづくりでは、中心市街地の衰退や住宅地の遠隔化など、生活者が必要とするサービスの確保が困難であったり、災害に脆弱な状況が現れている。  また、施策を進めるに当たって、様々な観点から段階的かつ継続的に取組みを進めるプロセスは必ずしも確立されてはいない。  U. ユニバーサルデザイン政策大綱の基本的考え方  「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえ、今後、身体的状況、年齢、国籍などを問わず、可能な限り全ての人が、人格と個性を尊重され、自由に社会に参画し、いきいきと安全で豊かに暮らせるよう、生活環境や連続した移動環境をハード・ソフトの両面から継続して整備・改善していくという理念に基づき、国土交通省として、以下の考え方に沿って政策を推進していく。 1 利用者の目線に立った参加型社会の構築  今後の政策展開に当たっては、利用者を中心的な視点に捉え、利用者の目線に立った政策の推進が必要である。 (1) 利用者、住民・NPOなどの多様な参加の推進  多様の人々の利用を視野に入れた取組みを進めるため、構想策定から施設整備、運用管理に至るまでの各段階において、利用者、住民やNPOなども含めた関係者の多様な参加を求め、そのニーズを反映させることなどを図っていくことが重要である。 (2) 持続的・段階的な取組みの推進(スパイラルアップの導入)  一人一人がその個性と能力を発揮し、自由に参画し、自己実現を図っていけるような社会の実現という理想に向けて、段階的・継続的発展のプロセスを確立し、様々な観点から継続的に「よりユニバーサルな社会環境」を達成すべく努力すること(スパイラルアップ)を基本として施策の展開を進めることが必要である。 (3) 多様な関係者の連携・協働の強化 様々な利用者ニーズに対応するには、多様な関係者の連携・協働が必要であるが、意見の相違や費用負担等を巡り調整がつかない結果、連携が不十分な場合もあることから、適切な責任分担の下で関係者間の連携・協働を促す環境の整備が必要である。  2 バリアフリー施策の総合化  これまでのバリアフリー化の取組みにより一定の進捗が見られているが、ハード面・システム面でのバリアを始め、情報のバリア、心のバリアなどが未だ存在している。バリアフリー化の推進は、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた政策展開の中でも最も重要な政策の一つであり、今後とも、バリアフリー化の総合的な取組みを充実、強化していく必要がある。その際、障害者の自立と社会参加の一層の促進という最近の障害者施策の動向も踏まえ、多様な対象者を視野に入れつつ取り組んでいくことが重要である。    (1) 利用者の一連の行動に対応する連続的なバリアフリーの推進  バリアフリー化に当たっては、利用者の視点に立ち、一連の行動に対応した連続的なバリアフリー化が重要である。  そのためには、総合的な視点が必要であり、まちづくり全体を視野に入れ、幅広い関係者との調整・協力を得つつ、バリアフリー化に関する基本的な構想・計画を策定する必要がある。 (2) 対象の拡充   交通機関や公共施設、公共空間等について、できる限り対象を拡充する必要がある(例えば、タクシー等の個別輸送サービスや学校等の公共施設等)。 (3) ソフト施策の充実  ハード面だけでなく、人的な対応の充実や、利用者に対する適切な情報提供など、ソフト施策を充実し、ハード・ソフト一体となった総合的なバリアフリー化を推進する必要がある。  国民一人ひとりが、高齢者、障害者、子ども連れ等の困難を自らの問題として認識し、その社会参加に積極的に協力する「心のバリアフリー」を推進する必要があり、国民の意識啓発や、人材育成などを進めることが重要である。 (4) 着実な実施に向けた柔軟かつ弾力的な取組みの促進    既存施設については、空間的・物理的な制約等からバリアフリー化が不十分なものがある。対応が不十分な施設が利用され続けることは社会全体のバリアフリー化を遅らせる要因となるため、様々な知恵・工夫により、そのような既存施設のバリアフリー化をさらに進める必要がある。  この場合、必要な整備を行い、施設の規模や利用実態などに応じた柔軟かつ合理的な整備についても検討することが必要である。  さらに、他の手本となる取組みや成功事例について知識・経験を共有・普及することにより、全体レベルを向上させることも有効である。このため、先導的なプロジェクトへのモデル的な取組みなどについて効果的に支援を行うとともに、市場メカニズムを活用したユニバーサルデザインの普及を推進していく必要がある。また、地域特性への配慮も大切である。 3 だれもが安全で円滑に利用できる公共交通  だれもが自由かつ安全に移動できる環境づくりに向け、公共交通が果たす役割は大きいが、公共交通機関の乗継ぎを含めた移動全体を円滑かつ利便性の高いものとする「シームレス化*6」の実現が十分図られていないなどの課題がある。  このため、だれもが公共交通機関を円滑に利用できるよう、公共交通のさらなる改善に向けた取組みが求められている。  *6 シームレス化・・・「継ぎ目のない」の意味。公共交通分野におけるシームレス化とは、乗継ぎ等の交通機関間の「継ぎ目」や交通ターミナル内の歩行や乗降に際しての「継ぎ目」をハード・ソフト両面にわたって解消することにより、出発地から目的地までの移動を全体として円滑かつ利便性の高いものとすること。 (1) 交通結節点における利便性向上や乗継円滑化  人々が円滑に利用できる公共交通の実現を図るため、駅などの交通結節点における利便性向上や乗継円滑化が求められているが、交通結節点は事業者や結節点の整備・管理主体などの様々な主体が関係し、また、 そもそも事業者相互間では競争関係にあるなどの事情から、協調が十分でなく、改善に向けた取組みがなかなか進まない場合がある。このため、これら多様な関係者の協働による横断的な取組みを促す必要がある。 (2) 交通事業者と地域住民等との協働の促進  公共交通の利便性の向上について、地域住民等が自らのこととして主体的に考え、交通事業者との協働による取組みを積極的に図る動きが現れてきている。このような地域住民等の主体的な参画は、住民自らの公共交通の利用を促す ことにもつながることから、交通事業者と地域住民等との協働による取組みをさらに促進する必要がある。 (3) 公共交通に関する情報提供の必要性  公共交通の全体水準の向上を図るため、行政においては、モデル的な取組みに関する幅広い情報提供を推進する必要がある。また、交通事業者の提供する公共交通サービスが利用者の視点を踏まえているかどうかを客観的に評価する仕組みや、ITの活用を含めた情報提供の改善・充実が求められている。 (4) 総合的な取組みの推進  公共交通の利用円滑化の推進に当たっては、地域における多様な関係者の協働の下、公共施設の整備、交通規制、中心市街地の活性化、まちづくり等関連する事業等と連携して、総合的な取組みを進めることが必要である。 4 だれもが安全で暮らしやすいまちづくり  まちは、人々の生活の基本となる場所であり、まちづくりに当たっては、多様な人々にとって暮らしやすいまちづくりに配慮することが大切である。 (1) 歩いて暮らせるまちづくりに向けた取組みの推進   過度に自動車に依存することなく、街なか居住を進め、徒歩圏内において生活の基本的ニーズに応えられる物品やサービスの取得が可能で、歩行者のスケール感にあった、生活関連施設等が近接するまとまりのある(コンパクトな)まちづくり、「歩いて暮らせるまちづくり」に向けた取組みを推進することが必要である。 (2) まち全体を視野に入れた取組みの推進   人々のまちの中での多様な活動の円滑化を図ることが求められ、特定の施設だけを念頭に置くのではなく、多様な施設利用やそれらへの移動の円滑化等に配慮する必要がある。多様な主体の意見を踏まえつつ、まちづくりの主体である地方公共団体が、まち全体を視野に入れ、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたまちづくりの基本的な方針を提示するとともに、整備の必要性、重要性を踏まえ、計画的、段階的に、安全、快適な歩行者空間等の整備を進めることが大切である。 (3) まちの再生、再開発も活用した、居住・福祉・賑わい等生活機能の創出   高度成長期等に作られた市街地やニュータウンの再生等の機会も活用しつつ、福祉部局をはじめ関係部局とも連携し、多様な居住の場の整備や不足する高齢者、障害者、子育て家族等が必要とする施設のまちなか等での整備を支援し、地域における居住・福祉・賑わい等生活機能の創出を図る必要がある。 (4) 安全・安心のまちづくり     だれもが安全に安心して暮らせるように、高齢者、障害者、子ども等にも配慮した防災対策や建築物における日常的な事故防止対策を推進することが必要である。 5 技術や手法等を踏まえた多様な活動への対応 施策の展開に当たり、観光などの非日常的な行動や、今後増加が見込まれる外国人など、人々の多様な活動への対応が求められる一方、ITの進展などに伴い、様々なニーズに応えるための取組みが進められてきている。  ユニバーサルデザインの考え方を踏まえ、人々の様々な活動を想定して対応を進めていく必要がある。 (1) 観光など非日常的な行動をも対象とした施策展開  観光地や、観光施設、宿泊施設のバリアフリー化など、観光をはじめとする非日常的な行動も対象とした施策展開を図る必要がある。  また、観光などでは、地理不案内の状態に置かれることから、場所や目的地等を容易に把握し、円滑に移動できる環境を整えることが重要である。 (2) 外国人の受入環境の整備  2010年までに訪日外国人旅行者数を1000万人にするという目標を掲げた観光立国に向けた取組みと併せ、外国人に対する情報提供、外国語表記の充実など外国人の受入環境を整備していく必要がある。  (3) ITを活用したユニバーサルな情報提供(ユビキタス環境*7の構築等)  ITの進展などによりユビキタスな環境づくりが進んでいるが、これにより、多様な人々に対し、いつでもどこでも必要な情報を提供することが可能となり、一人一人がその個性と能力を発揮し、自由に参画し、自己実現を図っていけるような社会の形成にも寄与することが期待される。このため、ユビキタス・ネットワーク技術*8、GIS*9等の活用などにより、情報提供の充実などに向けた取組みを進める必要がある。     *7 ユビキタス(な)環境・・・ユビキタス(ubiquitous)とは、ラテン語で「至る所に存在する(遍在)」という意味を持ち、あらゆる情報機器が広帯域ネットワークで結ばれ、誰もがいつでもどこでも安全に情報をやりとりできる環境。  *8 ユビキタス・ネットワーク技術・・・あらゆる情報機器が広帯域ネットワークで結ばれることにより、「いつでも、どこでも、何でも、誰でもつながるネットワーク」(ユビキタス・ネットワーク)の利活用環境を形成する情報通信技術(ICT)。  *9 GIS・・・Geographic Information Systemの略で、地理情報システムのこと。地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術。 V.具体的施策  国土交通省は、「U.ユニバーサルデザイン政策大綱の基本的考え方」に沿って、各主体によるこれまでの取組みをさらに深化させるため、下記の具体的施策を展開していく。 1 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた多様な関係者の参画の仕組みの構築(図2、図3及び図4参照) ○公共施設等の整備や新たな国土計画の策定に当たり、構想から計画策定、実施、管理に至る様々な段階において、利用者や住民、NPOなどの参加を得て意見を反映させる仕組みを創設する。 ○住民、NPO等が計画作成主体等に対し提案できる仕組みを創設するとともに、このような地域における多様な活動の担い手としての住民、NPO等に対して支援する。 ○国土交通省自らが、所管事業において先導的に取組みを実施する。(官庁施設などの整備を行う際に、ワークショップ*10を開催するなど、周辺の地域を含めた住民や関係者との連携を図る。) *10 ワークショップ・・・特定の課題に対応するために、課題に関心を持つ人が集まり、協働作業や話し合い等の諸活動を行う。 2 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた評価・情報共有の仕組みの創設(ユニバーサルデザイン・アセスメント) ○施設整備などの事業やソフト施策の実施による成果に対し多様な関係者の参加を得て評価を行い、その評価結果を、以後の事業や施策の立案・実施に反映する仕組みを創設する(スパイラルアップ)。 ○国土交通省自らが、所管事業においてスパイラルアップの先導的取組みを実施する(直轄事業等における実施と事例紹介)。 ○施策の効果について、利用者の視点に立った満足度などを客観的に評価するために、「ユニバーサルデザイン指標」を作成する。 ○ユニバーサルデザイン度の高い(低い)事例について、情報収集・蓄積を行い、公表する。 (具体的事例)  ○荒川下流において、荒川について知識を深め、荒川を守り育てるために、公募市民や自治体等で構成される「荒川市民会議」における意見や、病院関係者や福祉団体、教育関係者等が参加した「福祉の荒川づくり懇談会」での意見等を踏まえ、だれもが安心して利用できる川づくりに取り組んでいく。   ○熊本地方合同庁舎の整備に当たり、「新熊本地方合同庁舎及び周辺地区整備協議会」を設置し、学識経験者、地元の自治会及び商店街、鉄道事業者をはじめとする地元企業、県及び市、施設管理者等に参加いただき、設計・施工の各段階において意見交換を実施する。また、福祉関係団体から意見をうかがい、多様な利用者のニーズを反映するとともに、近隣の熊本駅を含む周辺地域との密接な連携を図り、施設整備の方針、具体的な設計上の配慮について検討を進める。 │  ○羽田空港の国際線旅客ターミナルの整備に当たり、整備・運営事業者を募集する際にユニバーサルデザインの考え方を踏まえた提案を求める(今年度)とともに、設計の段階から利用者、関係団体などから多様な意見・提案を求め、整備・運営に反映させていく(平成18年度)。また、供用開始後も、モニタリング、顧客満足度(CS)調査などにより、ターミナルの運営に反映させていく。 3 一体的・総合的なバリアフリー施策の推進(図5及び図6参照) ○建築物や公共交通機関のバリアフリー化、駅等を中心とした一定の地域内における一体的・連続的なバリアフリー化を促進し、バリアフリー施策を総合的に展開するため、ハートビル法と交通バリアフリー法の一体化に向けた法制度を構築する。 (法制度として取り組む事例) ○旅客施設だけでなく建築物も含めた連続したバリアフリー空間の形成などに向けた総合的なバリアフリー化に係る国の基本方針を策定する。  ○総合的なバリアフリー施策を展開するため、以下の措置を講じる。 ・バリアフリー化の計画エリアの拡大や、旅客施設に加え、その周辺施設についてもバリアフリー化を促進する。 ・基本構想に定めるバリアフリー経路と連絡する建築物についてバリアフリー化の整備のための制度を創設する(既存建築物は、部分的・段階的なバリアフリー化を促進。)。   ○基本構想の策定を促進するため、以下の措置を講じる。 ・バリアフリー化の基本的な方向性について合意した場合には、基本構想の内容のうち基本的な方向性を先行して定め、具体的な整備計画は後から定めることができることとする。 ・大規模旅客施設や、複数の市町村にまたがる移動経路のバリアフリー化に当たって、都道府県が関与することができることとする。  ○様々な利用者の意見を反映させるため、基本構想策定の際の協議会の設置等による当事者参加や、基本構想の素案に関するNPO・住民等からの提案を制度化する。   ○関係者の連携による一体的・連続的なバリアフリー化の促進を図るため、施設管理者間の管理に関する協定やバリアフリー化施設の設営・管理を行う法人の整備に関する仕組みを構築する。  ○旅客施設や車両、住宅等について、以下の取組みにより、より一層のバリアフリー化を促進する。   ・駅の構造や導入空間の確保等の問題からバリアフリー化が困難な既存の駅について、その要因を踏まえ、整備促進のための支援を行う。   ・ノンステップバスの更なる導入や、コミュニティバス*11、観光バスなどを含むバス全体のバリアフリー化を促進する。また、福祉車両の導入等によりタクシーのバリアフリー化等を図り、STS(スペシャルトランスポートサービス)*12の提供を促進する。 ・公的賃貸住宅の整備や民間住宅への資金面での支援により、バリアフリー化された住宅ストックの形成を促進する。  *11 コミュニティバス・・・交通空白地域、交通不便地域の解消や高齢者等の外出促進、公共施設の利用促進等、地域住民の福祉の向上を図るため、主として地方公共団体が運行している地域密着型のバス。狭い道路でも運行可能なように車両の小型化を図ったり、運賃、ダイヤ、バス停の位置等を工夫する事例が多い。  *12 STS(スペシャルトランスポートサービス)・・・一般に、要介護者、身体障害者等であって単独では公共交通機関を利用することが困難な移動制約者等を対象に行われる個別的な輸送サービスをいう。 4 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた基準・ガイドラインの策定(図7及び図8参照)  ○各種の基準・ガイドラインについて、多様な者の参加を得て、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた見直し等を行う。  ・基本構想に基づく総合的なバリアフリー化の促進を図るための既存建築物のバリアフリー化に関するガイドラインの策定  ・民間建築物のバリアフリー化に参考となる設計標準や公共交通機関旅客施設の移動円滑化ガイドライン等について必要に応じた見直し  ・利用者数5000人未満の旅客施設を対象とした整備のあり方に関するガイドラインの策定など 5 ソフト面での施策の充実(「心のバリアフリー」社会の実現等)(図9参照) ○一人一人がその個性と能力を発揮し、自由に参画し、自己実現を図っていけるような社会の実現に資するため、利用者・学生・事業者など多様な人材育成を図るとともに、人々の意識啓発などを促進する。(公共交通事業者や小中学生向け人材育成プログラムの作成、交通バリアフリー教室の開催など) ○駅やその周辺地区において高齢者、障害者、子ども連れの介助等を行うバリアフリーボランティアについて、モデル事業の実施などによりその普及を促進し、ハード整備だけではない、人による対応を促進する。 ○路線番号方式による道路案内の充実を図る。 ○福祉施策による居住支援サービスと連携した住まいの確保を支援するとともに、これらの住宅への住み替えが円滑に行われるよう、情報提供・相談体制の整備等を推進する。 6 だれもが安全で円滑に利用できる公共交通の実現(図10及び図11参照) ○利用者や地域住民等と交通事業者等との協働による利便性向上に向けた取組みに対する支援の拡充を図る。併せて、関係者の意見を適切に反映させるとともに、交通事業者と地域住民の団体等との間の協議を円滑化する仕組みを導入する。 ○鉄道やバスなどが乗入れるターミナルなどの交通結節点において、交通事業者や施設管理者等の関係者間で協議会を設ける等により、統一された分かりやすい乗り場案内や乗継経路の改善などの取組みに関する合意形成を促進する。さらに、交通事業者等が協議結果を遵守する仕組みづくりや具体的な改善方策の推進に対する支援の拡充を図る。 ○鉄道・バス等の異なる交通機関間や異なる交通事業者間における乗継割引運賃の導入などの乗継円滑化措置や、乗継情報案内システムの整備による統一的な情報提供など公共交通の情報提供の高度化の取組みに対し、支援の拡充・重点化等により促進を図る。 ○コミュニティバス、乗合タクシー*13、福祉タクシー*14等、地域の実情に即した新たな形態の運送サービスの提供を促進する。  *13 乗合タクシー・・・乗車定員10人以下の車両により乗り合いで旅客を運送するタクシー。  *14 福祉タクシー・・・高齢者や身体障害者等の移動制約者の輸送を目的とした、車椅子・寝台(ストレッチャー)のまま乗降できるリフトなどを備えた専用のタクシー。 (具体的事例)   ○地域住民やNPOが主体となってバスの運行を計画するとともに、地元企業の支援などの協力も得てバス運行を実現させた取組み(「市民バスよっかいち」(四日市市)等の事例あり)など、地域住民やNPOが主体となった取組みを促進する。 7 だれもが安全で暮らしやすいまちづくり(図12及び図13参照)  ○歩いて暮らせるまちづくりに向けて、まちなかに、住宅、生活関連施設等の集約的な立地を誘導するとともに、快適な歩行空間等の整備を図るため、新たに、関連施策を総合的、計画的に展開する。この際、先進的事例をモデルとして積み上げ、全国展開を図る。 (関連施策)  ・まちなかでの住宅供給を専門的に行う目的で設立される法人(SPC)を出資により支援し、まちなか居住の促進、まちなかの人口回復を図る  ・都市計画のインセンティブ等による、まちなかでの生活関連施設等の集約的立地を誘導  ・まちなかでの歩行空間のバリアフリー化、福祉部局との連携による地域医療センターやケア付公共住宅*15の整備等について、地方の取組み を助成により支援  *15 ケア付公共住宅・・・バリアフリー化された公営住宅等と生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による日常生活支援サービスとの提供を併せて行う高齢者世帯向けの住宅(「シルバーハウジング・プロジェクト」)など。 ○都市計画におけるユニバーサルデザインの考え方を踏まえたまちづくりの理念、取組方針を明らかにするため、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた政策課題対応型都市計画運用指針を策定する。 ○まちづくりの観点から、道路、公園、民間敷地等の一体的、連続的な整備に対する助成を行い、安全、快適な歩行者空間の整備を推進する。この際、地権者、住民、企業等の地域の関係者が自らの地域を整備・管理運営する取組みを支援する。 ○歩道の段差の改善、無電柱化、駐輪スペースの確保等による安全で快適な歩行空間の整備を旅客施設や多くの人々が利用する建築物等のバリアフリー化と一体的・総合的に進めることにより、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたまちづくりを推進する。 ○ニュータウン等の既存計画開発住宅市街地において、老朽化・陳腐化した公共・公益施設の再整備等を総合的・戦略的に行い、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた市街地として再生するほか、公共住宅団地の建て替え等に際し、福祉施設等の併設を進め、福祉の拠点としての整備を推進する。 ○住宅の耐震化の促進、災害時における避難のための情報提供体制の整備、建築物における転倒事故等を防止するための指針の作成、公共施設や住宅における犯罪防止に配慮した環境設計などにより、高齢者、障害者、子ども等にも配慮した安全・安心のまちづくりを推進する。 (具体的事例)  ○人口が減少している中心市街地において、住宅供給を目的として土地所有者等により設立されるSPCを新たに出資によって支援し、民間による街なか居住を促進する。また、再開発等促進区を定める地区計画、用途地域の見直し等の都市計画手法の活用を促し、まちなかにおける医療・福祉施設等の生活関連施設の集約的立地を誘導する。   駅と公共・公益施設等を結ぶペデストリアンデッキ(自動車道と立体的に分離した歩行者路)の整備、商店街が面する街路のアーケード化、まちなかにおける住宅供給等をまちづくり交付金や市街地再開発事業等で総合的に支援することにより、歩いて行ける範囲に住宅、生活関連施設が集積したまちづくりを推進する。  ○多摩ニュータウンや千里ニュータウンのような開発後30〜40年が経過した住宅市街地では、施設の老朽化、陳腐化、人口の高齢化が見られ、全体的な再生の時期を迎えていることから、この機会をとらえて、多様な人々が生活し、働き、憩うことができるユニバーサルデザインの考え方を踏まえた複合機能都市の再生を実践する。 8 様々な人・活動に応じた柔軟な対応(図14参照)  ○観光地に適した基本構想の作成の促進、ホテルなどの宿泊施設についてのバリアフリー化の推進などにより、観光地におけるバリアフリー化を推進する。 ○地理不案内者や外国人も念頭においた案内標識等の整備の促進、公共交通機関における外国語等による情報提供措置の導入、我が国の地域観光に精通した通訳ガイド*16の育成・確保やボランティアガイドの活動支援、観光関係従事者の人材育成などにより、地理不案内者や外国人が一人歩きできる環境整備を促進する。  *16 通訳ガイド・・・報酬を受けて、外国人に附き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内を業として行う者をいう。この場合、「通訳案内業法」(平成18年4月より「通訳案内士法」に題名変更。)に基づき、国家試験に合格し、都道府県知事の免許(改正法施行後は登録)を受ける必要がある。なお、平成18年4月からは、「外国人観光旅客の来訪地域の整備等の促進による国際観光の振興に関する法律」に基づき、都道府県の区域においてのみ当該業務を行うことができる地域限定通訳ガイドの資格も新設される。 ○バリアフリー化や一人歩きできる環境整備と併せ、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた観光地づくりに取り組むNPO等の活動や、外国人や高齢者、障害者も参加できる旅行商品の造成を支援することにより、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた観光振興を総合的に推進する。 9 IT等の新技術の活用(図15参照)  ○ICタグ*17等の通信機器と携帯型情報端末等によるユビキタス・ネットワーク技術を活用した「場所情報システム」を活用し、「移動経路」、「交通手段」、「目的地」等の情報を音声、文字、多言語等を用いて利用者に提供し、高齢者・障害者の自律移動支援や訪日外国人観光客等への観光情報の提供を行うシステムについて、実証実験の成果を踏まえ、地方自治体等との連携を図りつつ、全国各地への展開に向けた取組みを推進する。  *17 ICタグ・・・主に人や物の移動状況をリアルタイムで高度に管理するために取り付けられるICを内蔵する電子タグ。無線タグ、RFIDタグとも呼ばれ、無線通信ICとアンテナから成るモジュールで、小型・軽量・書き換えがいつでも可能等の特徴を持つ。(集積回路属性情報Integrated Circuit Tag)  ○だれもが容易かつ効果的に地理情報を利活用できるよう、地理情報の電子化等の推進、GIS技術を活用した情報提供システムの構築、視覚障害者向けの触地図などユニバーサルデザインの考え方を踏まえた地図のガイドライン作成などを推進する。  ○鉄道とバスなど異なるモード間でもカード一枚で利用できるよう共通化したICカードシステム*18を全国に普及させ、利用者利便の向上、サービスの多様化、情報提供の高度化を図る。  *18 ICカードシステム・・・集積回路(Integrated Circuit)を内部に組み込んだカードシステム。磁気カードよりも大容量のデータを記憶でき、かつ、セキュリティの向上を図ることができる。 (具体的事例)  ○革新的なユビキタス・ネットワーク技術を活用することで、「いつでも、どこでも、だれでも」が必要な情報をリアルタイムで提供する新しい社会インフラである「場所情報システム」により、高齢者・障害者の方々が、行きたい場所へ自由に移動することや、訪日外国人等が初めて訪れる街においても必要な観光情報の提供を行うことを可能とする。現在、神戸、浅草、愛・地球博会場等各地で自律移動支援や観光情報提供についての実証実験を積み重ねており、今後、得られた知見をもとに、平成18年度以降、地方自治体等関係者と連携して、このシステムの全国各地への展開に向けた取組みを行う。 │   ○平成18年度から順次バス事業者・鉄軌道事業者の共通ICカードが導入される予定である関東(1都6県)において、乗継運賃割引制度や商業施設・文化施設との連携によるポイント還元制度を導入し共通ICカードを活用した利用者利便の向上等を図る取組みを推進する等、全国各地へのICカードシステムの普及を図る。 10 先導的取組みの総合的展開(リーディング・プロジェクト、リーディング・エリア)(図16及び図17参照) ○国土交通省を挙げて普及に資する先導事例を育成するため、地域の実情などに応じて発生している問題の特徴を踏まえて、エリア毎又はプロジェクト毎に行われる効率的、先導的な取組みに対し効果的な支援を行うことを通じて、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた施策のさらなる高度化を図るとともに、その成果を広く全国に普及させる。 (具体的事例) 【ニュータウンの再生】   ○多摩ニュータウンや千里ニュータウンのような開発後30〜40年が経過した住宅市街地では、施設の老朽化、・陳腐化、人口の高齢化が見られ、全体的な再生の時期を迎えていることから、この機会をとらえて、多様な人々が生活し、働き、憩うことができるユニバーサルデザインの考え方を踏まえた複合機能都市の再生を実践する。 【だれもが使いやすい空港の実現】   ○平成18年度にアクセス鉄道の供用開始が予定されている仙台空港をモデルケースとして、「ユニバーサルデザイン推進委員会」を設置し、利用者を含め幅広く意見を聴取し、鉄道と空港ターミナル間の連続的なバリアフリー化の推進、情報提供設備の充実、要員教育体制の確立などの総合的な取組みを実施する。さらにその成果を全国の他空港に対し普及していく。 【大規模ターミナルにおける乗継円滑化】   ○鉄道やバスが複数乗り入れる大規模ターミナルにおいて、鉄道・バス事業者と施設管理者(地方公共団体等)の間で協議会を設けるとともに、駅の改良事業や駅前におけるバスターミナルや歩行者デッキの整備等の関連事業と連携して集中支援することにより、統一された分かりやすい乗り場案内や乗継経路の改善など、交通結節点における公共交通の利用円滑化施策を推進する(今年度から、三宮(神戸市)において、具体的な合意形成に向けた検討に着手する。)。 【観光地】   ○基本コンセプトの構築、案内標識の統一的な整備、身障者対応のトイレの標準装備化、ボランティアの配置などユニバーサルデザインの考え方に基づく観光地のあり方について、全国数カ所程度選定して検討を進め、高齢者や障害者も安全・快適に観光することができる観光地づくりを推進する。 【道路】   ○通過交通の排除の徹底により車よりも歩行者等の安全・快適な利用を優先するとともに、沿道と共同した道路緑化、無電柱化等による質の高い生活環境を創出する「くらしのみちゾーン」の形成(愛媛県松山市等)の促進を図る。 【公園】   ○国営昭和記念公園等において、だれもが安心して楽しむことができる都市公園の実現を目指し、園路や遊具、トイレ等のバリアフリー化などハード面の整備に加え、障害者等のサポートを行うボランティアの育成、バリアフリーマップの作成などソフト面の取組みを進める。