国土交通No.127
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13北陸新幹線開業に向け完成検査を実施中のんびりとした田園風景の中に突如現れる、全長約2・4㎞、幅員最大250mという巨大施設。平成27年春に開業予定の北陸新幹線の車両基地「白山総合車両所」です。日本で四つ目の新幹線総合車両基地として平成26年4月に開所し、車庫内ではテスト走行を終えた新幹線のW7系車両が静かに出番を待っています。この車両基地から金沢方面へ向かうと、新幹線の本線に電気を供給する新白山変電所が建設されています。ぐるりとフェンスに囲まれた中に変圧器や遮断器、断路器などが整然と設置され、電線・ケーブルで複雑につながった様はまさに“巨大電気回路”。全国新幹線鉄道整備法に基づき、整備新幹線の一環として計画が進められ、工事実施計画の認可後、鉄道・運輸機構が建設主体となって建設を行い、営業主体となるJR西日本との協働により一年以上にわたって試験や検査を行ってきました。そして平成26年5月、鉄道事業法に基づき国が実施する完成検査を迎えました。あらかじめ認可を受けた工事実施計画との合致および技術基準との適合性を国が確認し、検査合格をもって使用開始が認められます。国側として新白山変電所の完成検査を実施するのは、北陸信越運輸局鉄道部の田中篤と小松昭広。JR西日本をはじめ関係会社担当者総勢25名の点呼が行われ、施設の外観検査が始まります。試験責任者は、未来において北陸新幹線の運営を担うことになるJR西日本の若手社員。先輩社員や他関連会社の担当者が見守るなか、説明は淀みなく、質問にも的確に答えていきます。外観検査においては、実際に施設内を見てまわり、所定の判定基準に基づく検査を行いました。「私たちが完成検査の行程で行うのは抜き取り検査であり、事前に行われた社内検査の結果も踏まえて合否の判定を行うものですが、完成検査の実施によって施設関係者の責任感や緊張感を促すとともに、積み上げられてきた『安全への信頼』を再確認できる機会でもあると思っています。そして国が最終的に安全を確認するということで、安心して利用してもらえることに繋がっていけばと思います」(田中)。「安全・安心・快適な新幹線」を目指す最新技術を導入した施設の検査・確認北陸信越運輸局鉄道部が担う新幹線関連の完成検査は、長野から金沢・白山総合車両所までの約240㎞に及ぶ区間に設けられた6カ所の「変電所」や5カ所の「き電区分所※1」、12カ所の「補助き電区分所」などの他、区間全体の電線路や電力関係の遠隔制御装置など。いずれも安全・確実な稼働のために最新技術を採用しています。さらに北陸信越では東西の異なる電源周波数が混在し、周波数の切り替え対応が必要です。他の新幹線では路線ごとに東50 Hzか西60 Hzに統一されているので、この異周波数への対応は北陸新幹線特有のものとなります。「周波数の異なる電源同士が混触すると大きな事故に発展するため、変電所に専用に開発された保護装置の設置や切替セクション部のき電線の同軸ケーブル化など、さまざまな工夫が行われています。施設には複雑で確実な施工が求められ、検査も気を抜けません」(小松)。しかし、人が行うことに「絶対」はありません。そのため、トラブルの際にも社員の生命を守り、新幹線への影響を最小に抑えるための設備や対応についても平成27年春開業予定の北陸新幹線。日本の伝統と未来を表現した新型車両W7系検査が実施された新白山変電所※1き電区分所…各変電所からのき電 (架線へ電気を供給すること) の境界(突き合わせ)部分において、き電区間の切り分けのため設けられる施設。

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