国土交通No.128
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14算取りなどを行っていきます。「深浅測量以上に浚渫工事は大掛かりで時間がかかり、時に水の濁りの原因になるなど、周囲に与える影響はさまざまです。特に備讃瀬戸航路は潮流が速く、海上交通の要所、難所ですが、ほかに変わる航路がないため全面通行止めができないだけでなく、備讃瀬戸北航路の牛島から西側の航路は見通しが良く一方通行の区域のため制限速度が解除されています。こうした制約下でできるだけ短期間で安全に工事を進めるには綿密な計画が欠かせません」(岡本)。そして、浚渫工事が始まると主任現場監督員として、計画のチェック、現場における安全面や手順、工期などの監督指導が主な仕事になってきます。実際に工事を実施する事業者とのコミュニケーションはとても重要です。またそれぞれに思い込みや勘違いがあっては工事にも支障が出ます。事前の打ち合わせでしっかりと情報を共有し、意思疎通を図っておくことが大切だと言います。「工事が完成したときはもちろん満足感がありますが、それ以上に、関係者のみなさんとツーカーで通じ合い信頼関係を築けたとき、事故もなく安全かつスムーズに行程が進捗したときは、やはりうれしいですね」(岡本)。環境負荷を最小に抑えた循環式ポンプシステム実際の浚渫工事の現場では、海水ごと土砂を吸い込む機械の大きな音が響き渡り、海上を渡る風に声がかき消されていきます。「浚渫は循環ポンプ式浚渫船で行います。ラダーの先端にあるカッターヘッド(写真)で海底の土砂を掘くっさく削、攪かくはん拌、泥水にして吸引します。吸引された土砂は、浚渫船に横付けされた土ど運うん船せんに排出されます。余水を還流ポンプで吸引し、カッターヘッド部分に還流することにより、濁りの拡散を防ぎ、周辺環境への影響を極力少なくしています」(岡本)。カッターヘッド部分は海底に沈んで見えないものの、蛇腹になった太いパイプの中を土砂と海水が勢いよく流れていくのが感じられます。そして吐出口からは大量の土砂が流れ出し、みるみるうちに土運船の船倉がいっぱいになっていきます。「船が動いているのがわかりますか」と促されて意識すると、ポンプ浚渫船「千代田丸」の船体が少しずつ角度を変えているようです。これは、ゆっくりと船体を移動させて吸込口をずらしているため。幅約340mのエリアを4レーンに区切り、左右に約90㎝角ずつ動かしながら満まんべん遍なく土砂を吸い込むように調整しているのです。そのように処理される1日分の土砂量は点検が終わったワイヤーロープには赤いテープが貼ってある。テープの色は月ごとに変わる。これが安全の印だ土運船の船倉に吐き出される海水と土砂。船倉には仕切り壁を設け、浚渫土を堆積させ余剰水を還流ポンプで吸入。吸入された水はカッタードリルが掘削する海底にと流れていく海底地盤を掘削するカッターヘッド。ここで採用されている方式は海水の濁りを抑える方法の一つ土運船がいっぱいになると、海上で待機していた次の土運船がすぐに横付けされる

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