国土交通No.128
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8は硬く、人力で造成するのは大仕事でした。水もトイレもなく、泥まみれで開拓時代そのもの。でも、その経験があったからこそ、先人の苦労を思い、額に汗して働く喜びや収穫への感謝の気持ちを実感できた。里への愛着やメンバー同士の結束も深まったように感じます」民俗文化の豊かさを今に伝える江戸期の古民家を公開整備開始以降、少しずつ増築を行い、集会所となる「里の小屋」や炭焼き小屋、水車小屋などさまざまな施設が建てられました。平成25年春には、4棟の古民家建築を移転・復元した「里の農家」を一般公開しています。このうち、主屋・長屋門・内蔵は狛江市の名主・石井家より譲り受けた築200年以上の建築で、立川市指定有形文化財となっています。堂々とした長屋門をくぐると、漆喰の白壁が美しい外蔵が目に入ります。そして、当時の工法を踏襲して補人の手で造り上げた心やすらぐ武蔵野の原風景米軍の立川基地跡地に整備された国営昭和記念公園は都内最大級の都市公園。その園内の道を進んで行くと、こつ然と小さな村が現れます。陸りくとう稲が風にそよぎ、畑には野菜が豊かに実り、道の先には茅かや葺ぶき屋根の家や水車小屋も。初めて訪れる人も、なぜか懐かしさに包まれる不思議な村―。「武蔵野の農村の心象風景」の再現をテーマに官民協働で整備を進め、平成19年に開園した「こもれびの里」です。「武蔵野の農村風景は、昭和30年代に都市化が進んで急速に失われていきました。私も立川の農家に生まれ、景観が変わる様子を見ながら寂しく思っていましたから、計画を聞いたときはうれしかったですね」そう語るのは「NPO法人武蔵野の里作りクラブ」理事長の豊泉喜一さん。平成14年の整備開始当初から指導員に任命され、地域の有志の方々と協力し合いながら、里づくりに取り組んできました。「開墾にあたり、昔と同じように機械に頼らずに行う。そんな“こだわり”をもって始めたのですが、基地だった土壌修された趣ある主屋は建築物としての面白さはもちろん、農機具や囲炉裏やかまど、養蚕の飼育棚など当時の暮らしを偲ばせる展示も見ごたえがあります。季節ごとに展示される盆棚飾りや正月飾りなども、文化の豊かさを感じられるでしょう。渡り廊下で繋がった内蔵は、土蔵本体の上に茅葺き屋根が乗る置屋根式となっており、明かり窓に「NPO法人武蔵野の里作りクラブ」理事長・豊泉喜一さんまるでどこかの農村に来たような錯覚に昨年園内に移築された築200年を超える古民家。置屋根式の土蔵には見事な鏝絵もガイド03【文化】地域の協力を得て農村文化の継承懐かしい武蔵野の風景を復活 国営昭和記念公園「こもれびの里」

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