国土交通No.129
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10リゾート地が主流でしたが、野崎島で手つかずの自然をぜひ体感して欲しいと考えたのです」(橋本さん)平成13年度には体験プログラムの提供が可能な自然学校を設立し、カヌーツーリングや島内エコツアーなどを実施するようになりました。現在では、島の魅力が口コミで広がり、県内外からの修学旅行生も含め、年間3000人近くが利用するまでになりました。島の子どもになってもらう「民みんぱく泊」事業を開始平成18年には現在の小値賀観光を象徴する「民泊」がスタート。農家や漁ぎょ家かに宿泊し、その家の手伝いをしなが捕ほげい鯨で栄えた島観光を新たな産業に「この島の人たちは知らない人にも『どこから来たと?』と声をかける、そんな人懐っこさがあるんですよ。それもこの町の自慢です!」と小値賀町役場総務課観光係長の橋本博明さんは誇らしげに語ります。長崎県佐世保市からフェリーで3時間、五島列島の北端に位置する小値賀町は大小17の島で構成され、そのほとんどが西さいかい海国立公園に指定されているほど自然環境に恵まれた島々です。またどこか懐かしい日本の原風景を見るようなまちなみも残っています。島の歴史は古く、旧石器時代から人が暮らし、遣けんとうし唐使の寄港地にもなっていました。明治の頃は西海捕鯨によって島は発展、五島列島の中心商業地でもありました。現在は漁業と農業が基幹産業となっていますが、農業の担い手の高齢化や漁業を取り巻く環境が年々厳しくなっていることも影響し、町の人口は減少傾向にあります。そこで小値賀町が新たな産業として取り組んでいるのが、豊かな自然と、島人のおもてなしの心など島を丸ごと活かした体験交流型の観光です。「本島の隣にある野のざき崎島しま※では、廃校になった中学校を利用した『野崎島自しぜんがくじゅく然学塾村そん』を簡易宿泊施設として平成元年から運用しています。当時は観光といえばら滞在するというものです。提案したのは田舎暮らしの中で子育てをしたいという思いで移住してきた高砂樹たつし史さん(株式会社小値賀観光まちづくり公社代表取締役)でした。「小値賀町は平成15年の市町村合併の際、どことも合併しない自立の道を選びました。でも産業が成り立たなければやっていけない。17年に私が移住したときは、そんな模索の渦中にありました。そこで、私自身、小値賀の自然と素朴な日常に魅かれて来たことから、島の日常にこそ魅力がある、それを体小値賀島本島。港へ続く道には車も通れない細い道がいくつもあり、あちこちにお地蔵さんが祭られている小値賀島本島から船で約25分の野崎島。村民たちが建てた旧野首(きゅうのくび)教会(明治41年建立)が今もその姿をとどめる。今年9月、ユネスコの世界遺産登録推薦が決まった「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産でもある人がいなくなった島は野生のシカたちが”住民”廃校を活用した野崎島自然学塾村。さまざまな体験プログラムを通じて、大自然を丸ごと体感することができる田舎暮らしの促進手つかずの自然と島しまびと人のおもてなし西の果ての小さな島が挑戦する離島の未来長崎県北松浦郡小おぢか値賀町ちょう※平成13年に最後の島民が島を去り、現在は宿泊施設の管理人のみとなり事実上の無人島となっている

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