国土交通No.129
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4人口減少が進んだ2050年の地方で、現在存在するサービスのすべてが成り立つことはあり得ません。サービスを効率的に提供していくためには、機能をコンパクト化することが必須です。さらにコンパクトになった地域は「ネットワーク」で支えていくことも重要です。コンパクト+ネットワークにより、「新しい集積」を形成し、効率性を高めて、より大きな付加価値を生み出す国土づくりが可能となるのです。個性を磨いて多様性を生み、連携しながら対流を起こすもう一つの大切な言葉が「多様性と連携」です。人口減少社会においては、それぞれの地域が横並びを脱し、個性を深めていく必要があります。自分たちの持つ個性を磨き上げ、深い固有性を獲得すれば、それは世界的な普遍性を持つことにもなり、日本の新しい成長エンジンになります。その上で、個性ある都市同士が単に交流するのではなく、主体的に連携していく国土づくりを目指していきます。そして、グランドデザインの副題にも表されている「対流」です。対流は温度差があるときに発生します。これからは個性のある地域の間で人・モノ・情報の対流が生まれることが大切になります。どこを切り取っても同じという「金太郎飴」のような状態では対流は起こりません。対流のエンジンは個性なのです。常に各地域が自分たちの個性を磨いて多様性を生み出し、それらが連携しながら対流する国土づくりが重要なのです。グランドデザイン実現のための戦略グランドデザインでは12の基本戦略を打ち出しています。そのうちいくつかをご紹介します。◦小さな拠点 都市圏よりもさらに小さな地域、山間部などの集落が散在する地域では歩いて動ける一定のエリアに商店や診療所などのさまざまなサービスを集約して、ワンストップでサービスが受けられる「小さな拠点」づくりが有効です。この場合、居住地から拠点に集まるための手段が必要になります。コミュニティバスなどの交通手段や宅配サービス、情報ネットワークなどを使って、日常生活を補うだけでなく、雇用を生み出すなど新たな価値をつくっていきたいと考えています。◦高次地方都市連合 大学や救急救命センター、映画館など、高度な都市サービス機能を維持するためには30万人規模の人口圏域が必要ですが、これも人口減少によりいずれは縮小してきます。そういった複数の都市などが交通ネットワークを活用して人口を確保し、お互いにさまざまな機能の役割分担をし、連携をしていこうというのが「高次地方都市連合」です。例えば鳥取県米子市の都市圏人口は2010年調査では32万人以上でしたが、2050年には20・9万人になると予想されています。これでは30万人都市圏が消えてしまいます。しかし隣県の島根県松江市までは高速道路を使えば30分足らずで行ける距離です。米子市と松江市が市町村の境界を越え連携すれば、30万人都市圏を維持することもできるのです。◦スーパー・メガリージョン グローバリゼーションがますます進小さな拠点のイメージグランドデザイン基本戦略小さな拠点と高次地方都市連合等の構築攻めのコンパクト・新産業連合・価値創造の場づくりスーパー・メガリージョンと新たなリンクの形成日本海・太平洋2面活用型国土と圏域間対流の促進国の光を観せる観光立国の実現田舎暮らしの促進による地方への人の流れの創出子供から高齢者まで生き生きと暮らせるコミュニティの再構築美しく、災害に強い国土インフラを賢く使う民間活力や技術革新を取り込む社会国土・地域の担い手づくり戦略的サブシステムの構築も含めたエネルギー制約・環境問題への対応123456789101112集落集落集落集落集落集落集落集落道の駅道の駅郵便・ATM郵便・ATM診療所診療所旧小学校旧小学校スーパー跡地スーパー跡地ガソリンスタンドガソリンスタンド旧役場庁舎旧役場庁舎例 小さな拠点づくりに併せてコミュニティバス・デマンドタクシーなどにより交通手段を確保例 道の駅に農家レストラン、特産品直売所、コミュニティスペースなどを併設例 周辺集落や市街地とつながる生活交通の拠点づくり例 旧役場庁舎を公民館、図書館などに活用例 廃校舎を保育所、デイサービスセンター、体験宿泊施設などに活用例 スーパー撤退後の施設を集落コンビニ、農産物出荷拠点などに活用4

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