国土交通No.130
5/24
5江戸時代に伊能忠敬が作った地図を始め、昭和初期までの地図は実際に現地を歩いて測量していました。それを大きく変えたのが、第二次世界大戦前後に登場した空中写真です。戦後は、空中写真から地図を作製する技術が確立し、以降、地図作製の主流となりました。空中写真測量では、地表で目印となる「対空標識」をあらかじめ地図作製区域内にまんべんなく設置しておいて、飛行機に積んだ専用のカメラから地表を垂直下向きに撮さつえい影します。そこから、道路や鉄道、建物などをひとつ一つ描き起こして、基となる図を作ります。当時はすべて手描きで、1枚の地図を作るのに何ヵ月もかかる気の遠くなるような作業でした。地図には地名や施設名も書かれていますが、これらは現地調査で得た正確な名称を記載しています。こうして作製された「2万5千分1地形図」は、約4400面で日本全土をカバーしており、長い間わが国の基本図として使われてきました。現在では地図作製もデジタル化され、正確さだけでなく効率よく更新できるようになりました。例えば、新しい道路が開通する場合、事前に道路管理者から工事図面を提供してもらい、道路の正確な形状を地図に反映。これで、供用開始日には新しい道路が地図に描かれます。宅地開発など個別の図面を入手することが困難な場合は、空中写真から一軒一軒建物を描き起こして地図に反映させます。空中写真測量は、今も重要な技術なのです。また、ひとたび災害が起きると、現地の空中写真を素早く撮影。空中写真は、被害個所の特定や被害状況の把はあく握に役立つだけでなく、被災地の復興計画図を作製することにも使われます。実際に、東日本大震災の被災地では、2千5百分1の「災害復興計画基図」を作製。まちづくり計画や津波対策、移転先適地の選定、新たな都市計画など、さまざまな場面で利用されています。これまで詳細な測量が難しかった湖こしょう沼は、マルチビーム測そくしん深システムを活用した深しんせん浅測量により詳細に地形計測します。また、人工衛星画像を用いて地図を更新するなど、さまざまな最新技術についての研究成果を用いて、迅速かつ正確な地図作りに取り組んでいます。地図に描き加える記号のテンプレートやスケール表などを用いながらすべて手描きだった頃の地図作りデジタル立体図化機。専用眼鏡をかけると写真が立体に見え、地形に沿いながら描き起こしていく。ただし操作方法は以前のものと変わらずハンドルで操作する西湖の高精度水深データ東日本大震災の被災地を中心に作製された2500分1の地図。2500分1の地図は地方公共団体と協力して作製。5月に写真撮影し、9月には完成させた。延べ700人が作製に関わった。写真は釜石市内地図道路の工事計画図面から直接地図に描き入れる。国道の地図化は地理院地図が一番早いそうだ地図を描くのに以前実際に使われていた立体図化機。現在は「地図と測量の科学館」内に展示されている正確な地図の背後には、高い技術力が隠れていた!どのように地図が作られているのか、実際に地図を作製している現場へご案内!以前の作り方現在の作り方地図作製のカギとなるのは空中写真。足で稼ぐ現地調査も重要地図の正確さは命綱。そのうえで、迅速な更新を実現(昭和56年頃)地図ができるまで
元のページ