no132
13/24
13人知れず都心を水害から守り続ける岩淵水門 山梨、埼玉、長野の3県が接する甲こぶし武信ケがたけ岳を水源とし、東京湾に注ぐ荒川。全長173㎞に及ぶ荒川のうち、下流部の約22㎞が、実は約85年前につくられた人工河川であることをご存じでしょうか。約20年間の工期をかけて洪水対策のためにつくられたこの人工河川は、少し前までは「荒川放水路」の名で呼ばれていました。同様に隅田川に流れ込む洪水をせき止めるために設置されたのが岩淵水門(東京都北区)です。以来、幾度も隅田川の氾濫を防止し、都心を守り続けているこの岩淵水門と、水門を含む周辺域を管理するのが、国土交通省関東地方整備局の荒川下流河川事務所・岩淵出張所です。誰もが安心できる川へ 岩淵出張所が管轄しているのは、埼玉県戸田市と東京都板橋区を渡す笹目橋から下流へ約14㎞、足立区の西新井橋までの区間です。この区間内にある施設の維持管理を担当しているのが、管理第三係長の五さおとめ月女絵美。巡視員からパトロール中に発見された施設の破損、異常などの報告を受けると、その対処を考え補修工事の指示を出します。ゴミの不法投棄、舗装の段差やひび割れなどは日々見つかり「限られた時間と予算で優先順位を整理するのに悩むこともある」と語ります。 周辺住民や河川の利用者から通報が入ることもありますが、その際は、まず通報された現場を確認し、速やかに対処することを心がけています。「まれに通報された方が、修繕後にお礼を言ってくださることがあります。そのときは、すぐに対応して良かったなと思います」。その他、河川法などの申請窓口も兼任しており、河川のグラウンドにベンチを設けたい、付近に住宅を建てたいなど、各方面からの申請に、申請者と対話しながら審査に必要な準備を進めます。 ゴールデンウィーク前には「安全利用点検」に出動します。管理区間を4区画に分け、1区画10人程度のチームで川の両岸を歩いて点検します。見つけた異常は、その場で対処できるものはすぐ対処し、後日の対応が必要なものは、タブレット端末のGPS機能で位置を記録して、出張所に戻ってから詳細を検討します。今回取材した点検の日はあいにくの雨でしたが、天気が良ければ、河川敷で元気に遊ぶ親子連れもたくさん目にします。「そうした光景を見ると、大人も子供も安心して遊べる、危険のない川にしなければならないと感じ、仕事にもいっそう熱が入ります」江戸川区江東区千代田区港区皇居墨田区葛飾区台東区荒川区川口市旧岩淵水門岩淵水門足立区 北区文京区豊島区新宿区荒川隅田川神田川新中川平成27年4月に行われた「安全利用点検」の様子。岩淵出張所職員を含む約20名が出動し、複数のチームに分かれ、設定した区画を丸一日かけて歩く。別班ではさらに河川に近いエリアも点検。現在の荒川下流域。岩淵水門から下流の荒川は、昭和5(1930)年の竣工以降「荒川放水路」と呼ばれたが、昭和40(1965)年に「荒川」を正式名称とし、それまでの荒川が現在の隅田川になった。手すりの留め具の破損を発見。後日の修繕が必要なため、記録写真で掲示するボードに位置、状況などを詳細に記録。この点検は、ゴールデンウィーク前と学校が夏休みに入る前に実施する。※A.P.(荒川工事基準面 Arakawa peil)は荒川水系で使われる水位の基準面。これまでの岩淵水門の閉鎖岩淵水門観測所の最高水位平成3年9月台風18号A.P. +4.11m平成11年8月熱帯低気圧A.P. +6.30m平成13年9月台風15号A.P. +4.70m平成19年9月台風9号A.P. +5.09m北区川口市旧岩淵水門(赤水門)岩淵水門(青水門)新河岸川荒川隅田川
元のページ