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15ションしました。結果、水門の扉を支える柱のうち、両脇の2本では「せん断破壊」、中央の2本では「曲げ破壊」が生じる可能性がありそうだと分かりました。せん断破壊とは、地震の揺れによって柱がずれて壊れること、曲げ破壊は柱そのものが折れてしまうことです。この2種類の破壊に対して岩淵出張所では、それぞれ最新の工法を使って耐震補強工事を実施することに決めました。 まず、せん断破壊対策には「RMA工法」を採用し、柱に穴を開け、新たな鉄筋を298本差し込んで強度を高めました。 曲げ破壊には「ATーP工法」を採用し、柱の周囲に溝を掘り、その溝に鉄筋を巻上げて強度を高めました。溝は特殊なセメントで埋めて柱と一体化させつつ、鉄筋が劣化しにくいよう処回の耐震補強工事は設計図面通りに進まないことが多いため、施工者と密に連絡を取り合い、協議を行うことが大切です」。限られた期間で工事を進めるために、既存の鉄筋との接触が起きた時の基本的な対処法を決めておき、それでも対処できないものには詳細な協議を行って対応するなど、規則による効率化と対話による柔軟性をバランス良く取り、工事を円滑に進められるよう努めています。河川を守る本来の目的 川幅500mに及ぶ荒川は、穏やかな流れと広い河川敷で、都会の生活に潤いを与えてくれる存在です。しかし、ひとたび洪水が起きれば、荒川流域に住む人々にとって脅威となります。岩淵出張所所長の伊藤克雄は、自分たちの仕事をこう語ります。 「河川の安全を確保するため、さまざまな基準やルールを守って仕事をすることが大切です。でも、目の前の仕事にとらわれ、本来の目的を忘れてはいけません。私たちの仕事は、地域の方々の安全と資産を守りつつ、河川敷を快適に使っていただくこと。それを忘れず、業務に取り組みたいと思います」 東京の安全を守るために、今日も岩淵出張所の職員たちは現場で仕事に取り組んでいます。置します。最後は、仕上げ剤で表面を塗付。工事の痕跡を残さず美観を整えることも、公共施設では大切です。柔軟性のあるルールの運用 しかし実際の工事は、書き下ろした手続きのように簡単には進みません。鉄筋を挿入するRMA工法では、穴を掘る作業にも工夫が必要です。鉄筋は、図面とぴったり同じ位置にあるとは限らず、前もって探査機で柱内部の鉄筋配置を探りますが、これも表面近くを走る鉄筋しか分かりません。穴を掘る途中で既存の鉄筋にぶつかることがしばしば起きます。穴の位置を適切にずらし、再び削さっこう孔する必要が生じるのです。 「私がこれまで携わってきた堤防などの工事では、ほぼ予定通りに進行できた場合がほとんどです。しかし、今1 「AT-P工法」の施工部分の確認。災害時には都市の人命と資産に関わる、責任の重い仕事だ。2 水門に埋め込まれていた既設鉄筋と、今回補強した鉄筋の位置関係。既設鉄筋と接触した場合は、再度削孔をやり直す。3 RMA工法で補強の鉄筋を打設している。関東地方整備局荒川下流河川事務所岩淵出張所管理第二係長森田 貴之関東地方整備局荒川下流河川事務所岩淵出張所管理第三係長五月女 絵美所長 伊藤 克雄1回目の削孔と接触した鉄筋2回目の削孔と接触した鉄筋3回目の削孔で成功地震の揺れによって起きる「せん断の力」に対しては、鉄筋の数を増やして空間密度を上げる。「曲げの力」には、柱の周囲を鉄筋で巻上げて対処した。せん断破壊鉄筋挿入曲げ破壊鉄筋巻上げ123

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