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の研究室で男性と同じように学びましたので、就職でも性別は関係なく学んだことを生かせる仕事をしようと思いました」と、平成20年に迷いなく建設業の世界に飛び込みました。「先輩方のときは、女性ということで半人前扱いされることもあったようです。でも私は、嫌な思いをしたことはないですね。かえって配慮していただいていると思います。男性の意識が変わってきたのではないでしょうか」女性らしさを発揮することで職場環境を心地よくトイレ入り口の「きれいに使いましょう」と書かれた貼り紙など、現場のあちらこちらに美化意識が感じられます。定期的に女性講師を招いてラジオ体操やストレッチの指導をしっかり受けるのも、女性らしいアイデア。仕事に男女の能力差はなくても、性質の差はやはりあります。せっかくなら女性らしさを持ち込んで、職場環境を心地よくしていきたいものです。また職場環境改善の一環として、竹中工務店は作業負担を軽減する女性用のウェア『職人DARWING小町』をダイヤ工業株式会社と共同で開発しました。このウェアの企画には、廣瀬さんを始め、多数の女性が参加。腰や肩のサポート機能に加え、デザイン性を重視してステッチカラーやネック仕様も選べるなど、女性ならではの視点が生きた、実用的で楽しいウェアが生まれました。女性の体格や力の不利は、テクノロジーの発達によって徐々に補われていきます。細やかな配慮ある作業の進め方や思いやりのあるコミュニケーションなど、女性らしさの発揮された仕事が建設現場に欠かせない存在となる日もそう遠くないのかもしれません。チームとしての声発信で意識変化のさらに一歩先へ業界全体では女性の数は依然少なく、女性チームが組める現場は多くありません。チームになることで女性の声を発信しやすくすることが、なでしこ工事チームの意義の一つ。男性の中にたった一人では言い出しにくいことも、女性の総意としてならより伝えやすくなります。「女性の目を気にする必要がない環境に慣れている男性は、更衣室ではなく休憩所で着替えてしまうこともあります。ここでは女性たちから提案して、休憩所のドアのガラスをすりガラスにしてもらいました」と廣瀬さん。多数派の男性は意図せず男性中心の環境や慣習をつくってしまう場合もあるのです。今、〝女性を排除しない〞というところまでは男性の意識は変わってきています。しかし、女性も働きやすい環境を整えるには、女性側からの発信がもっと必要です。なでしこ工事チームは、変革の第一歩を担う存在になることでしょう。「建物として形が残る仕事に、やりがいを感じています」と口をそろえる女性たちは、現場にフレッシュな空気を吹き込みつつ、今日も作業に打ち込んでいます。1 現場の入り口に置かれた鉢植え。花言葉も添えられている。2 現場では作業着のメンバーも、通勤時は思い思いにおしゃれを楽しんでいる。3 図面を広げる金本さんと本橋さん。自分の仕事が建造物となって何十年も残ることを誇りに感じている。4 扉の建具を埋め込む溝をつくる鳩貝さん。松岡所長は「コンクリートを削る(斫り/はつり)技術・精度では、男性も含めて彼女がナンバーワン」と語る。5 女性チームをつくることは、女性視点からの気付き・要望を発信しやすくし、労働環境の改善や仕事の質向上にもつながっている。特集輝く女性の力13452
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