国土交通省No.134
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11新たな教育基盤を生み出す挑戦造船業と比べ、業界そのものがまだ若い海洋開発の分野では、まず教育環境の整備が課題となっています。東京大学で寄付講座「海洋開発利用システム実現学」を開く高木健教授に、講座内容と展望について聞きました。今年は37社の事業所が全43回の見学会を開催し、全国3,809名の子どもたちが参加。写真は三浦造船所における進水式見学会。海洋開発を担う人材の育成本講座は学生と教員の他に、協賛企業の方を対象とした講義と研修を実施しています。また、教員が自身の指導科目に学んだことを取り込む形で、さらに多くの学生に伝えてもらっています。日本では平成19年に海洋基本法、翌年に海洋基本計画がまとまりました。その中で、今後の海洋開発の関連技術の必要性が訴えられていたのですが、各技術を貫く基盤は何か、技術者はどう育てるか、そういった観点が十分ではありませんでした。そこで「教育基盤をきちんとつくりましょう」と各企業に協力をお願いし、平成25年7月に寄付講座を開設しました。海洋開発の「技術者」には大きく二つの側面があります。一つは、この講座で育成を目指しているような海洋開発システムを研究する人たちです。もう一つは、実際の運用現場で船や機械を操作する人たちで、この人材育成も重要ですが、日本ではまだ整備されていない状況です。海洋基盤技術の観点本講座が重視するのは「海洋基盤技術」です。海洋基盤技術とは、オイル・ガスの採掘から海洋発電にいたるまで幅広い分野が存在する海洋開発において、どの分野でも必要となる共通の技術基盤のことです。例えば、海洋発電とメタンハイドレートの採掘では、必要な設備も手順も異なるため、別物として扱われていますが、海上の船舶を同じ場所に留めるための制御技術など、共通する技術も数多く存在します。この共通技術を学ぶことで、海洋開発分野を横断的に取り扱う素地を身に付けることができ、活躍の幅が広がるのです。私たちはこの海洋基盤技術の学習体系の開発に力を入れています。また講座を通じた人のネットワークづくりにも力を入れています。海洋分野は「一人の成功で業界が一気に伸びる」ということがありません。みんなで少しずつ伸び続けていくことが大切です。企業と大学の若手が交流し、結び付く場ができることで、本当の意味での「オールジャパン」が可能になるのです。(談)東京大学大学院新領域創成科学研究科海洋技術環境学専攻海洋技術政策学分野高木 健 教授能者も採用されており、現場監督職の女性班長や主任も誕生。性別を問わず、意欲があれば誰もが活躍できる環境づくりが進んでいます。造船の魅力に触れる機会数千人もの仲間と共に一つのモノをつくる喜び、そのスケールの大きさは現場での実体験がなければ、なかなか理解できません。国土交通省では、造船業を目指す若者を増やすために、学生のインターンシップや教員への現場研修の実施を支援し、教育の現場と「ものづくり」の現場をつないでいます。また「海の日」20回を迎えた今年は、次世代を担う小中学生を対象に、日本財団の支援の下、全国一斉に造船・舶用工業事業所見学会も実施しました。

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