国土交通省No.134
14/24
業務密着ルポシリーズFILE35現場力同じ高度で飛行する場合は互いに約10 ㎞以上離れて飛ぶよう管制しなければなりません。福岡ACCは、中国地方西部、四国、九州地方とその周辺の上空が管轄空域。これを11区域に分割し、各区域の空を2人1組で見守っています。ACC管制官は、空港の管制官からパイロットとの交信を引き継ぎ、安全な飛行のために必要な進路や高度を指示したり、パイロットからの要望に対応したりしつつ、10〜15分で次の区域のACC管制官に引き継ぎます。こうして空港からACC、再び空港へと複数の管制官がバトンタッチして航空機を誘導しています。東京-福岡間であれば、12人前後の管制官がパイロットとの交信を行い、航空機の運航の安全を守っています。荒木は高校生のころ、自宅近くに関西国際空港が開港、そびえ立つガラスで飛び出た「海の中道」と呼ばれるエリアに、管制官が活躍するもう一つの舞台、福岡航空交通管制部(福岡A C C:Area Control Center)があります。A C Cは、空港と空港の間を飛行する航空機をレーダーで確認しながら管制する機関で、札幌、東京、福岡、那覇の四つのA C Cで、日本の上空を管轄しています。福岡ACCの荒木直也は業務に関して、「航空機が離陸してシートベルトのサインが消え、再びシートベルトを締めてくださいとアナウンスされるくらいまでを、私たちACCが管制しています」と説明します。ACCは、広範囲を高速で飛ぶ航空機を扱います。ジェット機ならば時速1000㎞。もしも同じ高度で向き合って飛ぶ2機があれば、5 ㎞離れていても10秒以内に接近することになります。そのため、上空の航空機が福岡空港に配属後、実地訓練を終え、資格取得後1年を経た橋本は、管制の仕事を「いつ何が起きるか分からない仕事」と語りました。「機内に急患が発生したり、天候が急変したり、時には複数の問題が同時に起こり、一人では正直難しいと感じる局面もあります。そうしたときは、周囲の仲間や先輩、パイロットと意思疎通しながら答えを導き出していくことが必要です。研修時代には、管制官一人一人がレーダーなどから情報を読み取って自分の担当業務を淡々とこなしていく仕事だと思っていましたが、現場に来て、チームワークが大切であることを学びました。毎日が勉強で、毎日が変化に富む仕事です」空港から空港へ導く管制官福岡空港から北に約10 ㎞、福岡市東区の市街地と志賀島を結びつける形空港の管制官空港と空港周辺の空には航空機が集中するため、素早く適切な指示を出さなければならない。ターミナルレーダー管制業務航空路管制業務進入管制業務飛行場管制業務3 福岡市東区の雁の巣にある福岡航空交通管制部と航空交通管理センター。福岡空港に向かう航空機が、数分おきに建物の上を通過していく。4 福岡航空交通管制部の管制室。管轄空域を11区域に分割し、区域ごとに管制卓が分かれ並んでいる。統括管制席(写真手前)で管轄空域全体を統括している。34FILE35FUKUOKA FIR国際民間航空機関が設定した「飛行情報区(Flight Information Region)」。この空域を通過する航空機に対して管制や情報提供を行う。日本が管轄する全ての空域を航空交通管理センターの所在地から「福岡FIR」と呼ぶ。航空交通管理センター(洋上管理)福岡飛行情報区(FIR)東京航空交通管制部札幌航空交通管制部那覇航空交通管制部福岡航空交通管制部
元のページ