国土交通省No.134
6/24
06攻勢に出た日本の造船業国内第1位の建造量を誇る今治造船株式会社は、今年の春に、広島工場で日本初の1万4千個積みコンテナ船の建造に成功。「メガコンテナ船を短期間で大量に」との需要に応える力を見せ、世界から注目を浴びています。同社の挑戦について代表取締役専務の檜垣和幸さんにお話を伺いました。「船主と共に伸びる」から強い昔から海上交通の要であった愛媛県今治市で明治34年に創業して以来、造船一筋に歩んできた今治造船株式会社。「船主と共に伸びる」を社是に、常に船主の要望を受け止め、それを先取りし、新たな挑戦を続けてきました。例えば世界初や最先端のシステムを持つLNG運搬船や自動車運搬船など、運搬する貨物に応じた最新鋭の専用船の建造。また、省エネ化や環境対策にも取り組んでおり、「あらゆる船型で『今治造船にしかできないもの』を目指して開発を続けています」と檜垣さん。昨年も「風圧抵抗削減」と「海賊対策」という課題に向き合って建造した、ばら積み貨物船RAGAが「シップ・オブ・ザ・イヤー2013」に選ばれています。そのような中で、今年になって特に注目を浴びたのが、1万4千個積みコンテナ船の建造。短期間で大量の大型船を完成させるという日本では初めての挑戦が、この広島工場から始まりました。大型船建造の実績を新たな武器に超大型コンテナ船の建造は、近年、設備投資を行ってきた韓国企業の独占状態でした。大型設備投資を控えてきた日本の造船所は、もともと超大型ドックはあるものの、超大型コンテナ船の短期大量建造には向いていませんでした。不況の時代にも設備投資や技術者採用を続けてきた今治造船には実力がありましたが、そもそも1万個積みを超える超大型コンテナ船は、国内の港湾はほとんど入港できず、今治造船の国内顧客船主も保有には消極的でした。そのため「超大型コンテナ船は韓国で」というのが造船業界の常識でした。しかし、ばら積み船のマーケット低迷に伴い、顧客船主の目も超大型コンテナ船に向くようになり、今治造船は日本で初となる1万4千個積みのメガコンテナ船の開発建造に乗り出しました。基幹船隊に投入されるコンテナ船は、短期大量建造ということも重要な要望の一つです。難題ながらも確かな技術と最新設備という総合力を武器に、ドック内で実働35日間に1隻ピッチで完成させる驚異のペースでの建造に成功。今年3月に1隻目が竣工し、現在も順調に建造が進んでいます。「このメガコンテナ船竣工後は『日本で造れるなら注文していたのに』とこぼす船主も多くいました」と笑顔を見せる檜垣さん。超大型コンテナ船の需要拡大は続き、さらに大型の2万個積みも受注しました。現在、丸亀工場に大型ドックを新設中で、平成29年の稼働を目指しています。世界の人口は増え、途上国が発展する中で、荷動き量は顕著に伸びています。「価格の変動はあっても、船は必要とされ続けます。この地球で船に代わる大量輸送手段は他にありません。われわれは人材を育成し、技術を継承しながら粛々と船造りに励んでいきます」と未来を見据えて語る檜垣さんの言葉には、船主の信頼に応えようとする誠意がにじんでいました。右/造船において最も重要な溶接作業。作業員の経験と技術に委ねられており、その丁寧な仕事が船主の厚い信頼を支えている。左/今治造船の広島工場。巨大なクレーンが4基並んでおり、このゴライアスクレーンで1400tのブロックを搭載することができる。今治造船株式会社代表取締役専務檜垣和幸さん
元のページ