国土交通省No.134
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09技術と実績のある海洋構造物建造で勝負海洋事業での経験をさらに高め日本企業として資源開発に貢献を株式会社IHI 愛知事業所日本郵船株式会社株式会社IHIの愛知事業所は、日本で唯一の大型海洋構造物専用ドックを保有しています。昭和48(1973)年に知多市に開所して以来、造船を中心に操業してきましたが、平成14(2002)年に造船事業が他社と提携し、IHIマリンユナイテッド(後年さらに統合し現JMU)として独立。愛知事業所は造船以外の海洋構造物を専門とするようになりました。平成20(2008)年からは、海洋事業に本格参入しました。通称100万tドックと呼ばれる長さ810mのドックは世界有数の大きさを誇り、大型の海洋構造物の建造に適しています。現在は原油の生産・貯蔵・積み出しをする洋上プラント(FPSO)や、ドリルシップの建造などが進んでいますが、特に今後の事業の中心に据えていきたいのは、IHIがLNG貯蔵のために独自に開発したSPBタンクの建造です。LNGを生産・出荷する洋上プラント(FLNG)で採用されることを目標にしています。LNGの貯蔵タンクは現在3タイプありますが、その中でSPB方式が唯一国産技術によるものです。直方体形のタンクのため、そのフラットな上甲板上にプラントを設置できたり、厳しい海域での稼働にも適した優れた耐久性を備えていたりと、SPBは大きな期待の持てる商品です。こうした確かな技術力は、IHIの全ての海洋構造物に生かされています。日本独自の技術で、日本に安定的なエネルギーを供給するために役立ちたい―。その思いが、IHIを海洋事業へと後押ししています。(談)平成20年、日本郵船株式会社は海洋事業グループを設立し、海洋事業に本格的に参入しました。海洋事業グループでは、主に三つの事業形態を柱にビジネスを展開しています。まずは、洋上の浮体式原油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)と大水深掘削船(ドリルシップ)での関わり方に代表される投資を主目的とした事業です。この分野で安定的に収益を生み出し、新規事業への参入基盤としています。次に、海洋事業分野で実績と技術力を持つ海外企業へ資本参加し実業に携わる事業。石油やガスといったエネルギーを扱う海洋事業では、高い安全性が求められるため実績が重視されますが、実績を積み上げる方策として、その分野で高い技術を持つ海外企業とのジョイントベンチャーやM&Aを通じ、人も送り込み実業にも携わりながら実績を積み上げていく事業形態です。最後に、当社が海運会社としてすでに持つ経験と人材を生かして自力で展開する事業です。この事業形態ではLNG船で培った知見・人材を用いて、LNGを貯蔵・再ガス化してパイプラインで消費地に送るための浮体式設備(FSRU)の案件獲得を当面の目標として取り組んでいます。近海に資源開発の現場をあまり持たず、海洋事業での実績が少ない日本の企業として、どうしたら参入できるかを考えつつ、着実に成果を上げてきました。将来的な日本近海での資源の発見、開発生産に貢献できる実力・実績を身に付けた企業になっていることを目指しています。日本企業として海洋資源開発に貢献するべく、これからも技術の獲得と経験の蓄積に励んでいきます。(談)所長大賀 進さんIHI独自開発のFSRU(浮体式貯蔵再ガス化設備)用SPB方式アルミ製タンク。中国のWisonグループから受注し、貯蔵能力12,500㎥のタンクを2基建造している。海洋事業グループグループ長小沼可幸さん出資するクヌッツェン・エヌワイケイ・オフショア・タンカーズ社を通じて、北海油田のあるノルウェーを拠点にシャトルタンカービジネスを展開。クヌッツェン社に人材を送り込み、現場のノウハウを吸収している。特集進化する造船業

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