国土交通省No.136
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17全国、エリア、都道府県管轄の異なる予報官が連携する私たちが日頃テレビなどで目にしている天気予報。その多くは気象予報士と呼ばれる資格を持った人が分かりやすく解説してくれますが、その基となる気象予報を発表しているのは気象庁の予報官たちです。天気予報および注意報や警報は、全国に配備された地方気象台から発表しますが、気象庁では全国を大きく11エリアに分けた地方予報区ごとに「地方予報中枢」の予報官を配置し、エリア内の気象予報が食い違わないように、各府県の地方気象台に注意すべき点を助言しています。さらに、東京の気象庁本庁には、日本全体の気象状況を把握する「全国予報中枢」の予報官がいます。全国予報中枢では、天気がどのように変化していくかを予測し、地方予報中枢や地方気象台が指針とする予報の方向性を打ち出すとともに、台風や急速に発達する低気圧など全国規模の気象現象の予報を行っています。地方気象台、地方予報中枢、全国予報中枢。日本の気象予報は、この三つの枠組みが連携しながら発表しているのです。スーパーコンピュータの予測を予報官の知見と経験で補うでは、実際に予報官はどのように仕事をしているのでしょうか。まず特徴的なのは勤務形態です。当然のことながら、気象庁は24時間365日、一時も休まずに業務を続け、必要に応じて注意報や警報を発表しなければなりません。そこで予報官の勤務は「日勤・夜勤・休み・日勤」というサイクルを5日単位で組み、五つのチームが1日ずつずれることで、途切れることなく業務ができるようシフトを組んでいます。勤務時間中に担う業務は大きく「天気予報」「注意報・警報の発表」「調査研究」の三つです。まず、天気予報です。気象庁では5時、11時、17時に天気予報を発表します。発表された天気予報は、気象庁のホームページで公開されるとともに、地方自治体や防災機関、報道機関などに自動的に送信されます。天気予報の基礎となるのは、スーパーコンピュータによる気象予測です。スーパーコンピュータは、気象衛星「ひまわり」をはじめとする気象観測装置が観測した風や波、気温のデータ、民間の航空機から提供される上空の気温など、気象に関するさまざまな情報を取り込みながら気象変化を予測するモデルで解析し、地球全体の大気の流れ北海道地方北海道東北地方青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県関東甲信地方茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 長野県東海地方岐阜県 静岡県 愛知県 三重県近畿地方滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県北陸地方新潟県 富山県 石川県 福井県 中国地方鳥取県 島根県 岡山県 広島県 九州北部地方山口県 福岡県 大分県 佐賀県 熊本県 長崎県 九州南部・奄美地方宮崎県 鹿児島県 四国地方徳島県 香川県 愛媛県 高知県 沖縄地方沖縄県を計算する「全球モデル」では当日から11日後までの気象を予測します。スーパーコンピュータによる予測の精度は年々上がってきていますが、いつどれくらいの雨が降るかなど細部にわたる現象までを常に正確に予測できるわけではありませんし、時には予測が大幅にずれることもあります。予報官の役割は、スーパーコンピュータが予測し切れないことを、自身の知見や経験を基に判断することです。予報官は衛星画像による雲の動きなど、実際の気象状況と照らし合わせ、スーパーコンピュータの予測と実際の気象変化の差異を考慮に入れつつ、天気や雨量、風速などの予報をシステムに入力していきます。関東甲信エリアの地方予報中枢を担当する予報官の牧野眞一は予報業務に地方予報中枢と都道府県 気象予報は、おおむね都道府県単位の「地方気象台」、全国を11の広域エリアに区分した「地方予報中枢」、全国をカバーする「全国予報中枢」の連携によって作成する。全国予報中枢は地方予報中枢に、地方予報中枢は地方気象台へと、それぞれ今後の予報作成で注意すべき点を指示。また、テレビ会議システムなども活用しながら情報共有も行う。1日目日勤8:30〜17:002日目 夜勤 16:00〜翌9:303日目4日目 休み5日目 状況によって変化5日間サイクルの勤務 勤務は、通常の暦とは無関係な5日間のサイクルで回る。日曜日が休暇だったら、次の休暇は金曜日、次は水曜日とずれていく。夜勤では2日分の勤務時間を連続して勤務することになる。
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