国土交通省No.136
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18業務密着ルポシリーズFILE35現場力集まる複数のモニターをにらみつけながら、気象に関する知見と経験を総動員して考え続け、正確な予報を導き出しているのです。社会的な影響が大きい警報を緊張感の中で判断し発表する大雨や洪水、強風といった災害につながる気象現象に対する「特別警報」「警報」「注意報」の発表や解除も地方気象台の予報官が行います。ひとたび警報が発表されると、自治体の方は大雨や暴風に備えたり、休校になる学校があったり、また、工事現場がストップしたりと、社会のいろいろなところで災害への対策がとられることになります。警報を発表するタイミングが遅れると防災対応が遅れ災害の拡大につながる可能性があるので、予報官は細心の注意を払いながら、警報を発表すついてこう語ります。「スーパーコンピュータの予測資料から、担当するエリア内でどんな現象が起きるかを頭の中で整理しながら、それぞれの地方気象台に指示を出していきます。数多くの種類のデータが集まりますが、全てのデータを確認できるわけではありません。限られた時間内で、どのデータの変化に注目すべきかを地方気象台に助言していきます」刻一刻と変化する気象の現状を注視し、スーパーコンピュータの予測を検証しながら実況を把握する作業は「実況監視」と呼ばれます。予報官たちは、勤務時間中に膨大な量のデータがるか否かを決めているのです。また、気象状況を実況監視し、現在の予測通りに気象が変化していくかを検証し続けるとともに、警報をいつ解除するかも判断していきます。東京エリアの地方気象台に相当する「東京地方天気予報」を担当する技術主任の平村泉は警報を発表する難しさをこう語ります。「警報を発表するときが一番緊張します。全国予報中枢や地方予報中枢の出した予測通りに気象が変化すればよいのですが、予測よりも強めの現象が起きそうなときは、急いでデータを検証します。予報官の助言や指示を受けながら警報を発表するか否かを判断し、上司への承認を取った上で警報を発表します。夏の雷雲による大雨など予測の難しい局地的な現象では、タイミングよく警報を出せたという達成感よりも、もう少し早く出したほうがよかったのではと反省することもあります」牧野は「自分自身が、現在どんな現象が起きているのか、うまく理解できないときもあります。そういうときはスーパーコンピュータの予測もずれていることが多い。スーパーコンピュータの予測通りに予報を発表するだけなら人間は必要ありません。いかに人間の知見と経験で気象状況を解析するか。とても頭を使う作業であり、1日の業務時間はあっという間に過ぎていきます」と語ります。予報官の仕事は発表だけでは終わらない気象庁では、平成25年から「特別警報」を設けました。大雨、暴風、高潮、波浪、暴風雪、大雪などに関して「数十年に一度の強度」が予測されるときFILE37赤道の上空約35,800kmを地球の自転と同じ周期で回る気象衛星「ひまわり」8号および9号の模型。9号は、8号と同じ機体性能で2016年に打ち上げ、2022年から2030年まで運用される予定。下は2014年12月18日にひまわり8号が撮影した高精細な地球の姿。上は気象庁の公式サイトから30分刻みで見ることができる、ひまわりからの日本上空可視光映像(2015年12月14日)。予報官のデスクには複数のモニターがあり、スーパーコンピュータの気象予測に加えて、衛星画像による雲の動きなどさまざまな情報を確認できる。予報官たちは、これらのデータを基に、システムに情報を入力して気象予報を作成する。雨量や風速の予報も同様に作成する。

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