国土交通省No.136
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19な仕事を経験できたのは幸運でした。気象予報の仕事は夜勤もあり、体力的に厳しい部分もあります。しかし、自分が予測した予報を情報として発表できるのは、とても楽しく、そしてやりがいがある仕事です」と語ります。私たちの暮らしに欠かせない天気予報。日々正確さを増す予報を支えているのは、予報官たちのたゆまぬ努力と気象へのあくなき探究心なのです。気象庁予報部予報課技術主任平村 泉 気象庁予報部予報課予報官牧野眞一 気象庁予報部予報課予報官柴田誠司 に発表するものです。一例を挙げると、昨年9月に発生した「関東・東北豪雨」でも特別警報を発表しました。全国予報中枢を担当する予報官の柴田誠司は豪雨の最中に業務にあたっていました。「時間帯ごと、地域ごとに降雨量は変化していきます。一つの情報だけで特別警報に相当する大雨が降るかを判断するのは非常に難しいことです。特別警報を発表すれば、社会的に大きな影響を与えます。数十年に一度という非常にまれな現象である特別警報をどの段階で発表するか、とても胃の痛い場面が続きました」特別警報をはじめ、重大な災害につながる恐れがある気象状況が生じたとき、予報官の仕事は警報の発表だけでは終わりません。対象となる地域の自治体の防災担当者に連絡したり、災害が切迫している状況と判断すれば気象台の台長から市長や町長に直接電話で話してもらうこともあります。また、防災機関との連絡会に参加するなどして、今後の見通しについて説明もします。そして、結果として予測できなかった気象変化が生じたとき、その原因はどこにあったのかを再検証するのも予報官の仕事です。こういった調査研究を積み重ねながら、気象庁の予報精度を上げる努力を日々行っているのです。日本の気象予報を支える予報官の努力と探究心膨大なデータから正確な気象予報を導く予報官たちの技術は、気象庁職員としての地道な仕事の積み重ねの上に成り立っています。今回紹介した職員たちのキャリアは、それぞれに違いますが、入庁後、気象観測の仕事を経験しています。観測の現場で気象変化の仕組みを肌感覚で理解することで、コンピュータには予測できない変化を読み取る能力を養ってきたのです。そして、先輩の予報官の仕事を見習いながら、気象予報という業務の責任も学んでいきます。職員の多くは、地学や物理、天体、自然科学に関心が高く、気象予測が好きで入庁した人も数多くいるといいます。約30年に及ぶキャリアを持つ柴田は「子どもの頃から気象が大好きだったので、気象庁の職員としてさまざま格子間隔が5kmで、日本を含む東アジア領域で計算する「メソモデル」による日本の地形(3)と、2kmの間隔で描かれる「局地モデル」の地形(4)。格子間隔が狭いほど、地形の影響で起きる気象現象の表現は正確になるが、計算領域が狭いことや計算量が多くなるため、予報対象期間は短い。地球をとりまく大気を格子状に区切り、スーパーコンピュータで計算する「全球モデル」の格子イメージ(1)と日本の地形イメージ(2)。日本各地域の天気を細かく予測するには間隔がやや粗いが、低気圧・高気圧の動きを捉えるためや週間予報に利用される。3214数値予報モデルや実況の推移を基に予報官が予測したものが天気予報として発信される。天気予報が出るまで気象観測データの収集数値予報モデルによる計算と結果の配信予報官による気象予報関係機関への情報発信

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