国土交通省No.136
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信仰に培われた精神風土五箇山の地には浄土真宗の教えが深く根付いている。住民総出で行う茅葺き屋根の葺き替え作業に見られる住民相互援助制度「結ゆい」は、まさにその教えに基づく〝支え合いの精神〞を表しており、今でも「個人のことは皆のこと。皆のことは地域のこと」と何かあれば協力し合う気風が残っているという。また積み重ねられた念仏の生活の中で生まれた、誰もが「〝生かされている〞ことに感謝しながら生きていくー」という思想も五箇山の人々の根底に流れているもので、全ての縁に感謝し、今を大切に生きているのだとか…。五箇山の人々が土地のものを大切にしとても温かい人柄なのは、このような教えがあったからなのだろう。南砺市観光協会の山﨑さんは五箇山について「自然も含め今もなお残っているものは、先人たちが〝大切なもの〞と暮らしの中で教えてくれたこと。だから『守らなきゃいけない』というより『守るのが当然』と思っています。日々のことを当たり前と思わずに、良いことも悪いことも〝あたわったもの〞として受け入れるからこそ、五箇山のものには全て〝心〞が備わっています」と語ってくれた。(※方言で「与えられる」、「宿命」を意味する)取材の翌朝、太陽が昇りきる前に外へ出てみた。朝靄もやがかかった五箇山と合掌造りが織りなす景色は、まるで別世界のような神秘的な空間で、そこには五箇山を守る神様がいるのではないかと思わせるほどだった。静けさの中、湧き水の流れる音や鳥の鳴き声に耳を傾け、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込むと、心が洗われ穏やかになり、今ここに居ることや全てに感謝の気持ちが自然とあふれた。 人々の努力と心により伝統が大切に受け継がれ続けている五箇山。きれいな水と空気と豊かな自然、そしてそこに暮らす人々の営みがつくり上げたこの風景や風土は、これからも訪れる人々を魅了し続けるだろう。※五箇山とうふの“とっぺちゃん”相倉集落菅沼集落ライトアップされた相倉集落茶房「掌」マスターのいれる抹茶やコーヒーでホッと一息。茶房「掌」マスターのいれる抹茶やコーヒーでホッと一息。合掌のお宿「庄七」いろりを囲みながらいただく、地元の旬の素材を使った夕食は絶品!相倉集落集落内にはカフェや民宿も!“五箇山和紙” 他の和紙に比べ強靱かつ何ともいえぬ風合いで人々を魅了する五箇山和紙。原料である楮こうぞから育て、化学薬品を使わずに五箇山の気候を利用した「雪さらし」という、大変手間のかかる作業を行う。その後に一枚一枚手作業で丁寧にすき上げられる手間暇のかかったその和紙からは、厳しい冬の作業に従事する職人の心と、上質でぬくもりあふれる優しさが感じられる。伝統工芸品
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