国土交通省No.136
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07てきました。審査項目は飛行性、構造、電気、動力、機械、製造、と大きく六つの分野に分かれ、それぞれにプロフェッショナルな審査担当者が審査しています。未知の経験、見極めの難しさMRJの型式証明は、開発側だけでなく審査側にとっても初めてのことが多く、求められる基準適合性を証明するために、検査や試験の方法にもさまざまな工夫が必要になります。例えば構造分野の試験の一つに、飛行中に想定される力を機体に加え強度不足の箇所がないことを確認する試験があるのですが、地上で同じ状況を完全に再現することは困難です。そこで飛行中に掛かる力よりも厳しい条件に設定するなどの工夫をした上で、その方法が妥当である理由を対外的に示さなければなりません。一般的なガイダンスはあっても、それから外れたケースでは、どのように安全性を証明することができるのか。経験が少ない審査担当者にとっても困難な課題が多くあります。また、エンジンでは、エンジンメーカーとそのエンジンを装備した航空機メーカーのどちらがどこまでを証明するのかなど、その線引きの難しさもありました。ガイダンスは欧米の開発経験が豊かな国で整理されてきたため、書かれていない暗黙の了解で解決される部分などもあります。米欧の航空当局とも緊密に連携し、経験不足を補うための努力は、現在も続いています。一般的に数百万点と言われる部品から構成される航空機が、設計データどおりに製造されているのか確認することも重要です。部品は材料レベルから確認し、最終的に航空機レベルまで設計データどおりであるかを確認します。これまでに千回以上の検査が行われました。また、確認のために訪れた会社は、国内で約50社、海外で30社以上にも及びます。型式証明とその後の業務型式証明をめぐるさまざまな課題は、各国の航空当局との会議や研修の他、整備士や航空機製造に携わってきた審査担当者たちのキャリアを生かしてクリアしてきました。その結果が、昨年11月に行われたMRJの初飛行に結び付きます。一方、型式証明に向けた活動はこれからが正念場であり、航空機の性能や機能を確認するための飛行試験も本格的に始まります。いまだ道半ばの審査業務ですが、審査センターの職員たちはこの歴史的なプロジェクトに携われることへの喜びと誇りを感じています。航空機の製造会社にいた頃に比べて、今の方が審査業務の重要性を実感できると語る職員もいます。役目を終えるまで何十年もの間、多くの人々を乗せて空を飛ぶ航空機の安全性を証明するこの仕事は、大きな責任が伴います。その自覚を一人一人が持って審査を行い、国産航空機の安全性を確保する。そして、型式証明の後も、トラブル対策や利便性向上のための設計変更に対応し、安全性を継続して確保するため、審査センターの業務は半永久的に続いていきます。MRJの型式証明に携わっている審査センターの職員たち。左から武田斎係長(構造)、西村圭介設計審査官(電気)、釣慎一朗専門官(動力)、藤巻吉博主幹設計審査官(企画調整兼機械)、小池輝主幹設計審査官(飛行性兼フライトテストパイロット)、阿部浩之設計審査官(機械)、上地広行係長(製造)。設計図や書類の審査はもちろんだが、製造作業が実際に設計どおりに進められているのか、現場に出て取り付け方法や位置の正確さ、さらには技術者の技量なども入念に確認する。写真提供/三菱航空機型式証明書を交付するまで型式証明の申請書を提出。機体メーカー基準への適合性を証明するための証明計画を作成。機体メーカー試験や解析など、どのような方法で証明を行うかを協議し、証明計画について合意する。審査センターの審査担当者(左側)と三菱航空機の技術者(右側)。英語のガイダンスを読み解きながら、証明の計画から具体的な手順まで、さまざまな事項を互いの立場から議論する。両者試験方法について協議し、合意する。また、審査センター職員は試験に立ち会い、試験が適切に行われていることを確認する。両者全ての試験報告書、解析書などの確認をもって、型式証明書を交付する。審査センター申請日に有効な最新の基準を、当該航空機の審査基準として設定する。航空機の特徴によっては、特別要件を設定する場合もある。審査センター

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