国土交通省No.137
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12復旧・復興事業が本格化する中、宮城県は「震災があったからこそ」のまちづくりを目指しているといいます。震災直後から復興に奔走してきた宮城県土木部長の遠藤信哉さんにお話を伺いました。復興は災害に強いまちづくりから新たなステージへ「現在は、震災で甚大な被害を受けた市町の復興が、目に見えて進んできました」と手応えを語った遠藤部長。「たった5年でここまで来られたのは全国から応援に来てくださった方々のおかげです」と続けました。各自治体から支援に駆け付けている職員は、宮城県内で600人以上もいるといいます。しかし、それでも震災直後のまちづくりは困難の連続でした。被災した市町の多くは直面する課題で手一杯。将来に向けた計画を考える余裕などありません。そこで県は「参考になれば」と新たなまちづくりの素案を数パターン用意し、市町に提案しました。例えば、リアス海岸のため高い津波が直接襲来した沿岸北部の三陸地域には、高台移転の案を。なだらかな平地のため津波が内陸部まで到達した南部地域には、多重防御の案を。多くの被災地で土木関係の職員が不足していたため、結果的にこの素案が足掛かりとなり、市町の計画づくりは加速的に進みました。「次に目指すべきは、創造的復興だと考えます。創造的とは、この震災をきっかけに新たなまちづくりのモデルを目指そうというものです」と遠藤部長。その一例は、国が管理していた空港としては初の完全民営化となる仙台空港で、利用者数の倍増を狙います。他にも、広域防災拠点整備や医師不足に対応した医学部新設など、まち全体の課題や弱点を改めて見直し、さらに安全で魅力的なまちの実現に県をあげて取り組んでいます。こうした創造的プロジェクトと同時に、被災事実を後世に伝えるための「3・11減災・伝承プロジェクト」にも県は力を入れています。次世代へ防災文化をつなぐための、語り部による防災教育。津波浸水高の表示板設置や津波資料のアーカイブ化など、多種多様な方法で記録保存とその伝承を推進しています。「多くの人に震災の実態を知ってもらうだけでなく、各被災地域の記録を展示する施設をネットワーク化することも大切です。今後はネットワークの中心として、石巻市の南浜に国・県・市が連携し復興祈念施設の整備を進めていきます」(遠藤部長)過去を受け止め、しっかりと記録しているからこそ、未来に向かって全力まちづくりの形が見え創造的復興へステップアップ宮城県宮城県土木部長 遠藤信哉さんを出せるのかもしれません。宮城県の復興は、新しいステップへと歩みを進めていました。東日本大震災 宮城の記録http://www.pref.miyagi.jp/site/kt-kiroku/未来のために残す詳細な震災の記録「記憶はいつか消えてしまうからこそ、記録することが大切」と語った遠藤部長。宮城県では土木部のみならず、各部局で震災と復興の記録をつぶさに取りまとめています。全職員から震災当時の個人的な体験を集めたという貴重な資料もあり、その価値は計り知れません。各種資料はウェブでも閲覧可能です。1 駅や公共施設などでは震災時の様子を伝えるパネル展示も多数設置されている。2 3.11減災・伝承プロジェクトの一環として各地で津波の浸水高表示を推進している。12

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