国土交通省No.137
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22この町で働きたいJR女川駅舎には「ゆぽっぽ」がある。天然温泉で観光客や地元の方たちの憩いの場だ。支配人の吉田さんは昨年3月にそれまでの職を辞して女川町へやって来た。「震災後、各地の被災地へボランティアとして入ったが、次第に被災地で自分の経験を生かした仕事に就きたいと思うようになった。女川町の方々とは垣根なく付き合える。この町に関わって生きていけることは、自分のこれまでの人生で一番価値あることだと実感しています。子どももお父さんらしいと応援してくれていますよ」具体的な形を次世代へつなぐ昨年12月23日、ゆぽっぽ・JR女川駅前から女川湾へと通じる一帯に商業エリア「シーパルピア女川」がオープンした。このシーパルピア女川は、女川みらい創造株式会社により運営されている。専務の近江さんが教えてくれた。「震災により全てを失った女川が再生し、また人口減少、少子高齢化の時代にあっても持続可能な町として生き残るには、役所だけ、民間だけで考えていてもダメ。全ての関係者の知恵を結集しなければ。この会社は公民連携によるまちづくり会社です。地域貢献、活性化を自分の生き様にして10年目、あらためてこの場所での活動にしっかりと取り組んでいく覚悟です。女川が持つ海、空、自然、景観といった人間にはつくれないものを軸に、人間が創造できるものを添えて、次世代の方たちに新しい、持続可能なまちづくりの仕組みを具体的な形でつなげていくことが今の目標であり、夢です」女川ブランドを全国へつなぐ女川ブランドも育ちつつある。女川町で水揚げされた原材料を使用、あるいは女川町内で製造された商品を条件に、味はもちろん、パッケージ、価格のバランスを県内外の食のスペシャリストが審査。基準に合格した商品が「あがいん おながわ」のブランド名を冠して販売されている。この事業を手がける復幸まちづくり女川合同会社の阿部さんが語る。「震災前の女川は、現状維持だけでは、いずれ衰退する町だったと思います。震災は確かに不幸な出来事でしたが、みんなで立ち上がらざるを得ない状況を生み出した。この会社もまだ動き出したばかりですが、運営方法などをさらに工夫して事業が自走できるようにするのが今の目標です。“稼ぐまちづくり〟です。全国の皆さまにはぜひ、女川に遊びに来てくださいと言いたいです。実際に見てください。体験してください。文字や写真だけでは伝えきれない、さまざまな何かが女川にはあります。遊びながら学べる町です。もしかしたら、あなたの価値観さえ変えてしまうかも。女川の人たちとぜひ話をしてみてください」ゆぽっぽ・JR女川駅女川町の玄関口。女川町復興の象徴となってきた。世界的建築家の坂茂さんの設計。海に向かって飛び立つ女川町の鳥「ウミネコ」をイメージした屋根が印象的。館内には、日本画家千住博さんの絵と公募で集まった900点余りの花の絵を合わせた巨大なタイルアート「家族樹」なども見ることができる。夜のシーパルピア女川とゆぽっぽ・JR女川駅女川町まちなか交流館プロムナード沿いにある町民や来町者が気軽に立ち寄れる“まちなか”の交流拠点。ホール、会議室、音楽スタジオ、調理室、キッズコーナーなどで構成されている。(写真提供:女川町)
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