国土交通省No.138
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13世界各国と協力し地球環境の状態や変化を把握南極地域観測隊は、1956年︵昭和31年︶に第1次隊を派遣して以来、半世紀を超える観測活動を南極で行っています。気象や測地、海底地形・潮汐など、観測の方法や技術は時代とともに進化しながら、南極を見つめ続けてきました。現在は社会的に大きな注目を集める「地球温暖化」をメインテーマに据えた観測を進めています。また、南極という大フィールドの観測活動を発展させるためには、さまざまな局面での国際協力が不可欠なため、国際連携の強化も積極的に行っています。現在、派遣隊員は毎次60~70名ほど。「越冬隊」と「夏隊」に分かれ、各観測の担当者と、その活動をサポートする設営担当者︵医療・調理・土木・機械など︶で編成されています。国土交通省からは基本的に志願者からの選抜制で、気象庁・海上保安庁・国土地理院の職員が7名ほど参加しています。任務に応じて約半年前からさまざまな訓練や研修を受け、健康診断をパスすると、オーストラリアから砕氷艦「しらせ」に乗船。約1カ月かけて南極大陸の東オングル島にある昭和基地へと向かいます。夏隊は2カ月弱を過ごした後帰国しますが、越冬隊はそのまま約1年2カ月滞在します。南極の夏は短く、雪が減り氷が薄くなる12月中旬から2月上旬しか「しらせ」で昭和基地に近づくことはできません。屋外での設営作業やヘリコプターにより短時間で長距離移動できるのは、この期間だけなので、隊員たちは観測をはじめ、さまざまな活動に追われることになります。 精確な観測の 継続によって 地球と宇宙を知る隊員が観測したデータはさまざまな研究機関で分析・解析され、多彩な分野で生かされます。例えば、氷の層に閉じ込められた何十万年も前の空気を分析することで、当時の気候などを調べることができます。また、南極は風化や汚染が少ないため、隕石や地質の研究にも適しています。1982年︵昭和57年︶に世界で初めて「オゾンホール※」を発見したのも日本隊でした。「地球環境変化のセンサー」「宇宙への窓」といわれる南極での観測データは、地球や宇宙を知る手掛かりであり、その蓄積は学究的にはもちろん、私たちの生活、さらには将来の地球環境の予測にも役立てられます。※ 南極や北極上空の成層圏オゾン層の一部が濃度の減少によって穴が空いているように見えることから呼ばれるようになった。成層圏オゾン層は太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生態系を保護する役割がある。南 極 海南 大 西 洋太 平 洋イ ン ド 洋赤 道日 本昭和基地南 極 海南 極 海南 極 海南 極 海イ ン ド 洋赤 道赤 道赤 道赤 道昭和基地イ ン ド 洋イ ン ド 洋イ ン ド 洋約14,000km約14,000km南 極 海昭和基地あすか基地みずほ基地ドームふじ基地南 極 大 陸
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