国土交通省No.138
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16ようになり、詳細な海底地形が効率的に得られるようになってきました。基礎的なデータを蓄積していくことで、後々の新たな発見や活用につながると期待されています」住吉の観測は、南極大陸に向かう「しらせ」の中から始まりました。「しらせ」に装備された音響測深機を使って海底地形を観測します。また、XCTDと呼ばれる測定機器を海に投げ入れ、海水の温度や塩分濃度の情報を取得します。当然ながら海底地形調査は氷があるとできないため「しらせ」で氷を砕きながらの観測です。「外海のうねりや氷を砕く振動の中でもモニターを見続けていたので、船酔いに悩まされました。そんな中でもデータ品質を保つよう海氷上の航路を戻って再航行してもらい、納得いくデータが取れるよう心掛けました」野外沿岸で潮汐を観測水深の基準や海面変動を把握南極大陸では野外で行う潮汐観測も重要な仕事の一つです。「潮の満ち引きを観測し、海図を作製する際の水深の基準を決定します。また、長年にわたってデータを蓄積することで地球温暖化や津波などによる海面変動の把握も可能になります」まず足を運ぶのは、昭和基地近くの西の浦験潮所。この験潮所では通年でデータを取得し続けます。設置されている水位計の校正のため、パイプでやぐらを組んで海上に標尺を設置し、目視で潮位を観測します。他にもヘリコプターで南極大陸を移海底地形調査中のデータは船内の観測室に送られる。今年は氷が薄い方で走りやすかったものの、氷の障害に悩まされる事もしばしば。動し、数カ所を数日間野営しながら潮汐観測。データや観測機器の回収、新たな機器の設置も行います。「夏隊は活動期間も短い上、作業量が多く、野営の繰り返しでオーバーワーク気味でしたが、その大変さを感じないほど、美しい自然の中で実に充実した観測ができました」南極大陸を測量し、地図作成と地球科学の解明に貢献すること。国土地理院が南極地域観測隊に参加する目的です。第1次隊から連続して参加し、その時々で1~数名の職員を派遣しています。当初は地図作成のために行っていた測量も、現在は地球科学の課題を解明するための基礎資料を提供するという役割が増してきました。前人未到の南極の地を測量し新しい地図を広げていく第57次南極地域観測隊(夏隊)国土地理院 基本図情報部 画像調査課 下野 隆洋昭和基地では平成7年から国際連携の下でGNSS連続観測局を運用。連続的に観測することで地殻変動のメカニズムを解明するための基礎資料となり、実際に南極大陸が動いていることを示すデータも得られています。第57次夏隊に参加した下野隆洋は「特に南半球は観測点となる陸地が少ないこともあり、南極のデータは地球の全体的な動きを西の浦験潮所にある潮汐観測装置。他の隊員の協力を得て、初めて充実した観測が実現。野営では一つの場所に3〜4日。観測また移動とまるでキャラバン隊。XCTD(投下式水温塩分計)の観測データは有線にて通信。その長さは最長約2km。
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