国土交通省No.138
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17把握するための重要な観測点となっています」と語ります。しかし地殻変動を解明するためには長期にわたるデータの蓄積が重要で、まだまだ分からないことの方が多いそう。「月の引力や降り積もった雪の重みでも大地は上下に動きます。データの揺らぎが何を意味するのか要因を切り分けるには長期の観測が必要であり"定常"観測の意義でもあります」 過酷な野外活動も全て遂行完了!南極での測量は日本とは勝手が違うことも。住吉と同様、野外観測チームを組み、お互いの観測を手伝いながら数日間・数カ所を野営します。寒さで動かなくなったバッテリーをカイロで温めたり、風速20mの中でヘリコプターを待ったり⋮。「悪天候のため予定の半分も実行できないことがあると聞いていたので、予定量の倍近くの計画を過密気味に組みましたが、今回は天候に恵まれ、ほぼ全ての計画を完了することができました。強風吹き荒れる野営を幾晩も経験しましたが、そんな環境下でも夜には倒れ込むように熟睡するというハードな野外観測でした」順調に計画が進んだ結果、前人未到の新しい地での測量も経験できたといいます。「人類が足を踏み入れていない場所を測量すると、世界が広がっていく感じがします」測量の技術はこれからも進化を続ける測量の技術が向上し効率化が進むと、その精度やできることは毎回少しずつ変化していきます。最近ではドローンを使った測量も注目され、南極での実用化がかなえば、地形測量の可能性が劇的に広がると考えられています。下野も「ドローンが南極の特殊な環境で正常に動作するのか。いろいろと懸念はあり氷床変動測量。GNSS受信機で24時間データをとり続ける。これまでの観測で氷床は西北西の方向へ年間約5m動いていることが分かった。地形図を作成するために、空中写真撮影実施前に測地基準点に対し、対空標識をペンキで塗装。一緒に野営している他の隊員にも手伝ってもらいながらの作業。野営では大量の食材を持ち込む。下野曰く「住吉さんは料理番長。一緒に野営する時もあり、とっても美味しかったです!」下野が設置した測地基準点。これまで人間が足を踏み入れていない「前人未踏の地」である証明ともいえる。ますが、それを上回る可能性を大いに感じています」と南極での新しい観測に期待を抱いています。南極という地だからこそできる観測。その地道な観測の積み重ねが、私たちの住む地球という惑星の解明につながっていくのかもしれません。業務密着ルポシリーズFILE 39
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