国土交通省No.139
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16基礎の基礎から訓練漬けの毎日横浜海上防災基地の訓練施設に響く若々しい声。その主は青い出動服の特殊救難隊新人研修隊です。新人研修隊といえども潜水士のキャリアを持つ救助のエキスパート。より難度の高い特殊な海難救助を目指す全国の潜水士の中から選抜されました。「よーし、かかれ!」始まったのは、負傷者を担架に収容し吊り上げる基礎訓練。隊長大黒真司の号令のもと、負傷者の体が担架からずれないようにロープで固定していきます。「"あぶみ"(負傷者の足底を担架に固定するロープ)が機能してないぞ!」と指導官である副隊長佐藤栄将の指摘に何度もやり毎年4月から7カ月間、新人研修隊員は特殊救難隊員として必要不可欠な知識・技術・体力の基本を集中的に体にたたき込む「特殊救難業務研修」︵通称:新人研修︶を受けます。特殊救難隊の証である「オレンジベレー帽」を目指して、平成28年度は5名が奮闘中です。〝特救隊〞としての気概を心身にたたき込む!特殊救難隊新人研修隊Vol.02直し、なんとか吊り上げられる強度で固定できましたが予定時間オーバー⋮。「集中すると周りが見えなくなる。周囲の状況をもっと的確に把握しなければ」と救急救命士の資格を持つ福永昌恭。米山将平も「潜水士とは段違いの専門性に圧倒されっぱなし。ゼロから詳細に復習し、隙間なく知識と技能を埋め込んでいます」と語ります。「訓練でできないことが現場でできるわけがない」「訓練とはいえ教えるだけではなく、自身の持つ知識や経験から最適な方法を考えて行動することを重視しています」と、隊長の大黒が語るように、研修は実践的。次の荷物の吊り上げ訓練では、新人研修隊員が自ら器材を選定し、縄掛け方法を考え、実際に吊り上げが完了するまで一連の流れで行っていきます。増岡和明も「基礎とはいえ専門的で、結び方ひとつ、動きひとつに意味があります」とその難しさを語ります。その結果、時間がオーバーしたり、吊り上げに失敗したり⋮。何より重要なのはその後です。失敗した原因を指導官や同期の隊員からの指摘を受け自ら考察し、解決方法を見いだし、できるまで繰り返します。「訓練でできないことが現場でできるわけがない。気持ちが折れたら奮い立たせ、知識が不足しているようなら補完し、とにかく自力でゴールまで到達できるように意識させています」(大黒隊長)共に成長する同期が心の支えに協力し合ってミッションを完遂することもあれば、ときに個人力が求められることもあります。数々の障害を乗り越え、救難現場にいち早く到達するのもその一つ。そのための訓練の一つが「レンジャーサーキット」で、一人一人タイムを計り競います。特に素早中学時代に海上保安庁の施設見学に行ったのが潜水士になるきっかけ。横浜で特殊救難隊と触れ合ううちに自らも志願することに。趣味の音楽で休日はリフレッシュ。米山将平 26歳新潟で漁師をする祖父に憧れ海の仕事を志す。大学在学中はライフセービング部のキャプテンを務め、「人を助ける」ことへの関心を募らせた。趣味はサーフィン。佐藤卓也 28歳人を助ける仕事を志す中で、映画「海猿」で特殊救難隊の存在を知る。将来の目標は「冷静な判断のできる隊長」。休日は同期との飲み会でリラックス。増岡和明 27歳平成28年度の新人研修隊。特殊救難隊の証ともいえるオレンジのベレー帽、出動服が着用できるのは研修期間が終わり、正式に特殊救難隊員として認められてからとなる。

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