国土交通省No.139
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17さを得意とする谷口史敏は「技術、知識、体力どれをとっても誰にも負けたくない。そうやって競い合う気持ちが、自らの成長につながっているように感じます」と闘志をみなぎらせます。屋上まで階段を駆け上がり、懸垂で壁を移動、縄梯子の下をつたい、棚下のような狭い場所も俊敏に動くことが求められます。先にゴールした隊員も、他の同期の隊員に声援を送ります。「誰にも得意不得意があり、心身ともに限界に近い状態です。同期同士で励まし合うことで乗り越えられていることは多いですね」と佐藤卓也。競い合い、励まし合い、協力し合うことで、着々と個々の技能と結束力を高めています。「オレンジベレー帽」を目指し、実践的な訓練が始まる陸上以外にも水中での訓練も頻繁に行われています。「素潜りで10mの水深にある装備を付けて浮上する」「相方と一つのタンクの空気をシェアするバディブリージング」など、どれも過酷な訓練荷物の吊り上げ訓練では、マットレスを使い、研修施設の最上階まで、いかに効率的に迅速に吊り上げられるか、その方法を自ら考える。「やはり隊長、副隊長の早さにはかなわない…」とのこと。担架救助訓練。ヘリコプターと連携した吊り上げ救助だけではなく、ロープを使用し崖上からの救助も行う。最上階まで駆け上がり、縄ばしごを使って屋上まで出たときにはもう腕がパンパンな状態。屋上でも数々の障害を経て、室内に戻ってもさらに高度な障害は続く。隊長や隊員たちの激を受けながら途中失敗しても何度もやり直す。特殊救難隊新人研修隊Vol.02ばかり。谷口は10㎏の重りを持っての立ち泳ぎの際に水を飲み、パニックになりそうになったこともあるといいます。「訓練を通じて自分を客観視することで克服し、今は厳しい現場でも冷静さを保つ自信があります」と訓練の効果を語ります。佐藤も「特殊救難隊の使命の一つが『生きて戻れ』です。巡視艇でも救助活動はありましたが、特殊救難隊の現場は常に生死の境ギリギリであり、その過酷さを改めて実感しています」と語ります。応用訓練も始まり、秋の現場訓練ではさらに熾烈さを増していきます。「ギリギリの中に自らを置くことで、自身だけの究極の強みを見いだして欲しい。得意分野の能力を伸ばすことで、個人と隊の総合力が高まると信じています」(大黒隊長)11月には研修修了式が行われ、特殊救難隊員として新たなスタートを切る予定です。その際には「研修修了書」の授与、そして一人前の特殊救難隊員の証である「オレンジベレー帽」が手渡されます。5名の新人研修隊員は自身の限界の向上に向けて、今日も過酷な訓練に挑んでいます。海と船、泳ぐことが好きという理由から潜水士に。細身な身体と俊敏さを強みとし、船内活動などで活躍。レンジャーサーキットは常にトップ。趣味は一人カフェ。谷口史敏 28歳救急救命士。過酷な現場でも活動できる「けがせず、力強くあれ」という上司の言葉を信条とする。休日は健康ランド通いで日頃の疲れを流す。福永昌恭 26歳レンジャーサーキット担架訓練吊り上げ訓練
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