国土交通省no143
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14年の台風第10号による岩手県岩泉町などの豪雨災害でも使用されるなど、着々と実用化が進められています。同研究室主任研究官の神山嬢子は「実際に災害現場で役立てながら、明らかになった課題を研究の一環としてブラッシュアップすることで、より有用な地表観測技術として実用化できればと考えています。特に観測データから災害箇所を判読するためには相当の技術が必要となるので、現地の各地方整備局などでも容易に活用できるようマニュアルを策定し、より迅速な災害対応が可能となるよう進めていきます」と語ります。しかし、人工衛星の観測は衛星の動きに合わせての観測となるため、随時のデータ取得ができないなど、決して万能ではありません。ヘリコプターでの空中撮影や現地への立ち入り調査など、そのほかの手法を適宜併用して判断することが必要となります。「さまざまな観測が可能になるほど、意思決定は複雑になりがちです。その点についても、さらなる効率化はできないか、最適な併用法は何かなど、的確な判断をするための方法を考えていきます」(神山)住民の声を有効活用し災害の前兆をキャッチさらに土砂災害を察知する情報収集ツールとして、リアルタイム性が高いTwitterの活用が試験的に始まっています。Twitter上でつぶやかれた「地鳴り」や「土臭い」といった土砂災害の前兆現象ワードを抽出して分析することで、いち早く危険地域やタイミングを察知する仕組みを作ろうという試みです。「現在は、雨の量を用いる土砂災害警報情報に加え、場所によっては危険箇所に設置したセンサーからの収集データが判断基準となっています。そこに住民が感じた前兆現象などの異常をデータとして加えたいと思い、実現する方法を探っていました。以前は電話での情報提供を呼び掛けていましたが、気軽につぶやけるTwitterが登場したことで、一気に情報収集が行いやすくなりました」(神山)専用ソフトで地図上に収集したワードと雨量を併せて表示してみると、危険が高まっている場所やタイミングが細かく表示されます。ただしSNSには誤報雲を通ることができる電波で、悪天候時や夜でも地上を観測する。平成24年7月の九州北部豪雨の降雨・土砂災害の推移とツイート状況。近隣地域の前兆現象(崩壊)が集中的な土砂災害の前に把握できる可能性と、情報のリアルタイム分析により、より早い警戒・避難につなげられる可能性がある。土砂災害研究室 主任研究官神山嬢子SARで撮影した山と土砂崩れの様子( が土砂崩れ箇所)
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