国土交通省no143
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15も少なくないことから、他のセンサー情報と総合して、TECーFORCE(緊急災害対策派遣隊)などの初動対応のために活用することを前提としています。現地に赴き技術支援を行う役立てる喜びが仕事のやりがいにこうした最新技術に関する研究・開発は、既存の技術や研究成果を政策の企画・立案に役立てるだけではなく、自治体や民間組織へ提供することも国総研の重要な役割です。土砂災害研究室においても、大規模な災害発生時にはTECーFORCEの一員として職員が現地に派遣され、近年では平成26年の広島土砂災害や平成27年の関東・東北豪雨などにおいて、被災調査や二次災害防止のための活動に従事しました。野呂、神山も昨年の熊本地震などの災害の際には現地に入り、災害のメカニズムの分析や、今後の危険性や対策などへの助言を行いました。現地では国の機関から派遣された専門家として期待され、重大な役割を担っていることを強く感じたといいます。「学生時代に訪れたネパールで災害に苦しむ人々を目の当たりにし、生活の土台となる土地の保全に貢献したいと思ったのが、この仕事を選んだきっかけです。初心を忘れることなく、災害から1日でも早く復興できるよう、技術的にはもちろん、少しでも安心感を与えられる仕事ができればと思っています」(神山)さらに、こうした技術支援は国際的にも行われており、野呂もまたJICA※を通じてインドネシアに赴任した経験があります。「火山や雨も多く、土砂災害が多い国だったため、そこに日本の技術が役立つのは大きな喜びでした。国内外を問わず、当研究所は職員が現場へ赴任することが多いのも一般的な研究所との違いです。研究だけでなく、現場の課題を解決し、そこからさらに発展させるところに、私たちの存在意義があると認識しています」(野呂)国総研は総合病院専門医として砂防を担う国総研は、住宅・社会資本分野で唯一の国の研究機関として平成13年に設立されました。河川や道路、下水道、砂防、建築、住宅、港湾、空港などに関する技術研究を行い、その研究を基にした技術基準の作成や災害活動支援、自治体や民間組織への技術相談や技術移転、さらに研究のコーディネーター役などを担う、いわば日本という身体全体を診る“総合病院”のような機関です。その中で、土砂災害研究室は土砂災害における専門医として、平常時には大地の定期的な観測(健康診断)を行い、土砂災害の予兆(発症のサイン)や土砂災害(発症)を早期発見、そして迅速な詳細調査(精密検査)や対策(処置)を行うことで被害の発生を防げるよう、日々研究にいそしんでいます。「私たちの研究は、天気予報のように直接国民の皆さまに提供されるものではないため、ご存じない方も多いかもしれません。しかし、行政や関係機関を通じて政策支援や工法検討などに活用され、さらには河川や道路、建築物など他の技術研究と連動して安心・安全な国土づくりに役立てられています。災害対策技術は『使われないこと』が一番幸せですが、なかなかそうはいかないものです。山の中でスリット型のえん堤など砂防施設に気付いたら、その裏側に地道な研究があることを思い出してもらえるとうれしいです」(野呂)※独立行政法人国際協力機構業務密着ルポシリーズFILE 44平成26年広島市の土砂災害平成27年関東・東北豪雨による土砂災害
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