国土交通省no143
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7特集防災情報を活用し 命を守る地震・津波・火山噴火から身を守るため情報精度の進化を図る気象庁では気象予報以外にも、地震・津波、火山噴火による災害の防止や軽減のために、緊急地震速報、大津波警報・津波警報・津波注意報、噴火警報や噴火速報など、国民の命を守るための防災情報を発表しています。これらの防災情報の精度をさらに進化させるため、技術的な改善や体制の強化を図り、迅速かつ正確な情報発信を目指しています。地震EARTHQUAKEP波とS波の速度差を利用して緊急地震速報を発表地震に伴って発生する地震波には、速度は早いが弱い揺れのP波(秒速約7㎞)と、速度は遅いが強い揺れのS波(秒速約4㎞)の2種類がありますが、 緊急地震速報はP波とS波の速度の違いを利用して、大きく揺れ始める前に安全行動をとっていただくための情報です。震源に近い地震計でP波を観測すると直ちにそのデータが気象庁に送られて、震源の位置や地震の規模(マグニチュード:M)を推定し、各地の震度や到達時刻を予測します。しかし、緊急地震速報を受信してから実際の揺れが到達するまでの時間は数秒から数十秒と短く、震源に近い場所では強い揺れが来るのに間に合わないことがあります。平成23年3月の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の翌日には、福島県沖(M4・8)と長野県北部(M3・5)の2カ所で、ほぼ同時に規模の小さな地震が発生しましたが、これを一つの大きな地震として処理したため、震度を過大に予測して緊急地震速報を発表してしまいました。その後も、このような事象が頻発し、強い揺れが来ると身構えていたにもかかわらず、弱い揺れしか来なかったという事態が続きました。二つの新手法を導入し迅速・確実な緊急地震速報へそこで、緊急地震速報の精度向上のための技術改善を行い、平成28年12月よりIPF(アイピーエフ)法※1という手法を用いた運用が開始されました。それまでは、地震の揺れの観測データから「揺れ始めの時刻」を主に使って震源を推定していましたが、IPF法では「揺れ始めの時刻」「震源までの推定距離」「推定した震源の方向」「観測された振幅」などの解析結果を総合的に判断して、一番確からしい震源の位置を推定することができるようになりました。これにより、複数の地震がほぼ同時に発生しても、別々の地震として処理し、震源を適切に推定することで、より確実な緊急地震速報を発表することができるようになりました。地震は、岩盤が断層を境に動くことで発生しますが、東北地方太平洋沖地震のような巨大地震では、断層が大きくなるため非常に広い範囲から地震波が放出されます。このため、震源とマグニチュードから震度を予測する方法では、強く揺れる地域を適切に予測することができません。そこで、PLUM(プラム)法※2という「ある場所で強い揺れを観測したら、その周辺でも同じように強く揺れる」という考えに基づいて震度を予測する新たな手法を開発中であり、平成29年度中の運用開始を目指しています。緊急地震速報の仕組み平成23年3月12日に福島県沖と長野県北部でほぼ同時に発生した地震の震源(×)と観測された地震の揺れ※1 Integrated Particle Filter法 ※2 Propagation of Local Undamped Motion法震度 4震度 3震度 2震度 1震源
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