国土交通省no143
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8IPF法に加え、PLUM法も導入することで、さらに精度の高い緊急地震速報を発表することができるようになると考えています。しかし、緊急地震速報は地震の予知ではないため、強い揺れが来るまでには、わずかな時間しかありません。わずかな時間でも最善の行動ができるように、日頃から緊急地震速報を見聞きしたときに、どのような対応をするかを決めておくなどの心掛けが大切です。津波TSUNAMI津波には長時間の注意と警戒が必要東北地方太平洋沖地震は、三陸沖を震源とするマグニチュード9・0という巨大な地震でした。この地震により、東北地方の太平洋沿岸をはじめとして北海道から沖縄にかけて広い範囲で津波が観測され、東日本の太平洋沿岸各地で甚大な被害をもたらしたことは、まだ記憶に新しいと思います。津波の高さが10m以上あった範囲が400㎞を超え、さらに平野部の浸水域は内陸に5㎞以上にも及びました※3。そもそも津波は、海底下の浅い場所で発生する大きな地震により海底の地形が大きく変動し、直上の海水が大きく盛り上ったりへこんだりすることで発生します。気象庁では日本近海で大きな地震が発生した場合に、津波が発生するかどうかを解析し、その結果、津波による災害発生が予想される場合には、全国を66区域に分けた津波予報区に対して、地震が発生してから約3分を目標に津波警報・注意報の第一報を発表しています。しかし、東北地方太平洋沖地震では、地震発生から約3分で推定した地震の規模(M7・9)が過小である可能性を認識することができませんでした。さらに、最初の津波情報で発表した津波の観測値が低かったことで、「今回の津波は大したことはない」という思い込みが生じ、避難の遅れや中断につながったなどの課題が明らかになりました。マグニチュード8を超えるような巨大地震は、短時間ではマグニチュードが精度よく特定できないことがあります。そのため、巨大地震の可能性があると判断された場合には、津波警報・注意報の第一報を、その海域で想定されている最大規模の津波の高さに基づき、「巨大」や「高い」などの言葉で発表することで、非常事態であることを伝えたり、観測値が予想される津波の高さより大幅に低い間は、「高い津波が来ない」と誤解されないよう「観測中」と発表したりするなどの改善を図りました。従来の観測データに加え新たな観測データを活用さらに気象庁は、発表中の津波警報などの更新を従来よりも早いタイミングで行ったり、沖合の津波の観測に関する情報を発表したりするために、平成24年3月から沖合の水圧式津波計の活用を開始しました。また平成28年7月からは従来の観測データに加え、国立研究開発法人 防災科学技術研究所が運用する日本海溝海底地震津波観測網(S ー net)、地震・津波観測監視システム(DONET)の海底津波計のデータ活用を開始しました。 海岸で強い揺れを感じたり、または弱くても長時間ゆっくりとした揺れを感じたりした場合や、津波警報などが発表されている場合には、直ちに海岸から離れ、できるだけ高い場所に避難してください。また、津波は繰り返し襲ってきます。津波警報・注意報が解除されるまでは、安全な場所から離れないことも大切です。紀伊半島から四国沖の南海トラフに設置しているDONETの海底津波計分布図S-netの海底津波計分布図。125地点に海底津波計を設置している。※3 「東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ」の調査による

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