国土交通 No.145
6/24

粟島佐渡島新潟県村上市6新潟県の北部、日本海に浮かぶ小さな離島粟島(粟島浦村)には海を望む場所に馬の牧場があります。その牧場で、軽トラの荷台に乗り「うわ!渋い!」と言いながら頭上の桜の実を次々に食べる子どもたち。サクランボといっても食用の品種ではなく、普通の桜の実なのですが、そんなことはお構いなし。実は、この無邪気にはしゃぐ子どもたちは生粋の島っ子ではなく、この島に留学のためやって来たのです。島が抱える人口減少・高齢化問題粟島は新潟県村上市の岩船港から普通船で90分、高速船で55分の距離に位置し、東西4・4㎞、南北6・1㎞、自転車なら3時間で1周できるくらいの小さな島で、全域が県立自然公園に指定されるほど豊かな自然に恵まれています。主な産業は漁業と観光業。日本海の荒波は島に複雑な岩がん礁しょうをつくり、そこに多くの魚がやってきます。この魚を狙って、沿岸では明治時代から続く「大だい謀ぼう網あみ漁りょう」という大型の定置網を使った漁が行われています。島を訪れたときは、ちょうど午後の漁が終わったところで、漁協前の港に停泊している漁船には大漁旗が掲げられていました。粟島では鯛が有名ですが、6月には本マグロも水揚げされます。獲った魚はすぐに漁協で手際よく箱詰めされ、最終便の普通船で本土に送られていきました。島が一番活気づくのは夏。定期的に訪れる釣り客も多くいますが、夏ともなれば県内外から多くの海水浴客で島が活気づきます。しかし、近年は粟島も他の離島と同様に人口減少と高齢化に悩まされており、平成7年に474人いた島民は、平成22年には366人に減少しています※。加えて、観光客数も年々減少しています。主要産業の一つである観光の衰退や高齢化に伴い、民宿の廃業や漁業に従事する人も減少しています。漁船の竿の先には大漁旗粟島名物料理わっぱ煮。曲げわっぱに焼いた魚と熱湯、味噌を入れてから赤くなるまで焼いた石を入れると一気に沸騰し香ばしい香りが立ち込める。最後にネギとお酒で仕上げる豪快な漁師料理。民宿や料理屋の人たちが直接漁港に買い付けにくる。漁港が一気ににぎわう。食べた“サクランボ”の 種飛ばし大会が始まった●高齢化や子どもの減少が悩みだった粟島。平成25年度より離島留学「しおかぜ留学」をスタートさせ小中学校の生徒数を維持。●中学校のキャリア教育として実施した島の特産品を使ったアイスクリームが高評価。農家、島内外の企業を結び付けるきっかけに。●漁業・観光の主要産業に「学び」をプラス。学びを産業化し3つの柱の相乗効果を目指している。離島留学の子どもたちが地域の刺激になる。学びを産業化する小さな島の試み事例1ここがポイント!粟あわ島しま(粟島浦村)・新潟県※国勢調査人口より

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る