国土交通 No.145
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粟島浦漁業協同組合あわしま牧場羽下直子さん柳谷駿斗君兵庫県出身で留学生の柳谷駿斗君は現在中学3年生。地元で乗馬クラブに入っていたほどの馬好きで、馬の世話ができるということで粟島にやってきて3年目です。「この島はとてものんびりしていて、島の人たちはみんな優しいです。それに馬の世話が毎日できてうれしいです」組合員110名のうち、実際に沖に出る人は60~70人。その大半が50~60代と漁師の高齢化が問題となっています。「人数が少ないので、大謀網漁は3つあった定置網を今は2つにしています。最近、新たに35歳の子が入ってきましたが、あと5~6人は必要です。“定置がなくなると粟島もなくなってしまう”その思いがあります。なんとか人数を増やし漁獲量を増やしたいです」シーカヤックのプロガイドを育てるために、鹿児島県種たねがしま子島から本年5月に粟島へ移住。「粟島は海の透明度が高く、アイランドパークとしてのポテンシャルが高いです。さまざまな技術をしっかり習得させるのが私の役目と思っています。さらに、その習得した技術を使って、人材や技術を他の地域に派遣させることも視野に入れています」保育士として島にやってきて3年、島で人々が集まる場所を作りたいという思いから昨年9月にゲストハウス「おむすびの家」を開業しました。「開業する前は、すぐに辞めたりしないか何度も島の方に確認されました。オープンしてからは、1日目は民宿に泊まったお客さんが、2日目はうちに泊まるという話を宿の方にすると、『花子のところか、行ってこい!』と言われることもあるそうです。お客さんから『ここに泊まるだけで島の人に受け入れてもらえるようだ』と言われるととても嬉しいです。まずはこのゲストハウスを続けることが大切と考えます。島へ来る人を増やすためにも、続けることで、好きな地域で暮らしたいという人を助けられるようになりたいです」責任者の羽下直子さんは診療所の看護師さんでもあります。もともと馬が好きで、看護師募集とともに馬の世話もできると聞いて粟島へ移住。「新しく入ってきた子は先輩に教わりながら馬の世話をしています。子どもたちは本当に成長が早くて、みんな使命感と責任感をもって仕事しているんですよ」ゲストハウス「おむすびの家」あわしま自然体験学校粟島で出会った人々青柳花子さん脇川忠一業務課長8ることで学校の職員も増え、子どもたちの世話をする人も必要になるからです。現在人口は370人に増えました※。「島ではいま、さまざまなプロジェクトが並走しています。地域おこし協力隊が中心となって島の特産品を直売する『ばっけ屋』では、新たな島の商品を開発しています。地方創生の核は“まち・ひと・しごと”ですが、私はここに学びを加えたいと思っています。島全体で学んでいくことが目に見えない効果となって、島の人たちの覚醒を促すと期待しています」(本保村長)。目下の島の悩みは住宅問題です。現在は家が足りなくて下宿している人もいるほどで、本年は4棟の村営住宅を建設予定です。「将来は、島で学んだことを社会に役立てられるような人材を輩出することで、社会の役割を果たす地域になりたい。粟島の自慢はお年寄りです。気さくで優しく情が深い。接することで若者はその縁を大事にし、さらにお年寄りも若い人から学ぶこともあるでしょう。そうやってみんなが学ぶことで元気になって欲しいです」(本保村長)。留学を終えた子どもたちの中には、 “島に帰ってくる”子もいるそうです。人と人との結びつきが大きな効果をもたらす、小さな島の大きな挑戦は、離島が抱える問題の解決策を導き出しているのかもしれません。「ばっけ屋」でも大人気のアイスクリーム。このパッケージイラストを描いたのは、アイスクリーム開発当時中学2年生だった留学生の女の子(写真右)。最近島に遊びに来た際に商品宣伝用のイラストも描いてもらったそう。島の大豆「一人娘」を使ったもう一つの人気商品“煎り豆”「ばっけ屋」のスタッフ。同店では地域おこし協力隊を中心に、島の人たちとさまざまなアイデアを出しながら商品を開発。※平成27年国勢調査人口より

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