国土交通 No.146
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11率な輸送を強いられています。国際物流ターミナルの整備効果として、釧路市水産港湾空港部の梶かじ光みつたか貴次長は「本事業により、北米至近の釧路港をファーストポート(入国港)とした穀物の大量一括輸入が可能となり、釧路港から東日本の各港湾への複数港寄りの配船が実現します。東日本における穀物の効率的な海上輸送網を形成し、穀物の安定的かつ安価な供給、関連産業の国際競争力強化に寄与できると考えています」と話します。また、港は海上輸送と陸上輸送の結節点です。釧路商工会議所の伊い関せき義和運輸交通部会長は、「根室方面、オホーツク方面とは高速道路で結ばれていません。港湾を生かすためには、高規格幹線道路はもちろんのこと、各農家に飼料を届ける一般道の整備も必要」と話します。東港区は海に親しむ親水空間と観光拠点の形成を目指す世界とつながり、大きく変容する釧路港。その基底には、平成23年に策定された「釧路港長期構想」があります。この構想の目標年次は平成50年代前半。釧路港の目指すべき姿として「外内貿物流拠点」「エネルギー基地」「国際交流拠点」「防災拠点」の4項目、実現する導入機能として7項目を掲げています。導入機能の一つとして「臨海部における良好な景観の形成や親水空間の確保」があります。「東港区には複合商業・観光施設フィッシャーマンズMOO(ムー)やEGG(エッグ:緑地空間)といった憩いの場と、耐震旅客船岸壁が隣接していることから、今後、観光拠点と市民のための親水空間の場を形成していきたい。将来的には、フェリー航路の受入れなども視野に入れながら、北極海クルーズ船の基地を目指すなど、釧路港の地理的特徴を生かすことを考えています」(伊関部会長)。釧路市は、阿あ寒かん摩ま周しゅう国立公園および釧路湿原国立公園の二つの国立公園を有しており、平成28年1月には観光庁より、訪日外国人旅行者を地方へ誘客するモデルケースの形成を目指す「観光立国ショーケース」の選定を受ける釧路市水産港湾空港部梶 光貴 次長釧路商工会議所伊関 義和 運輸交通部会長など、国際観光都市に向けた新たな一歩を踏み出したところです。「東港区での大型クルーズ船やフェリーの受け入れ環境の充実に取り組んでいきたいと考えています」(梶次長)。国土交通省が策定した第8期目となる北海道総合開発計画では、北海道の強みである「食」と「観光」を戦略的産業として位置付け、食と観光を担う「生産空間」を支え「世界の北海道」を目指すとしています。梶次長は「釧路港における国際バルク戦略港湾とクルーズ船構想は、まさに北海道総合開発計画に位置付ける戦略的な産業にマッチする取り組みです。釧路港長期構想などに基づいて、北海道総合開発計画の推進や、地域の発展に寄与していきたい」と語り、伊関部会長は「世界へ発信できる食料供給基地としての北海道を支える釧路港をアピールしていきたい」と意気込みを語ります。道東の物流拠点から「世界の北海道」の国際貿易・交流拠点へ。釧路港へ期待される役割はますます大きなものとなっています。特集目指すは「世界の北海道」~第8期北海道総合開発計画始動~※1 穀物、鉄鉱石、石炭、油類、木材などのように、包装されずにそのまま船積みされる貨物。ばら積み貨物ともいう。※2 動力を持たない被牽けん引車。※3 荷役の機械化・省力化・迅速化を図るため、コンテナ、シャーシなどの容器を用いて、複数の貨物を一つにとりまとめた貨物。※4 船の中にトラックやトレーラーなどが自走して乗り込み、貨物の積み降ろしが行える貨物船。完成イメージ平成29年度完成予定の西港区第2埠頭の係留施設(水深14m、延長300m)クルーズ船フォーレンダム寄港時の市民によるお見送りの光景
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