国土交通 No.146
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16リート3階建ての出張所が建ち、東側には水谷寮と神社、西側には救急所と各建設事業者の宿舎が並びます。一見のどかな場所ながら、南の谷側は昭和32年(1957年)の大崩落で敷地の多くが失われ、北側には断崖絶壁が迫り、厳しい環境は工事現場と変わりません。出張所や水谷寮、救急所以外の建物は各建設事業者の宿舎となっています。毎年6月の上山式後、各建設事業者の宿舎を建設することからその年の工事が始まります。13事業者が工事に参加200人ほどが共同生活本年度は13事業者が参加し、15カ所の砂防工事に取り組んでいます。13ページで紹介した「湯川第13号砂防堰堤工事」を担当する丸まるしん新志し鷹たか建設株式会社もその一つです。現場代理人の佐伯靖さんは「天候や工事の進捗状況により、目まぐるしく変わる現場に対応することが、砂防工事の難しさです」と語り、監理技術者の藤本一行さんも「現場の変化や不具合は常に国土交通省さんと情報共有し、適正で迅速な工事遂行を心掛けています」と連携鳶山崩落土の台地の上に夏の間だけ出現する小さな村水谷出張所がある水谷平は、立山駅から車で2時間ほど登った立山カルデラの西の外れにあります。安政5年(1858年)の飛ひ越えつ地震で崩落した土砂が堆積してできた平坦地です。出張所は、昭和35年(1960年)に開設して以降、立山カルデラの砂防工事の前線基地として機能してきました。砂防工事専用軌道のホームに面して鉄筋コンクの大切さを強調します。同社からは十数名が従事し、海外からの技術実習生も3名が参加しています。ネパールから兄弟そろって参加しているミンマさんは「ネパールも山岳地帯が多く、立山カルデラでの実践的な研修は大変勉強になります。しっかり任務を遂行し、世界最高の技術を母国で役立てたいです」と夢を語ってくれました。また、15ページで紹介した「有峰下流左岸山腹工事」に従事するのは新栄建設株式会社です。監理技術者の唐島田幸治さんは「ロープで斜面を下りながら施工するハードな仕事ですが、立山カルデラの生態系に配慮した工法に誇りを持って取り組んでいます」と語り、現場代理人の北村渉さんも「機械や施工法が進化しても最後の要は人であり、もっと多くの人と仕事がしたいです」と語ります。◆       ◆       ◆工事の効率化や機械化が進み、現在の作業員は最盛期より減っています。それでもお盆明けのピーク時には約200人が水谷平で生活し、一丸となって工事に取り組んでいます。立山カルデラで砂防工事が行える約5カ月間、水谷出張所の職員や建設会社の作業員は週末以外泊まり込み、さらに職員や作業員の生活を支える賄いさんや救急所には看護師も常駐しています。過酷な砂防工事を支える人々を紹介します。立山カルデラ内の水谷平に泊まり込み全員一丸となって砂防工事を支える砂防工事を支える人々Vol.09水谷平全景。奥にある水谷出張所から延びるレールは砂防工事専用軌道(トロッコ)の線路。写真手前には各建設事業者の宿舎が並ぶ。水谷平北側の斜面にはここでしか見られない滝が。水谷平にはこの滝のほかに雨量が多くなると出現する滝もある。出現する滝の本数で山の雨量を判断することもあるそう。この上部が立山黒部アルペンルートの弥み陀だヶが原はら辺り。佐伯 靖 さん丸新志鷹建設株式会社ネパールからの技術実習生 アディカリ ミンマ ヌルさん(左から)新栄建設株式会社 唐島田 幸治 さんと 北村 渉さん藤本 一行 さん

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