国土交通 No.147
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19じゅう博物館の田邊副理事長も「萩生まれの私らより詳しい。萩市を愛してくれている」と厚い信頼を寄せる。「萩の町並みや風景が大好きです。高い建物が少なく、電柱も地中化されている箇所が多いので、空がとても広く感じられてきれいです。また、文化財や伝統的建造物に限らず、近世から近代にかけてつくられた町や建物が普段の暮らしの中に住みこなされ、今に息づいている素敵なまちです」(山本さん)。土塀の内には民家があったり、鍵曲※(かいまがり)と呼ばれる道を生活道路として行き交いしている人の姿が見えたりと、歴史と生活が密着しているまちの様子が随所にうかがえる。萩の物語を伝える「萩・明倫学舎」もう一人の魅力案内人は、市役所観光課に勤務する福田陽介さん。福田さんは、萩市出身であり萩藩校「明めい倫りん館かん」の跡地にあった明倫小学校の出身でもある。福岡県で大学時代を過ごしそのまま社会人になったが、やはり萩市で働きたいと思い帰ってきた。萩市は、吉田松陰の妹 文ふみを主人公にした大河ドラマの効果で平成26年と平成27年に多くの観光客でにぎわった。そのにぎわいを維持させることを模索していた時、観光庁の「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」に平成27年度応募し、萩市を含む全国31の地域が選定された。萩市は三年連続選定されている。この事業は、観光資源を積極的に活用して旅行商品の造成、名産品の開発など、魅力あふれる観光地域づくりを推進する取組提案を行った地域と観光庁が一体となり、各地域の事業を支援していくものである。萩市は「萩まちじゅう博物館で体感するゆったり・じっくり観光~明治維新150年に向けた誘客促進~」をテーマにして地域の魅力を高めている。前述したとおり、萩まちじゅう博物館という建造物は存在するものではない。萩市を丸ごと博物館と捉え、観光客を市全域へいざなう取り組みを推し進めている。福田さんは「世界遺産『明治日本の産業革命遺産』の構成資産が萩市に五つもあります。どのような歴史や意義があり日本や世界に貢献したかを伝えなければならないと思っています」と語る。そこで萩市は、資料展示や映像、パネルなどを使って、分かりやすく楽しみなが ※左右を高い土塀で囲み、道を鍵の手(直角)に曲げた独特な道筋。城下町特有の道で、戦いの際見通しを悪くして防御しやすくした。萩市役所 観光課福田 陽介さん江戸時代のそのままの町並みが多く残っている萩市は、いまも当時の古地図が使える町萩まちじゅう博物館の中核施設「萩博物館」NPO萩まちじゅう博物館が行う古地図で巡るまち歩きツアー博物館明治維新150年記念事業として旧萩藩校明倫館跡地に建つ旧明倫小学校の校舎を改築し、本年3月にオープンした萩の観光起点施設。本館(無料)・2号館(有料)と分かれており、本館では、萩観光の起点としてのインフォメーションセンター、藩校明倫館から旧明倫小学校までの300年の歴史に触れる展示室、萩の大地(ジオ)1億年の成り立ちを紹介する「ジオパークビジターセンター」などが連なる。2号館には、「世界遺産ビジターセンター」や江戸時代の科学技術史や幕末の歴史に関する資料を多数展示する「幕末ミュージアム」がある。・明倫学舎萩の名店「割烹 千代」が館内に出店している「カフェ・レストラン萩暦(はぎごよみ)」。日本海で獲れた魚や地元の野菜を振る舞う。熊谷喜八シェフやアル・ケッチァーノの奥田政行シェフ監修のメニューも好評。

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