国土交通 No.147
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7特集世界と戦う船造り ~海事生産性革命(i-Shipping)の推進~型船が連続建造出来る物理的な補強をしたに過ぎません。大事なのは今後ソフト面でさまざまな開発に取り組み、安全で生産性の良い地上ステージで船体ブロックを出来る限り大きくつなぎ合わせ、さらに配管やパーツの取り付けや塗装を仕上げてからドック内に吊り込む建造方法に磨きをかけていきます。そうすることで自然と競争力も付きますし、顧客の要望にも敏速に対応出来るようになります」(檜垣さん)。船会社の要望に応えることが国際市場でのより高い競争力につながり、ひいては地域での雇用創出や国内経済にも貢献できると檜垣さんは確信しています。複数の溶接ロボットをAI制御し作業効率アップ今治造船では新ドック建設以外にもさまざまな i-Shipping の取り組みが、並行して進められています。その中で、現在開発中の建造技術の一つが「自動溶接ロボット連携システム」です。船体は大きな鉄の固まりに見えますが、実は100個以上のブロックに分割して製作されています。一つひとつ工場内で製作した船体ブロックは、ドックに運んで組み合わせることで、大きな船を造り上げていきます。船体ブロックはそれぞれ形も大きさも異なっており、溶接する際も同じ手順の繰り返しではできません。「部品の3D設計データから直接ロボットへの作業指示を自動生成できるシステムを構築して、さまざまな溶接構造に対応できるように開発を進めています。この溶接ロボットを可搬装置と組み合わせることで、溶接する箇所に合わせて溶接ロボットを人が移動させる作業もなくしました。複数のロボットの一連の動きはAI機能を通して随時連携・制御され、人海戦術に匹敵する溶接時間の短縮と無人化の両立を実現していきます」(檜垣さん)。この複数の自動溶接ロボットが連携するシステムは発想の先進性が認められ、i-Shipping の研究開発補助事業として、本年度の研究開発補助案件に採択されています。その他の開発事例3DモデルイメージARマーカーを利用した作業効率改善のイメージ3DとIoTの組み合わせによる建造効率化開発実施者:三菱重工船舶海洋株式会社数万点にも及ぶ船舶部品を、ARマーカー※を用いて管理するとともに、設計・資材・工程情報と紐付け、作業効率の改善を図る。取り付ける部品のARマーカーを認識隣り合う部品の品番を重ね合わせて表示画面通りにつければいいCOLUMN3Dモデルの情報やIoTを活用し、船せん殻こくブロックの精度向上、建造作業計画精度の改善、製造・検査の効率化を図る。ARマーカーを用いた船舶部品管理開発実施者:福岡造船株式会社※画像認識型ARシステムにおいて、付加情報を表示する位置を指定するための標識になる決まったパターンの画像。船体部材を組み合わせる溶接ステージ

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