国土交通 No.147
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9の幅はば田た望さんは、「さまざまな問題や課題に対して、分野や立場が異なる企業が連携しながら研究にあたることで、より広い視野から解決の道が開ける可能性があります。何よりも船会社、造船会社、船用機器メーカーという領域の異なる三者が一丸となって、オールジャパンで国際競争力を向上させる点に大きな意義があり、画期的な取り組みだと自負しています」と語ります。この研究では、運航船で発生したリスクの高い事故の分析結果をもとに6つのテーマ(上表参照)を設定しました。重大事故の40%はこれらの設定したテーマで削減できるとしていますが、中でも注目なのは、「①画像を含むビッグデータによる主機シリンダー内状態診断手法の開発」と「③ブラックアウト予兆診断システムの開発」の2テーマです。前者は「主機」つまり船のエンジンが正常に動いているかを、各部位のセンサーを通じて計測し、故障の前兆が発見されたらすぐに対応して故障を未然に防ぐ研究です。また、後者は「ブラックアウト=停電」の予兆を、さまざまな計測データから検知します。同機関グループの田ノ上聖あきらさんは、「船舶の交通の多い海域で不意に停電が起これば、船舶同士が衝突するおそれがあります。船の機関や電気を止めないということは、航行の安全を考える上でまさに特集世界と戦う船造り ~海事生産性革命(i-Shipping)の推進~国内大手造船会社数社の統合で生まれた、日本を代表する造船会社の一つ、ジャパン マリンユナイテッド 株式会社。同社では、船のエンジンなどの故障や事故を未然に防止して航海の安全を確保するための新しい研究を進めています。この研究はi-Shippingの平成28年度支援対象事業に採択され、「ビッグデータを活用した船舶機関プラント事故防止による安全性・経済性向上手法の開発」を目的に、同社の顧客である船会社や各舶用機器メーカーも加わった合計7社の連携で行われています。商船事業本部 基本設計部機関グループ長船会社、造船会社、舶用メーカーによるオールジャパンで安全航行を研究開発ジャパン マリンユナイテッド 株式会社(JMU)i-ShippingOperationJMU 田ノ上聖さんJMU 幅田望さん研究開発相関図事 例最優先・最重要の課題です」と語ります。現在は、実船テストに向けた機器開発などの準備段階ですが、2018年度以降アジアとヨーロッパを結ぶ定期航路に実験船が就航し、いよいよ実際の航行データの蓄積が始まります。「それらのビッグデータをもとに、プロジェクト最終年度の2020年度には、一定の成果を出して、システム改善などの最終段階に入る予定です」と語る幅田さん。i-Shipping の時代に向けた実験船の船出は、もう間近に迫っています。船会社造船会社舶用機器メーカー❶画像を含むビッグデータによる主機シリンダ内状態診断手法の開発❷補助ボイラ空焚き予兆診断システムの開発❸ブラックアウト予兆診断システムの開発❹減速運転下でのプラント最適運用手法の開発❺データロガー※での高度アラームシステムの開発❻油清浄機の総合運転監視システムの開発    ※センサーより計測・収集した各種データを保存する装置。発生リスクの高い事故分析結果から設定した6つのテーマ

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