国土交通 No.148
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19た。ほかにも、国の重要伝統的建造物群保存地区である落合集落の空き家8棟を市が無償で20年間借り上げ、その空き家を宿泊できる茅かや葺ぶき古民家「桃源郷祖谷の山里 茅葺き民家ステイ」に改修するなどさまざまな事業を行っている。また、伝統芸能を継承するため、地元の小学生に伝える活動なども行っている。一方、存続が難しくなってしまった伝統芸能を映像に記録・保存している。三好市教育委員会文化財課の宮田健一さんに歴史まちづくりの効果や今後の取り組みについて伺った。「国から認定を受けたことにより、住民がまちを誇りに思うようになりました。そして観光客が増加し、住民が『おもてなし』を意識するようになったり、景観の保全にも関心を持ったりするようになりました。例えば、落合集落では屋根の色を落合カラー(焦げ茶)に統一する取り組みが進められています。今後も歴史的風致の維持向上のための事業を続けていきたいと思っています。まちづくりの結果はすぐに出ないことも多いですが、時間をかけて続けることが大事だと思っています」。秘境でのおもてなし三好市ではここ数年外国人観光客が急増している。平成28年、市内にある五つの主要ホテルに宿泊した外国人は、前年比50%増の約1万4800人で、初めて年間1万人を超えた。特に香港から来る個人の観光客が多く、自国にはない大自然や周りの人がまだ行っていない地方を求め、LCC(格安航空会社)を使って気軽に訪れている。三好市教育委員会 文化財課主査 宮田 健一さん桃源郷祖谷の山里茅葺き民家ステイ東洋文化研究家のアレックス・カー氏がプロデュース。歴史と伝統の趣を残しながら、内部には最新設備が備わり快適に過ごせる。茅葺きの高屋根は天井部分が存在せず、昔はタバコの葉を乾燥させるための場所だった。 わが国固有の歴史的建造物や伝統的な人々の活動からなる「歴史的風致※」を生かしたまちづくりを支援するため、平成20年に制定。同法に基づき、市町村が作成した歴史的風致維持向上計画を国(文部科学省、農林水産省、国土交通省)が認定することで、法律上の特例や各種事業により市町村の歴史まちづくりを支援する。※地域におけるその固有の歴史および伝統を反映した人々の活動と、その活動が行われる歴史上価値の高い建造物およびその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境落合集落江戸中期から昭和初期に建てられた民家や畑が急斜面に広がっている。集落内の高低差は約390m。現在、約80人が暮らしている。 「平家物語」では、1185年3月の「壇だんノの浦うらの戦い」に敗れた平氏一門の武将たちは覚悟を決め海に入水し、幼い安徳天皇も祖母に抱かれて西の海に身を投げたと記されている。また、平清盛の甥・平国盛も源氏の武者二人を道連れに海に沈んだと記されている。 しかし、壇ノ浦で亡くなったといわれる安徳天皇も国盛も、実は影武者だった! と祖谷地方では語り継がれている。 「壇ノ浦の戦い」の1カ月前の屋や島しまの戦いで敗れた平国盛の一行は、幼い安徳天皇をお守りしながら、祖谷の地にやって来て、後に阿佐名に住居を構え、平家再興を図っていたといわれている。 国盛の死後も子孫は代々この地に住んで阿佐を姓とするようになった。阿佐家には現在も「平家の赤旗」と呼ばれる大小二流の旗などが所蔵されている。もうひとつの平家伝説祖谷のかずら橋平家一族が、追っ手から逃れるためにいつでも切り落とせるようにとシラクチカズラという植物で造ったといわれている。意外と広い橋床の木の間から、14メートル下の渓谷を望め、スリルを味わうことができる。国指定重要有形民俗文化財。3年ごとに伝統的な架け替えが行われる。琵琶の滝平家落おちゅうど人が京の都をしのび、この滝で琵琶を奏で、慰めあっていたことから名付けられたと伝えられている地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(通称:歴史まちづくり法)高さ14mでスリル満点!

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