国土交通 No.148
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20観光客の目的がモノからコト消費に変わってきている中、ここにはさまざまな体験メニューや観光ガイドツアーが用意されている。交通の便が良いとはいえず秘境とも呼ばれる祖谷地方で、「古式そば打ち体験塾」を開いている都つ築づき麗子さんは、古式そば打ちや着付けなどの体験メニューを提供していて、外国人観光客からの人気も高い。外国人観光客は、知人からの口コミのほか、SNSやYouTubeで情報を入手し、レンタカーやタクシーを利用して訪ねて来る。外国人の応対に尻込みしてしまう日本人も多いが、「ここでは、外国人にも日本人にも同じおもてなしをしています。言葉が違っても、ジェスチャーと簡単な英単語でほとんど通じます」と都築さんは言う。「外国人観光客が喜ぶ事をしたいと思い、近所の廃校を利用して着付けを始めました。次に、着物を着るなら抹茶も喜ぶだろう、琴も…と体験メニューが増えていきました。さらに、かごに乗ったら喜ぶだろうなと思い、地元の人にかごを作ってもらい、かごに乗る体験も追加しました。地元の人も協力してくれて、提供する側も楽しんでいます」(都築さん)。新しい体験メニューを考えているか伺ったところ、「今でも十分忙しいんだけど…」と笑いながら「やりたいことはいっぱいあります」と語った。みんなが喜ぶ体験メニューは、これからも増えていくだろう。妖怪伝承を生かしたまちづくり三好市山城町には平地がほとんど無く崖などの危険な場所が多いため、親は子どもにそこに現れる妖怪の話をしながら、危険な場所に近付いたり山の神を荒らしたりしてはいけないことを暗に諭してきた。「四国の秘境 山城・大おお歩ぼ危け妖怪村」村長の宮本敬さんも、「お盆は、えんこ(河童)に引っ張られるから川に行くな」と親に言われて育ったという。宮本村長の叔父・下岡昭一さんが「山城には何もないというけれど、自然がいっぱいあり空気も水も綺麗だし、何かやろうよ」と声を上げ、平成8年、妖怪村の前身となる「藤ふじ川かわ谷だにの会」を発足し、藤川谷川の環境美化活動を行っていた。その活動中に、山城町が児こ啼なき爺じじいの発祥地であることが分かり、平成13年に石像を建立。平成20年、藤川谷の会をはじめ14団体を構成員に「四国の秘境 山城・大歩危妖怪村」を結成し、妖怪モニュメントの作成や妖怪祭りの開催など、妖怪を生かしたまちづくりに取り組んでいる。平成22年には道の駅大歩危内に、「妖怪屋敷」をオープンした。各家に聞き取りを行った中、町内150カ所におよそ60種の妖怪伝承が残っていることが分かり、その伝承を後世へ伝える活動も行っている。「地元の小学生が山城町に伝わる妖怪をAR(拡張現実)で紹介するスマートフォンの無料アプリ『山城妖怪めぐり』を作りました。妖怪モニュメント付近でカメラをかざすと妖怪のイラストが浮かび上がり、さらに近づくとその妖怪が音声で語りかけてくる仕組みになっています。その子どもたちに妖怪伝承を語り継いでほしいと思っています」(宮本村長)。今後の取り組みについて、宮本村長に伺った。「現在22体ある妖怪モニュメントを、四国八十八カ所霊場に倣い、88体に増やしてスタンプラリーを開催したいと思っています。また、特徴がある巨木やそれにまつわる伝説も多いので、巨木と妖怪を巡四国の秘境 山城・大歩危妖怪村 村長 宮本 敬さん古式・そば打ち体験塾 都築 麗子さん民謡「祖谷粉こひき節ぶし」の唄名人でもある。外国人観光客は都築さんが唄っている姿を動画で撮影し、帰国後に自慢しているそうだ。そばの実を石臼で挽いてそば粉にするところから、打って切って食べるところまで、祖谷そば作りの全工程を体験できる祖谷そばつなぎが入っていないので、麺が短くて太いのが特徴そば打ち後は、打ち立てのそばと一緒に、祖谷の食材を使った料理も堪能できる。(左)石いわ豆どうふ腐(険しい山道を運んでも崩れないようにと考えられた硬めの豆腐)や、ごうしいも(祖谷地方のやせた急斜面の土地で作られているじゃがいも)など。(右)鹿肉や祖谷こんにゃくの唐揚げと山菜の天ぷら。
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