国土交通 No.148
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6昭和50年(1975年)に設立された一般財団法人建設業振興基金。設立から42年間、一貫して建設業界、特に中小企業や専門工事業の支援を行ってきました。「建設産業と行政をつなぐ架け橋」として、人材育成や入職支援についてどのような取り組みを行っているのかを、内田俊一理事長に伺いました。離職する若者が多い建設業界―(一財)建設業振興基金とはどのような組織ですか。当財団は昭和50年の石油ショック後、高度成長がもはや望めず産業構造の転換が求められる中、地域建設業や専門工事業を支えるために設立されました。業務は主に三つの分野に分かれています。一つ目は中小建設業に対する金融支援、産業の活性化支援、経営者に対する研修など、経営基盤の強化です。二つ目は担い手確保・育成です。これには、「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム」や「建設労働者緊急育成支援事業」をはじめ、建築および電気工事施工管理技術検定試験や建設業経理検定、監理技術者講習などに代表されるような試験研修領域の業務も含まれています。そして三つ目は建設産業からの情報発信の強化です。地域社会に欠かせない建設産業の姿をきちんと伝える取り組みが重要と考えています。―建設業界での若者の雇用状況を教えてください。現在日本では、就業者の4割が非正規雇用という不安定な状態で働いています。給与も安く、将来も保障されていない。さらに研修の受講機会がなく、スキルアップのチャンスが圧倒的に少ないという問題があります。高齢化・人口減少の中で、多くの若者が非常に不安定な状態に置かれ、将来について不安を募らせています。また、若者の早期離職も問題となっていますが、建設業界でも、高校卒業後に仕事に就いた若者の約5割、大卒の約3割が3年の間に辞めてしまっています。若者に職業を選択する上で最も大切なことは何かと尋ねたところ、「安定して長く勤められること」という回答が一番多かったのに、実際には早期退職を余儀なくされている。これは、若者の意識というよりは受け入れる産業界側に問題があると考えています。そこで、私たちはこの状況をなんとかしたいと考え、平成26年10月に「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム」を設立し、建設産業界全体で若者の入職や教育訓練を支援する取り組みを始めました。個別の企業一社だけではできない人材育成を地域ぐるみで支援する―人材確保・育成の観点から具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。「建設業では、産業構造の中に人材育成の仕組みがセットされている」という状態をつくりたいと考えています。「責任を持って一人前にするから安心して入っていらっしゃい」と言えるようにする、これが「建設産業担い手確保・10年後も地域に欠かせない建設業活力と魅力の向上を目指し担い手の確保・育成を支援一般財団法人建設業振興基金 内田俊一理事長に聞く出典:厚生労働省「新規学卒者の離職状況   (平成26年3月卒業者の状況)」(左から)足場組立の訓練(建設労働者緊急育成支援事業)、柱の型枠建込の訓練(実務施工体験研修)内うち田だ 俊しゅん一いち PROFILE 東京大学法学部卒業後、建設省(当時)入省。千葉県企画部企画課長、建設経済局建設業課建設業構造改善対策官、京都市助役、大臣官房政策課長、内閣官房内閣総務官・内閣広報官、内閣府事務次官、消費者庁長官などの要職を歴任。平成23年7月、財団法人建設業振興基金(平成24年4月に一般財団法人に)理事長に就任し現在に至る。0102030405060(%)12.89.97.724.513.89.4大卒高卒30.447.73年目2年目1年目新規学卒者の離職状況(建設業)

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