国土交通 No.149
13/24

13地図作成の大本「空中写真撮影」国土地理院(本院、茨城県つくば市)は、測量と地図作成を主な業務としています。国土地理院が作成する「基本図」は、わが国の形状・地形・地名・交通・建物などの基本的な情報を整備した地図であり、全ての地図の基礎としての役割を担っています。山奥深くから絶海の孤島まで、全国土を隙間なく隅々までカバーする地図は「基本図」のほかありません。江戸時代に伊い能のう忠ただ敬たかが足かけ17年をかけて全国を歩いて測量したように、古くは人が現地まで赴き計測して地図を作成していました。しかし、現代では、測量用の航空機で空から真下を撮影した空中写真を用いて地図を作成しています。国土地理院の測量用航空機「くにかぜⅢ」に画像調査課機動撮影係の職員が搭乗し、基本図を作るための空中写真撮影を行います。「くにかぜⅢ」が運用を開始したのは、平成22年6月です。昭和35年(1960年)就航の「くにかぜ」、昭和58年(1983年)就航の「くにかぜⅡ」までは、海上自衛隊に運航を委託していましたが、「くにかぜⅢ」からは運航を民間に委託しています。二人一組で行われる空中写真撮影天候次第で長時間に及ぶことも「くにかぜⅢ」には約2億画素の高性能なデジタル航空カメラが搭載されており、隣り合う空中写真が約60%重なるように平行移動しながら垂直写真を撮影していきます。また、撮影中は、GNSS衛星※からの電波と、高精度の慣性計測装置により、0・005秒間隔で機体の位置と姿勢を計測します。画像調査課長補佐の南秀和と機動撮影係長の原田知明は、昨年4月から現職に就きました。原田は「くにかぜⅢ」の導入にも携わっており、約6年ぶりの撮影業務に「くにかぜⅢには、やはり格別の愛着があります」と話します。機動撮影係の業務は、南と原田以外に係員3名の計5名体制で行っています。「くにかぜⅢ」への乗務は2名で行い、1名が撮影、1名が撮影補助を担当しながら、互いに確認し合うダブルチェック体制をとっています。取材当日は、東京都の東村山地域の撮影が行われました。この日の撮影高度はおよそ2000mでしたが、多くの撮影では高度3000mを超えるため、その際は、酸素マスクを着用しての作業となります。フライト中の機内で撮影担当の原田は、設置されたモニター画面に表示されるサムネイル(画像を縮小し、見本と※ GPS(アメリカ)、GLONASS(ロシア)、みちびき(日本)など地球上の位置を求める測位のための衛星くにかぜⅢに搭乗して行う空中写真撮影は、年間250時間・撮影面積は5000平方kmに及ぶ機内に設置された空中写真撮影用のデジタル航空カメラ撮影時に機体下部のカメラ孔が開き、垂直写真撮影が行われる業務密着ルポシリーズFILE 50垂直写真撮影は航空機を計画したコース上に一直線で飛行させ撮影する。隣り合う写真が重なるように撮影するので、この重複部分では写真を立体的に見ることができるとともに、写ったあらゆる場所の位置や標高を正確に求めることができる。

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る